情報過多時代の食と健康の考え方

    ✲酸性食品・アルカリ性食品の俗説がいまだになくならないのは何故?

  食品を酸性食品とアルカリ性食品に分けて、酸性食品を避けるという非科学的な考え方がいまでも、使われているようです。大腸内の環境が酸性に傾くと

  高尿酸血症や痛風になるという、また摂取する食物によって血液のpHが変動するという今日では否定されていることが食物関係の専門書に書かれている。

  巷にあふれる健康に関する食べ物情報には、最新の研究成果にも基ずくものや、昔は通説だったが今は否定されている説があり、混在しているようです。

  ✶アルカリ性食品・酸性食品とは→アルカリ性食品・酸性食品という分類は食品中に含まれるミネラル(無機質)の種類と量に基ずくものであり、飲食物

  それ自体のアルカリ性・酸性を示すものではありません。従って酸味の強い梅やレモン、ミカンなどはリトマス試験紙では酸性を示すが、ミネラル組成からは

  アルカリ性食品になります。食品に含まれる無機質のうち、ナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウムなどアルカリ性元素の量が、硫黄、リン、塩素など

  酸性元素の量よりも多ければアルカリ性食品、少なければ酸性食品としています。体内でアルカリ性元素は水酸イオンを、酸性元素は水素イオンを生じ、

  それぞれが血液や体組織をアルカリ性、あるいは酸性にするという考え方が、このような食品の区分の元になっています。果物類、野菜類、イモ類、大豆、牛乳、

  海藻類などがアルカリ性食品、穀類や大豆以外の豆類、肉、魚、鶏卵などが酸性食品とされています。食品をアルカリ性、酸性に分けることは無意味で科学的に

  誤っていると専門書に記されているが、商品宣伝に便利なフレーズとして利用価値が高いので「アルカリ性を摂って酸性を控えましょう」というフレーズは健在です。

  学校教育・医療関係者の中にもこの説を信じる人が少なからずいるのです。

  ✶食品中のミネラル組成で血液のpHは変動しない→商品宣伝広告の世界では「血液をアルカリ性に」という表現がよく使われます。しかし、血液はもともとアルカリ性で

  、体内で産生される酸や、生体外から投与される酸で簡単にpHが変わることはなく、肺や腎臓がこの調整に大きく関わっており、その仕組みに支障が生じ、

  正常範囲よりも低いpHになってしまった状態がアシドーシス(酸性症)、高くなってしまった状態がアルカローシス(アルカリ性症)で、これは非常に危険な病的状態

  ですが、摂取した食物中のミネラル組成でこういう事態を生ずることはありません。さて冒頭の「大腸内の環境が酸性に傾くと高尿酸血症や痛風になる」

  ということも、大腸ではそこに棲息する消化管微生物の活動によって乳酸などの有機酸や脂肪酸類が生成されるもので、健康な人の大腸内は酸性側にあることが

  正常のはずです。酸性食品を食べて大腸内が酸性になるとは聞いたことがなく、大腸内ではなく尿が酸性化する?尿が酸性に傾き過ぎると尿酸が排泄され

  にくいので、血中の尿酸濃度が高い痛風や高尿酸血症の人は尿のpHに注意する必要があると言われています。これが混同しているのでは?但し、痛風・高尿酸血症は

  尿酸の代謝異常による疾患であり、尿が酸性に傾いた結果として起こるわけではありません。

  ✶食物は尿のpHに影響する→摂取した食物のミネラル組成によって血液のpHは変動しないが、生体が置かれた条件によって尿のpHは範囲内で変化します。

  尿酸の溶解度は尿の酸性度に大きく影響され、pH(5以下)が低いと溶けにくいので、痛風・高尿酸血症の人は血中尿酸値が高いので、尿のpHを高くし、

  尿酸が尿中へ排泄されやすくする為に野菜や海藻の摂取量を多くすると尿のpHがある程度上昇します。尚、尿のpHを高めることは良いことばかりでなく、

  尿をアルカリ性にすると今度はリン酸塩などが折出しやすくなったり、細菌繁殖による尿路感染を起こしやすくなるということです。

  ✲ジタリアンは本当に栄養が足りているの?

  菜食主義という生き方があるが、宗教の戒律や健康上の理由で動物の肉を食べない人達です。人は菜食だけで健康を維持できるのでしょうか?

  菜食主義は思想であり、その中でも植物性食品しか食べない、あるいは、卵や乳製品は食べるという人も含まれ、栄養学的な興味関心の対象ともなるわけです。

  人間をはじめとする動物は、緑色植物が合成した各種の有機物を摂取しなければ生きていけない従属栄養生物です。草食動物もいるが、人間は基本的に動植物を

  食物とする雑食性の生物です。健康維持の為には動植物性食品を適度に摂取することが大切ですが、植物性食品のほうが健康には好ましいと思われているようです。

  動物性食品のみの食生活では問題が生ずることは事実だと思うが、植物性食品だけの食事(完全菜食)で問題はないのか?

