皮膚、口腔、毛髪、爪の診察       

                                                                          

                               

  観察しやすく、栄養状態の変化が表れやすい器官として皮膚、口腔、毛髪、爪などがある。

 1.皮膚 → 栄養状態が良好な皮膚は良好な色調があり、なめらかで軽度な湿潤がある。

  ●乾燥:脱水、ビタミンA欠乏症、壊血病などの栄養疾患、更に、糖尿病、慢性腎不全、甲状腺機能低下症でみられる。

  ●湿潤:甲状腺機能亢進症でみられる。

  ●蒼白:貧血により皮膚の血管内血色素量が減少することにより出現する。

  ●色素沈着:外界との接触部分や衣服があたる部分、しわの部分によくみられる。

           ビタミンC欠乏症、悪性貧血などの栄養疾患、さらに糖尿病、肝硬変、がん悪液質などにもみられる。

  ●黄染:柑橘類、黄色野菜の多量摂取による高カロテン血症や肝硬変、胆道疾患、溶血性貧血による黄疸に

        皮膚の黄染がみられる。黄疸は血清ビリルビン値が2.0mg/dL以上になると出現する。

        尚、高カロテン血症では、眼球結膜の黄染がみられないことから黄疸と区別ができる。

  ●湿疹:食物アレルギーやリボフラビン欠乏症でみられる。

  ●皮膚炎:亜鉛欠乏症において、口、肛門、褥瘡周辺にみられる。

  ●赤褐色紅班:ニコチン酸欠乏によるぺラグラフでは、日光に暴露される部分にみられる。

             肝硬変では手掌紅班が、頚部から前胸部にクモ状血管腫がみられる。

  ●黄色腫:脂肪の沈着により皮膚に黄色味の盛り上がりができる。高脂血症においてみられる。

  ●肥厚:ビタミンAやビタミンCの欠乏症では、角化のために皮膚が乾燥して厚くなる。

  ●褥瘡(じょくそう):長期臥床の場合、仙骨部に起きやすく、発赤に始まり、水疱形成、さらに潰瘍形成を来す。

               一般に「床ずれ」といわれる。長期間の臥床のために体重による持続的圧力により

              虚血性変化が起こることが原因であるが、低栄養状態を放置すると悪化しやすく治癒が困難となる。

              褥瘡の予防や治療には、栄養状態全般をよくすることが必要で、特にエネルギー、タンパク質、

              亜鉛は十分補給するようにする。

 2.口腔 

  ●口唇:口唇には多量に血液が供給されるため、貧血の場合、口唇の色調が赤味を失う。リボフラビン欠乏症では、口角部に亀裂を生じ

       口内炎が起こり、ニコチン酸欠乏によるぺラグラフでは、口唇の腫張、発赤、口内炎がみられる。

  ●口腔粘膜:栄養状態が良好な場合、赤色を帯びたピンク色をしているが、貧血の場合、色調が全体的に赤身を失う。

  ●歯肉:貧血では赤味を失い、ビタミンC欠乏症では歯肉がやや肥大し、柔らかく海綿状となり、圧痛があり、歯が抜けやすくなる。

  ●舌:健康で栄養状態がよい舌は、やや赤味を帯び湿潤し、表面には舌乳頭がありザラザラした感じがある。脱水症になると乾燥してくる。

      ビタミンB12や葉酸の欠乏による悪性貧血では、舌の赤味が失われ、下乳頭が萎縮して表面が平滑となる。リボフラビン欠乏では舌が紫がかった

      独特の色となり、しばしば深い亀裂が生じる。ぺラグラでは、舌が発赤し、乾燥してピリピリした知覚異常を訴える。

 3.毛髪 → 老化現象の1つとして脱毛や白髪が起こるが、栄養不良によっても年令不相応に出現する。

  ●脱毛:悪性貧血、ビタミンA過剰症、さらに抗がん薬や免疫抑制薬を使用中に生じる。タンパク質が欠乏する

        クワシオコールやマラスムスでは、タンパク質の合成低下により脱毛が起こる。

  ●白髪・退色:悪性貧血では、脱毛と共に白髪も起こる。タンパク質欠乏では毛髪の退色により赤色化がみられる。

 4.爪:健康な爪は、ピンク色で爪と爪床との間に半月状の境界線が明らかに見える。一般に栄養状態が不良になると、爪の縦に亀裂が生じやすくなる。

     タンパク質の摂取不良やネフローゼ症候群などで低アルブミン血症が起こると、爪の横に帯状の白癬が見られる。鉄欠乏性貧血では、

     薄く弱くなり、高度になるとスプーン状になる。