長寿遺伝子を鍛える

  1950年当時の定年は55才で、日本人男性の平均寿命は58才だった。それに比べ現在の定年は60才、平均寿命は79才。定年は5年しか延びていないのに、

  寿命は20年以上も延びている。定年後3年で平均寿命を迎える事と、現代はそうはいかない。年金不安や、医療費の負担増など、厳しい社会情勢

  の中で定年後も20年近く生きていかなければならないのである。アンチエイジング医学が目指すべきは、この20年間を「どう健康に生きるか」ということにある。

  例え寿命が延びても、糖尿病や心臓病などの生活習慣病や癌などで薬漬けや寝たきりでやりたいこともできないのでは生きている意義が半減してしまう。

  認知症になったら、折角の人生を楽しむこともできない。何才で寿命を迎えるにせよ、生きている限りは健康なまま人生を楽しみたい。

  アンチエイジングはこれからの時代を生きる全ての人たちにとって、最も重要なテーマである。遺伝子を鍛えると言う意味は、長寿遺伝子のスイッチを

  「ON」にすることだ。

氷河期を生き延びた遺伝子 長寿の鍵を握るミトコンドリア
進化する長寿研究 カロリスで老化を防ぐ
"長寿遺伝子"の発見 老化は運命か
メタボに学べ 長寿遺伝子のスイッチの入れ方
カロリー制限戦略 長寿の選択

    ◎氷河期を生き延びた遺伝子

100万年前の人類 偉大なる発見は理解されない
進化した遺伝子 カロリー制限したサル

   ●100万年前の飢餓状態の状態から生き抜いてきた人類、今食べることに困らなくなった代わりに、肥満や糖尿病、メタボリックシンドロームという

  新たな悩みを抱えるようになった。

  ●進化した遺伝子

  地球が誕生したのは今から約46億年前と言われ、マグマの海と水蒸気に覆われた原始の地球に雨が降り続き、元素をたっぷり含んだ海ができ、

  その中で生命が誕生したのは約38億年前だ。この頃の生命はきちんとした「細胞」と言う形を持っておらず、核もミトコンドリアも持たない

  原始的な生物に過ぎなかった。この生物が進化し、核やミトコンドリアを持つ単細胞生物なるには、もう数億年を要した。この単細胞の時代は

  20数億年以上も続き、私達人類と同じ多細胞生物へと進化したのは、今から7〜8億年前のことである。以降、生物は様々な進化の過程を経ていく。

  海中の貝類や魚類などの生物は陸上に上がり、両生類、爬虫類へと分化する。恐竜時代、哺乳類時代と、地球上での主役も次々と替わって言った。

  人類の直系の祖先がようやくアフリカの地に誕生したのは、生命誕生から37.9億年以上も経った頃、わずか約700〜600万年前のことだ。

  そのきっかけは、アフリカで大きな地殻変動が起き、森が消失し、樹上生活からサバンナで暮らす道を選ぶしかなくなった、これが二足歩行の

  類人猿を派生させたと言われている。それまで、私達の祖先は森に豊富にある木の実や葉を食べる、いわばべジタリアンだった。サバンナでは  

  狩りを覚え肉を食べるようになった。狩りに使う石器などの道具を手にすることで、体も脳も急速に発達していった。猿人から原人への進化でsる。

  ところが、200万年前、地球は寒冷期に入り、アジアやヨーロッパ等、世界各地に飛び出した。これがちょうど100万年前である。

  生物は、それまでにも強烈な熱や紫外線、旱魃かんばつ、隕石、地殻変動など、様々な絶滅の危機に遭遇してきた。その度に「生きる為の栄養確保」に

  崖っぷち立たされて、毎日が生きるか死ぬかの餓えとの闘いであった。そんな中、遺伝子はこの問題に対処する戦略を獲得していたのである。

  イギリスの動物行動学者の「利己的遺伝子論」によれば、人は生命の危機に晒された時、驚異的な力を発揮する。そうした潜在的な力は

  誰もが持っており、普段はその存在に気ずかずに暮らしている。「火事場の馬鹿力」というが、危機的状況の中で、生き延びる為の遺伝子が目覚め、

  スイッチが入り、人類は絶滅を免れてきたのだ。その遺伝子は、現代の私達にも受け継がれいるのだ。私達の体は60兆個の細胞からできている。

  その1つ1つ細胞の中に23,000種類の遺伝子がある。しかし、常に使っている遺伝子はわずか5%に過ぎず、残り95%は眠ったままである。

  その中に様々な「生き延びる力」が潜んでいる。進化の過程で獲得し、遺伝子の中に組み込まれてきた力である。