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NAFLD・NASHの食事療法
NAFLD・NASHの運動療法

                                                         

NAFLD.NASHの運動療法


運動療法の目的は、長期的かつ継続的に摂取エネルギーより消費エネルギーを大きくし

て、過剰に蓄積された体脂肪をエネルギーに転換して利用させることです。運動による減量

効果は緩慢ですが,減食では得られないメリットがあります。運動は単に消費エネルギーを

増すだけでなく、代謝機構を改善します。また、食事療法の欠点である筋肉の減少を抑え、

さらに増加させることもできます。そして運動は内臓脂肪の蓄積を抑え,食事療法を伴った

運動療法を行うと、NAFLDの原因である内臓脂肪が皮下脂肪に比べ減少しやすくなりま

す。とりわけウオーキング、ジョギング,水中運動といった有酸素運動は、筋肉・脂肪組織の

代謝改善に役立ち、中性脂肪低下、善玉コレステロールの増加、NAFLDの病態改善効果

が期待できます。また運動の継続は、たとえ体重が減少しなくても、体の代謝が良くなるの

で、インスリン感受性を改善します。肥満者は食事制限を行った際に低下する基礎代謝や

食事誘導性熱産生能を上昇させ、安静時において筋肉での脂質の利用をも高めます。た

だし、運動療法だけで消費できるエネルギーはそれほど大きなものでなく、運動でむしろ空

腹感を増し、食べ過ぎてしまうことがあるので、食事療法と合わせて行うことが重要です。

軽いジョギングなど、中等度以下の運動では筋のエネルギー源として糖質と資質の両

者が利用されます。

強度の高い運動では、グルカゴン、カテコラミンなどインスリン拮抗ホルモンの分泌が増加

し、その効果が期待できるが、強度が高まるにしたがい、糖質利用の比率が増大します。

重量挙げ、逆立ち、綱引き、ボート漕ぎ、エキスパンダーなど呼吸をこらえて行う運動(無酸

素運動)では、糖質だけが利用され脂肪は分解されず、NAFLDの運動療法では、脂肪組織

に貯蔵されている脂肪の利用率を高めねばならず、運動は主として中等強度以下が望まし

いようです。

さらに、運動開始後数分間は主として筋肉のグリコーゲンが利用されているだけで、脂肪は

それほど消費されないので、1回の運動時間は10分以上が望ましいようです。

つまり具体的には、散歩、ジョギング、水泳、自転車、ラジオ体操などの有酸素運動を1

回10~30分、中等度の強さ(40~50才代で脈拍数120/分、60~70才代で110/分)で週3

回以上実施します。運動の強さは、自分の運動能力の5割程度にして軽く汗ばむ程度を目

安とします。

ただし、心肺疾患、コントロ―ルが悪い糖尿病など重篤な合併症があると運動を控えねば

なりません。主治医と相談して取り組みましょう。

運動療法の中でとくに重要なのが継続です。、運動の効果は永久でなく、運動を中断すると

容易に消失するので、生涯を通じて運動の習慣を持ち続けることが必要となります。運動に

より改善したインスリン感受性も数日以内に消失し、折角、手にした効果も継続せねば意味

がなく、継続は困難です。継続は重要ですが時間が経つにつれ、徐々にいなくなっていくと

いうのが現状です。経口血糖降下剤より食事・運動療法の方が糖尿病抑制効果が大きいと

証明されているが生活習慣改善の達成率は50%で継続的な習慣改善は難しいことが明らか

です。

運動療法継続のポイント

①運動を生活化する - 毎日の食事と同じように、運動を生活のプログラムに取り込むこ

とです。「いつでも、どこでも、1人でも」できる運動が推奨され、歩行が最適とされます。朝

起きてのラジオ体操、通勤途中でのウオーキング、階段昇降、寝る前のストレッチング、休

日の遠足、サイクリング、ゴルフをしたりするように、日常生活の中で運動を不可欠なものと

して行うことが大切です。

②患者に合う運動を選ぶ - 人によって年齢、体力、運動経験などが異なるのでオーダ

ーメイドでプランを立てる必要があります。無理な運動や忙しい人は続かないので短い時間

