栄養士は高齢者の摂食・嚥下障害に対応するには、多職種と連携・協働によって、ケアプランに参画し、栄養管理とQOLの向上に努めねばならない。

高齢者が食物を安全においしく適切なテクスチャーで食べることが出来、必要な栄養量と水分を確保できる食環境にあるか常にチェックし、とくに飲み込みやすい食形態の

調整・工夫を図り、継続的にアセスメントを行う必要があります。その際特に留意すべきは、単に栄養補給すればよいということではなく、、高齢者の摂食・嚥下機能を常時

把握して、おいしく食べられる口とQOLに配慮したおいしい食事を工夫することが必要です。


✱栄養ケアプランの作成→栄養ケア実践→評価→問題点の改善→栄養ケアプラン作成→・・・・・トいうサイクルを繰り返して継続的にアセスメントを行うことが必要です。

アセスメント票は、それぞれの施設や地域などで連携する多職種のチームメンバーが情報を共有できるように使いやすい独自のものを作成することが望ましい。

✦食介護・栄養アセスメントの内容

①病歴(既往歴・現病歴・服薬)        ②精神機能(抑うつ・閉じこもり・不安・依存・認知症・知的障害)        ③摂食・嚥下状態(口への取り込み・咀嚼・嚥下・食欲)

④心身機能(上肢・下肢・視覚・聴覚・味覚・臭覚)         ⑤食事環境(調理・食事方法・食事姿勢・摂食時間)         ⑥食事内容(食形態・栄養量・嗜好・水分)

⑦栄養状態(BMI・体重・血液生化学値・低栄養・脱水)         ⑧排泄         ⑨生活能力(買い物・献立作成・調理)         ⑩家族関係(孤独)


上記の項目をチェックし、要介護高齢者が少しでも安定した生活を送れるように支援する必要があります。

個々の摂食・嚥下機能の状態に応じて、段階別の食事をとるが、食欲が低下し、通常の食事だけでは栄養素・エネルギーが不足するときは栄養補助食品の選択も必要です。

口腔機能の状態と栄養補助食品の使用例

口腔機能の状態 食形態 栄養補助食品使用例
飲み込みには特に問題ない 液体でも可能 テルミ―ルミニ、ハイピユア、MAポチメイバランス、カロリアンミニ、ブイクレス高栄養エンジョイムース、ゼリー
食物が口からこぼれる
うまく噛むことができない
噛んだ食物を飲み込める状態にできない
軟らかいゼリー状
なめらかなムース状
∗貼りつきやすく、
もたつくもの不適
テルミ―ルソフトM、ソフトリッチFE、ZN(軟らかく作成)、アイソカルゼリー、トロミー、ブイクレス(軟らかいゼリー作成)
もぐもぐしての見込みができにくい時がある
飲み込めないために口からこぼれる時がある
固めのゼリー状

高粘度の液体
高栄養エンジョイゼリー

アイソカルゼリー
ソフトエット、ブイクレス(ゼリー作成)

市販されている栄養補助食品には、様々な食形態のものがあるので、高齢者の栄養状態と摂食機能を見極め、最も適切な製品を選択することが必要です。

✦脱水への対応と水分の補給

高齢者は脱水症状を起こしやすく、食事以外に1日1ℓ以上の水分摂取が必要とされています。摂食・嚥下機能に問題がない場合には、おちゃなどが積極的に摂取できますが、

機能が低下している場合には、増年粘剤やゲル化剤を使用して、とろみのついた液体や軟らかいゼリーによって、水分補給が簡単にできるよう工夫することが必要となります。

高齢者の嗜好も考慮して、イオン飲料、茶類、蜂蜜、黒蜜、オリゴ糖などで風味ずけをした軟らかいゼリー状のとろみ水を常時準備しておきます。

高齢者への適切な水分補給は生命にかかわる重要な問題ですが、その必要量は明確ではなく、一般に1日の最低必要水分量は30~35mg / 体重1kg、或いは

、1㎖ / kcal x 必要エネルギーで算定されます。高齢者が脱水状態を引き起こしやすいのは、水分は通常のどの渇きによって適切に調整されるが、その渇きに対する感覚が

