情報過多時代の食と健康の考え方

   ✤もっと知りたい、食べ方を巡るウソ・ホント                        

発酵食品の菌は生きて腸内にたどり着けない? 食品をすり潰すと栄養価は変わるのか?
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 ✲発酵食品の菌は生きて腸内にたどり着けない?

  発酵食品の健康効果について、ヨーグルトや漬物などの、菌が生きている発酵食品は腸内の細菌を増やすので健康に良いと言われ、一方、胃の中に入ると、

  酸性の環境によって菌は殆ど死んでしまうとも聞くが本当はどうなのでしょうか?細菌やカビ、酵母などの各種微生物の働きによって、元の食品には無かった独特の

  香りや味、テクスチャーなどが生み出された食品を発酵食品と総称しています。味噌や醤油、酢などの調味料をはじめ清酒、ビール、ワインなどのアルコール飲料、

  ヨーグルトやチーズなどの乳製品、納豆や漬物、鰹節、パン等々、多岐にわたります。どのような食品を主要な原料にしているのか、どのような微生物を利用して

  いるのか、食べる段階でその微生物が生きているのか死んでいるのか等、これまた多種多様です。従って発酵食品をひとくくりにして健康への影響を考えることには

  少々無理がありますが、現在論じられている発酵食品の保健効果は大きく次のように3分類出来ます。

  @発酵食品中の生菌による整腸作用→これは約100年前ロシアでヨーグルト摂取長寿説までさかのぼれ、哺乳動物の乳に乳酸菌が繁殖し産生される乳酸によって

  乳タンパクが凝固したものを酸乳といいます。ヨーグルトもその一種ですが、酸乳を飲用すると生きた乳酸菌を摂取できるので腸内環境が改善され、便秘や下痢を

  正常にするだけでなく、健康全般へ好影響するというものです。乳酸菌が生菌として存在する発酵食品はヨーグルトや乳酸菌飲料の他に、乳酸発酵した野菜の

  漬物やキムチなどもあります。生きている乳酸菌を摂取すると、それが腸に達して腸内細菌叢を改善するというのですが、強い酸性の胃を通過し、小腸や大腸に

  到達するのは容易ではありません。唯、食事の条件によって胃のpHが高くなることもあり、又、耐酸性の乳酸菌もいるので、生きたまま腸にたどり着けるものもいます。

  生きている乳酸菌をたくさん含む飲食物を毎日摂取する人の大便中からはその食品に含まれる乳酸菌がたくさん検出されるが、食べるのを止めるといなくなることを  

 考慮すると、摂取した乳酸菌が定着することは難しいようです。有用菌が多い状態に腸内細菌叢を維持するには、ヨーグルトや生菌入り乳酸菌飲料を継続的に

  摂取しなければなりません。定着はしないけれど毎日送り込むことによって腸内環境が改善されるという考え方です。

  A微生物菌体摂取の免疫系への影響→発酵食品中に微生物が生きているか否かは関係なく、微生物菌体を摂取することに意味があるというものです。

  乳酸菌を培養し、その菌体を集めて加熱殺菌したものを経口的に投与することによって、ある種の癌の発育を抑制すると言う報告もあります。

  菌体の経口的な摂取が免疫系に影響するのではないかということですが、まだまだ研究途上です。  

  B微生物の代謝産物の有用性→これは実に多様で、例えば酸乳中には乳酸菌が乳タンパクのカゼインを分解して生成するトリぺプチドが存在し、それが血圧上昇

  抑制物質として作用すると報告されています。又、乳酸菌によって1部の乳糖が分解されるので、乳糖不耐症の人には有利です。伝統的発酵食品の代表格である

  味噌の中には、血圧抑制物質の他、脂質代謝を改善したり、潰瘍を予防するような物質が認められるともいいます。納豆菌のいくつかの代謝産物も、ビタミンKを

  はじめとして注目されています。

  ✶一歩誤ると危険な食品になることも→微生物と人間は昔から厳しい戦いをしてきました。病原微生物によって引き起こされる感染症や、微生物による食品の腐敗

  などは微生物からの手ごわい攻撃ですが、発酵食品は微生物からの贈り物といえるでしょう。「発酵」という加工工程に人類が期待したのは、食品の保存性や

 嗜好性、栄養性の向上という付加価値でしたが、恩恵はそれだけに留まらないことがだんだん明らかになってきました。長い間食べてきたという歴史が安全性の

  証明になるが、有害微生物が誤って繁殖してしまった時には逆に大変に危険な食品と化すことも忘れてたならないでしょう。我々の食生活は基本的には穀類や

 生鮮食品で営めますが、発酵という加工法によって作られた加工食品の摂取も健康維持に一役買っていることは事実のようです。とはいえ、保健効果に過大な期待を

 するのは発酵食品の価値を矮小化わいしょうかしかねません。発酵食品がもたらしてくれる豊かな風味や味わいそのものを大切にしたいものです。