  ✶食品を動物性と植物性に分類すると→食品を植物性と動物性に2分することは栄養学的に意味があり、蛋白質を構成するアミノ酸の種類や、油脂を構成する

  脂肪酸の種類が植物と動物では異なる特徴を持っており、どちらか一方にしか含有されない成分もあるからです。キノコ類はカビや酵母菌を含む菌類です。

  ✶必須アミノ酸をどのように補うか?→蛋白質を構成する約20種類のアミノ酸のうち、人体内で合成できるアミノ酸が非必須アミノ酸で、合成できないアミノ酸が

  必須アミノ酸です。生命活動に必要な蛋白質は全て体内で合成されるが、その際、必須アミノ酸のどれか1つが不足しても蛋白質合成はうまく行われず、

  必須アミノ酸は食物から摂取しなければなりません。全ての必須アミノ酸を十分量含む蛋白質を良質の蛋白質ということは栄養学の基本です。

  蛋白質の供給源は動物性食品全般と植物性食品である豆類や穀類です。肉、魚、卵、牛乳などに含まれる蛋白質は良質の蛋白質ですが、穀類の蛋白質には

  必須アミノ酸の1つであるリジンが、豆類の蛋白質には含流アミノ酸が不足しています。しかしながら、豆類に少ない含流アミノ酸が穀類には多く、穀類に不足する

  リジンが豆類には多いという特徴があるので、穀類と豆類を上手に組み合わせて食べるとお互いに不足する必須アミノ酸を補え合うことができます。

  動物性食品を摂取しない場合は、穀類と豆類の摂取に十分注意することが必要となります。

  ✶気になる菜食主義者の脂肪摂取→動物の生命活動に必須のコレステロールは植物性食品のみの食事では摂取できません。しかし、コレステロールは

  生体内で生合成されるので食事から供給されなくても問題はなく、むしろ、コレステロールの過剰摂取を防げると歓迎されています。また、動物性食品を摂取しない

  為に飽和脂肪酸の摂取量も少なくなります。大豆や種実類を摂取していれば不飽和脂肪酸の摂取量は少なくないから多価不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸(P/S比)が

  高くなります。さらに魚介類に由来するn-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量が非常に少なく、従ってn-6/n-3比が高くなります。P/S比が高いことは心臓血管系障害の

  予防に有効とされているが、高ければ高いほど良いということでもないようです。n-3系脂肪酸の摂取量が極端に少ないのは成人では問題ないが、乳幼児や妊婦では

  DHAの不足が気になります。

  ✶ビタミンやミネラル不足の懸念も→野菜・果物を食べていればビタミン摂取は問題ないと思われがちだが、これらから摂取できるビタミンはカロテンとビタミンCです。

  動物性食品を全く摂取しないとB群ビタミンやビタミンDが不足気味になります。玄米、パン、種実類を摂取すればビタミンB12以外のビタミンは補給できるが、ビタミン12

  肉、卵、牛乳などからしか摂取できません。またビタミンDは魚類や鶏卵が給源となるので完全菜食ではこれらを含むキノコ類を忘れずに摂取する必要があります。

  大豆には鉄が多く、緑黄色野菜にはカルシウムも多いので、無機質である鉄とカルシウムは植物性食品だけで十分に摂取できそうだが、動物性食品に含まれる

  鉄やカルシウムより吸収性が悪いと考えられており、亜鉛やヨウ素も不足しやすいようです。以上のように動物性食品を全く摂取しないことには問題点があります。

  完全菜食者では骨塩量が低いという報告もあり、ビタミンB2、ビタミンB12、ビタミンD、鉄、カルシウム等は不足してしまうので、それを解決するた為には、サプリメント

  が必要で、完全菜食が健康的と言いながらサプリメント等の助けを借りねばならないことは、純然たる植物性食品だけでは健康維持は難しいということを意味します。

  主義として完全菜食を行うのは個人の自由ですが、健康の為というのは疑問を感じます。完全菜食者に心臓血管系疾患系やある種の癌が少ないことは事実の

  様ですが、そういった病気の危険が少ないことだけが健康の証ではありません。とはいえ、動物性食品を多食している人が食生活改善のため植物性食品の良さを

  見直して、取り入れることは大賛成です。即ち、植物だけの食生活ではなく、穀類の摂取を重視し、豆類を摂取する習慣を取り戻した食生活です。

  主食として穀類を中心に、野菜や果物、大豆製品、海藻などをふんだんに利用し、さらに多くなり過ぎない量の肉、魚、卵、牛乳を組み合わせた植物リッチな

  食べ方が健康な食生活の基本ではないかと思います。