加齢と共に生理的に低下するほか、認知力の低下、嚥下困難、服薬、コミュニケーションの欠如、失禁の心配など、多くの因子が水分摂取を妨げているためです。

❈多職種協働によるアセスメント

一般に介護老人福祉施設においては、看護師や常勤の医師はいなく、理学・作業療法士などの配置も少ないのが現状です。従って、口腔内の状況や嚥下機能の評価においても

多職種が積極的にかかわり、個々の高齢者の全体像の把握とアセスメントを行い、知恵を出し合うことでマンパワー不足を補う必要があります。

摂食・嚥下障害に起因する脱水、誤嚥性肺炎、低栄養等のリスクをもつ高齢者に、個々の摂食機能に応じた栄養ケアプランを作成し、経口での摂食を工夫していくことで、

食事による栄養補給や水分の摂取が可能になります。口を使って食事をとることの意義を再認識し、高齢者1人ひとりの摂食・嚥下機能を適切に評価した上で経口での食事を

実現していくことが、高齢者のQOLを高めることは勿論、人間としての尊厳を取り戻すことにつながります。


❈生きる喜びは口腔から始まる

「食べること」それは命ある者にとって、生きるために欠かすことのできない本能的欲求行動である。人にとって食べることは単なる空腹を満たすための本能的な行為だけでなく、

よりよく生きたいと願う生活の質、生きる質の向上につながり、生きる喜びとなる。その生きる喜びを取り入れる器官が「口腔」である。さらに口腔は食べ物を取り入れるだけでなく、

呼吸や話すこと、表現すること等、生きるための第一歩としての取り入れ口でもある。また食物の認識や記憶のセンサーとして、脳への全ゆる情報を送る役割を兼ね備えている。

この高度な運動器、敏感な感覚器の正常な機能が、脳の働きを活性化して「おいしく食べる」喜びとなる。こうしたことから、食べ物を口から摂取することがいかに大切かが分かる。

❈食介護とは

食材の見直しから摂食・嚥下まで一連の食動作を医学的見地から支援し食文化・食習慣等も含めた要介護者の食環境を包括的に把握し一生口から「おいしく食べる」為の介護。

                  
福祉       医療        保健                                                              専門的基本知識の共有化
             
                   
介護                    食介護

                   食事          食事介護   +   食べる環境                                  

                   入浴                  +

                   排泄                口腔キュァ (治療)

                                      口腔ケア (清掃)

                                      口腔リハビリテーション


❈摂食・嚥下段階における介護食を見極める

食べられない原因には、①食べる意欲がない  ②噛めない  ③飲み込めない  などがあるが、それらを解決するためには、摂食・嚥下の流れに沿って考えねばならない。

先行期:食べ物であると認知する → 捕食期:口に取り込み → 咀嚼期:よく噛んで唾液とともに食塊を作る → 口腔期:食塊を喉に送り込み → 咽頭期:飲み込んで → 

食道期:胃に達する までの6段階から成り立っている。

✦機能面から食形態を分類すると①食べ物を確認する段階 ②食塊を作る段階 ③食塊を飲み込む段階に分けられる。食塊を作る段階では「噛む動作」と「つぶす動作」が伴う。

   食べる意欲がない

         食べ物を確認する段階  ᅳᅳᅳᅳᅳᅳᅳᅳᅳᅳᅳᅳᅳᅳᅳᅳᅳ→  おいしく感じる料理の工夫

   噛めない                   噛む動作                                                    盛りつけ、色彩
                             固いものは歯で噛む
         食塊を作る段階                           →   食べやすい、大きさ、軟らかさに調理

                            つぶす動作                                             ∘物性の異なった食材が同皿に入っている場合は、2つの食動作を同時に
                             軟らかいものは舌と口蓋でつぶす     行なわなければならず、障害者にとって危険な食べ物になってしまう。例:ご飯にふりかけ
                                                      ∘キザミ食は噛むことが難しく危険な調理方法である。キザミ食は大きさでなく固さが 
  飲み込めない                                            ポイントとなる。軟らかくすることが大切である。

        食塊を飲み込む段階  ᅳᅳᅳᅳᅳᅳᅳᅳᅳᅳᅳᅳᅳᅳᅳᅳᅳᅳᅳ→  トロミをつける、ゼリー状にする


                                                       飲み込むタイミングがずれて気管に入ってしまう誤嚥が起きる。 

✦昨年、栄養改善法が健康増進法に改定され,栄養士が栄養だけを考える時代は終わり、広い範囲で国民の健康を栄養をとおして取り組む時代が始まった。

            食介護・栄養アセスメント
食介護支援チーム

摂食・嚥下のメカニズム

介護食の基礎知識

嚥下障害者の食形態