で簡単にできる運動がいいのです。

③楽しい運動をする - 仲間がいると、お互い励まし合いながら、運動の楽しさを実感で

きます。単調にならぬよう運動の内容やコースを変える。

④運動の目標を立てる - 目標は高過ぎず低からず、到達しやすいほうが、目標達成の

満足感が得られやすく、新たな運動の動機ずけとなります。体重は何kg減らす、毎日30

分、1万歩歩くなど具体的に目標を立てるとよいでしょう。


コーチング・エンパワーメント:「患者が自らの生活をコントロールし、自己決定していく能力

を開発するプロセス」の行動変革をサポートする。

NAFLDの治療として、食事・運動療法の継続とその難しさを述べてきたが、一時的に減量で

きてもリバウンド現象、それに伴い、肝機能が悪化する例も多く見られ、継続できるようにす

るためには、患者自身の意識の変革も重要です。こうした面からコーチングやエンパワーメ

ントが注目されている。

近年、米国では、慢性疾患を管理していく方法としてこれが用いられ、医療者として健康管

理の責任は患者自身にあり、患者自身が自己管理について十分な知識と理解に基ずいた

うえで自己判断できるようサポートするコーチになることが医療者の役割であるといえます。

NAFLDの食事・運動療法には、患者の生活習慣の変化が不可欠であり、患者自身が積極

的にセルフケア(自己管理)に取り組む姿勢が重要です。しかし、すでに習慣化したものを

変えることは相当に難しく、病気に対する知識の不足だけでなく、病気を否定してセルフケ

アに取り組もうとしない、病気や治療に対して様々な感情的問題を抱えている患者が多く、

これを患者が積極的にセルフケアに取り組めるようにするには、病気状況に適応できるよう

に援助する必要があるのです。患者と共に考え一緒に治療を進めていくという姿勢が必要

です。

やる気を見せない患者の胸の内を全て聞き、共有することが大切で、個々人の理由を聞き

出すことにより、問題解決の糸口をつかめるのです。

エンパワーメント・カウンセリングの過程

ステップ1.問題点を探る(過去):傾聴して問題を探る。

ステップ2.感情と意味を明確にする(現在):共感的理解を示し、感情問題を整理する。相

手の表現を助け、適切な質問をする。

ステップ3.計画を立てる(未来)

ステップ4.行動上の決意(未来):実行可能な目標を一緒に考えて設定する

      1.できるだけ小さく、より具体的な目標設定すること。

      2.適切なモデルを提供する(課題を完璧さを求めず何とかこなせているモデ

ル)。
      

              3.賞賛する(出来ないことを叱るのではなく、出来ていることを褒める)


              変化スケジュールモデル


患者の特定の行動変化に対する準備状況には、いくつかの異なるステージがあるとする考

え方。基本は、人は準備が出来てはじめて変われるとする考え。

いきなり行動変化や手段や計画を話し合うのではなく、まず変化に対する患者の関心や、

やる気の状態を把握するのが大切。

 ①前熟考期:近い将来に行動を変えるつもりが全くない状態。

 ②j熟考期:行動変化について考えだすが、まだ決断しない状態。

 ③準備期:近い将来行動変化を起こそうと計画tを立てる。

 ④行動期:実際の行動変化を起こす。

 ⑤維持期:新たな行動を維持し、以前の行動に逆戻りしないよう努力する。

   こういったことを通して、患者自身が「ある課題に対して、自分ならここまでできるという遂

行可能感をもたせ、さらに目標に到達するのに必要な手順を組立、それを実行できる能力

を自分が持っている」と思えるようにすることが大切です。多くの患者は何をすべきか分かっ

ていても、同時にかなり強い気持ちで「したくない」のです。「決める」⇔「できる」⇔「楽しい」

のサイクルを作ることが重要です。食事療法も運動療法も継続が大切です。いずれも長年

にわたり、培ってきた習慣を変化させねばならない非常に大変なことですので、こういったア

プローチも取り入れながら治療に当たることが重要と言えるでしょう。