保健機能食品

健康食品と医薬品との相互作用については、まだ、不明な点が多く、事例についても多くは発見されていないのが現状だが相互作用のメカニズムを学ぶことにより、十分対処できる。

✤健康食品と医薬品との相互作用と栄養指導

栄養素と医薬品との相互作用については医師や薬剤師には関心が高いが、一方の管理栄養士の方々には医薬品の知識(薬学)は馴染みが薄く今後の研究が望まれる。

食事や栄養素との相互作用とは異なり、薬の吸収や分布に影響するばかりでなく、細胞レベルにおいて生理機能に強い影響を及ぼすような相互作用の起こる可能性が高い。

健康食品は栄養素ばかりでなく、非栄養素である生体機能調整成分も含んでおり、場合によってはそれらが濃縮されて、通常の食品摂取では見られなかった相互作用が、

健康食品を利用した場合には発現しうるということです。通常食品の場合と異なり、思わぬ成分が医薬品と相互作用する可能性を否定できるものではないのです。

✤薬物代謝酵素の関係する相互作用

経口投与された医薬品は、小腸などの消化管より吸収された血流中に移行するが、基本的には生体にとって異物ですので、殆どは肝臓で解毒代謝され、水溶性が高まるように

化学変化を受け、腎排泄などで体外に排泄されます。この薬物の代謝に大きな役割を示すものがチトクロームP-450と呼ばれる解毒代謝に働く酵素です。

いくつかの分子種からなるチトクロームP-450は特定の薬物に特定の分子種が働き、特にCYP3A4は現在使用されている薬剤の約7割は、この分子種によって代謝を受ける

ことが分かってきている。チトクロームP-450は肝臓だけでなく、小腸などの消化管にも現れ、経口投与された薬物は吸収される際、最初に胃腸管において一部が代謝され

薬効を失います。これを薬物の初回通過効果といい、その後、肝臓で代謝され、静脈投与よりはるかに薬物の量が多い経口投与されたごく一部の薬物が循環血流中に放出され

標的組織において薬効を発現します。このとき、消化管で発現しているチトクロームP-450が、薬物と同時摂取された食品に含まれる特定成分によって活性が阻害されたり、

発現が増強されたりします。チトクロームP-450の活性が阻害されると、薬物の血中濃度は増加して薬効が強く現れ、発現が増強されると血中濃度は減少して薬効が減弱する。

チトクロームP-450を阻害する食品としてグレープフルーツがよく知られている。同じ植物種である柑橘類のブンタンにも同様の相互作用の可能性がある。

✣グレープフルーツジュースにより作用が増加する経口薬

分類 薬物 分類 薬物
心循環器薬 ジヒドロピリジン系カルシウムチャネル遮断薬(フェロジピン、ニソルジピン、アムロジピン、二モジピン、二フェジピン、ニトレンジピン)、ジルチアゼム、キニジン 抗凝固薬 ワルファリン
免疫抑制薬 シクロスポリン、タクロりムス、 副腎皮質ステロイド エストラジオ―ル、コルチゾール
HMGCoA還元酵素阻害薬 シンバスタチン、ロバスタチン、アトルバスタチン、プラバスタチン 抗不安薬 トリアゾラム、ミダゾラム、ジアセパム
抗ヒスタミン薬 テルフェナジン 抗菌薬 キニーネ、アルテメター、サクイナベル、イトラコナゾル、クラリスロマイシン
気管支拡張薬 テオフィリン その他 ハロペリドール、ブスピロン、シサプリド、カルバマゼピン


✣チトクロームP-450の発現を増加させる食品・食品成分

高タンパク質食品、ニンニク、炭火焼肉等木炭を調理に使用した食品     燻煙処理した食品等に含まれる芳香族炭化水素

アブラナ科野菜に含まれるインドール化合物

✣チトクロームP-450の発現を増加させる健康食品

プロテインサプリメントなどの高タンパク質含有食品、製造過程で極度な加熱が加わり1部が炭化したもの(黒焼きや卵油など)

アブラナ科植物(キャベツ、ケール、アブラナ科野菜のスプラウトなど)を使用した青汁や錠剤などの食品     ニンニクを使用した食品

✤消化管粘膜細胞の排泄系トランスポーターが関与する相互作用

小腸粘膜、血液脳関門、腎尿細管、抗がん剤耐性を獲得した癌細胞などには、細胞内に取り込まれた薬物を直接細胞外へ汲み出す働きのあるP糖蛋白質という

トランスポーターが存在し、健康食品として利用されているセイヨウオトギリソウがこのP-糖タンパク質の活性を増強させる。これの長期間摂取によって

免疫抑制薬シクロスポリン、強心薬ジゴキシン、抗HIV薬インジナビル、気管支拡張薬テオフィリン、アミノフイリン、抗凝固薬ワルファリン、高脂血症治療薬シンバスタチン、

ホルモン剤のエチニルエストラジオールなどの薬物の効果を減弱させることが知られています。他のハーブ系健康食品に同じ効果があるか不明です。

✤薬力学的な相互作用

薬の効き目に食品・食品成分が影響する場合を一般に薬力学的な相互作用といいます。ワルファリンと食品・食品成分との相互作用について。

✦血液凝固因子プロトロンビンがビタミンK{(クロレラ含有食品、緑色野菜(ケール、モロヘイヤ)の青汁}の関与で活性化してワルファリンの効果を減弱し、

 ニンニク含有製品やタマネギ抽出物含有食品などの場合はプロトロンビン時間を増加させワルファリンの線溶活性を増大させ効果を増強する。

 ワルファリンと健康食品との相互作用はこの2点を良く理解することが大切です。

飲食物 作用 機序 アルコール飲料 減弱 アルコールの常飲により肝臓の薬物代謝酵素群P-450が増加し、それによりワルファリンの代謝が促進される
増強 飲酒中や飲酒直後など体にアルコールがある状態では、薬物代謝酵素による代謝が抑制される
納豆 減弱 納豆菌は細菌類の中でもとくにビタミンKの合成能力が強いので、納豆の摂取によって腸内でのビタミンKの合成が起こり、ワルファリンの作用が減弱する可能性がある。 セイヨウオトギリソウ 減弱 セイヨウオトギリソウの連用により肝臓の薬物代謝酵素群P-450が増加し、それによりワルファリンの代謝が促進される
ビタミンK含有飲食物 減弱 クロレラ食品・ほうれん草・かぶ(葉)・モロヘイヤ・春菊・小松菜などの大量摂取により、作用減弱の可能性がある。 ビタミンC 減弱 ビタミンCの極端な大量摂取により、プロトロンビン時間を減少する(血液凝固が促進される)


✦食塩と血圧降下薬との相互作用は、食塩の摂取に起因する血圧上昇により血圧降下薬の作用が減弱される。高血圧治療には減塩の栄養指導も必要です。

✦イソニアジドは代表的な抗結核薬で、この服薬時に醤油やチーズなどタンパク質系の発酵食品や肉加工品などチラミン含有食品を摂取すると、血圧上昇、動悸などの症状が現れる。

上記取り上げた相互作用は代表的なものです。健康食品と医薬品との相互作用は研究の途についたばかりです。管理栄養士においても薬学の学習が必要です。