情報過多時代の食と健康の考え方

 

  食べ物や栄養が健康や病気への与える影響を、過大に信じたり評価することを「フードファディズム」と言います。もちろん、食と健康は深く関連するが、

  それを過大評価することです。但し、どこまでは適正で、どれ以上が過大かの判断は難しいですし、過小評価もまた問題です。

  巷に氾濫する健康に関する食の情報にはフードファディズムとおぼしきものが満ち溢れています。食料品売り場の「体のサビを防ぐ抗酸化成分が一杯」「免疫力を

  高める○○がたっぷり」というような宣伝文言もそうですし、TVや健康雑誌の「□□を食べて血液サラサラ」とか「××には発癌物質が。食べると癌になる」などです。

  「△△を食べて血糖値が下がった」「◇◇を飲んでみるみる痩せた」というような話題は食事療法が必要な人を惑わせ、栄養士を悩ませます。

  フードファディズムのタイプには❈「これを食べれば」「これを飲めば」をうたう食品の爆発的な流行:「紅茶きのこ」「酢大豆」「野菜スープ」「ココア」等が数年おきに出てきます。

  それを食べるなり飲むなりすると、万病が解決するかのような吹聴される食品が大流行することです。肥満解消、体調改善、血圧の正常化、癌予防など、

  多彩な効能が列挙されます。こんな情報は殆どマスメデイアが関与しているようです。 ❈食品・食品成分の“薬効”強調:食品や食品中のある成分の“薬効”を

  強調してその食品の摂取を勧めることです。一般食品や健康食品のこともあり、それを食べれば肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症改善に有効、と主張します。

  TV番組の「これを食べると○○に良い」「△△予防に」という食情報が該当します。ダイエット食品や健康食品が売らんが為にこの種の情報を発信しています。

  ❈食品に対する不安の扇動:食生活を全体としてとらえることなく、特定の食品を体に悪いと決めつけ、非難攻撃し排斥する一方で、ある食品を体に良いとして

  推奨したり万能視したりすることです。「自然」「植物性」はよく、「人口」「動物性」は悪い、とする傾向が見られます。この論に従うと、農薬と化学肥料を使った

  農産物は非難され、無農薬・有機肥料栽培が称賛されます。精製度が高い、超高温殺菌牛乳、インスタント食品、うま味調味料、炭酸飲料などは人工的であるので

  悪い。逆に手を入れない蜂蜜や黒砂糖、低温殺菌牛乳、有精卵は自然に近いから良い。など消費者の不安をあおる商法等の3つがあります。

  各種のマスメディアが先を争うように発する食情報は、ともすれば真実性より話題性や意外性に重きを置いた無責任な情報になりがちです。    

  保健効果を表示できるのは特定保健用食品だけです。もし「その食品」に本当に語るに足る効能・効果があるのなら特定保健用食品の許可を申請すれば良いのです。

食を巡る通説・俗説を検証する もっと知りたい、食べ方をめぐるウソ・ホント
体にいい食品・悪い食品 食育のあり方

  ✤食を巡る通説・俗説を検証する

化学調味料は体に悪い? ビジタリアンは栄養が十分か? 酸素を積極的に摂取するのは危険?
子供がキレやすいのは食事のせい? 野菜を食べ過ぎると糖尿病に? 粗食は本当に体にいいのか?
酸性食品・アルカリ性食品の俗説 カッとなりやすい人はカルシウム不足? 血液サラサラ・・・健康食品の広告表現  どこまでOK?

  ✲化学調味料は体に悪い?

  化学調味料の使用に賛否両論があり、化学調味料不使用とか無添加をセールスポイントにする商品をよく見かけるが、化学調味料は使わないほうが良いのか?

  アミノ酸の一つであるグルタミン酸、核酸であるイノシン酸やグアニル酸、およびそれらの塩類等が呈する味のことを「うま味」といい、これらを主成分とする調味料を

  「うま味調味料」といいます。伝統的調味料である食塩や砂糖、味噌、醤油とは来歴が異なる新しいタイプの調味料が「化学調味料」と呼ばれたのは公共放送用語で  

  あったと言うことです。化学が希望や可能性の象徴であった頃、この呼称は人々に親しまれたが、時代の変遷で今は人工的、不自然、体に悪いというマイナスイメージ

  になってしまいました。その後研究も進み化学調味料はうま味調味料に変わったが、今なお化学調味料という言葉が闊歩しています。

  市販されているうま味調味料はグルタミン酸ナトリウムがほとんどで、非必須アミノ酸の1つであるグルタミン酸は多くの食品蛋白質に含まれるアミノ酸であって

  トマトや小麦粉、キャベツ、玉ネギ等に含まれます。しかし、蛋白質に組み込まれていては、グルタミン酸もうま味を感じさせません。食品中に遊離の形で存在していると 

  うま味を感じさせることになるがトマトやチーズに遊離のグルタミン酸が多く、また、味噌や醤油は大豆や小麦の蛋白質を微生物が分解する結果、グルタミン酸が

  遊離するのでうま味を呈します。グルタミンナトリウムを食品へ添加しても健康に悪影響はありません。グルタミン酸を体に悪いものとし不安を煽る宣伝もあります。

  原料食品にもともと含まれる遊離のグルタミン酸と、調味料として添加するグルタミン酸を区別する方法はありません。使い過ぎはうま味も捻じ曲げます。

  

  ✲供がキレやすいのは食事のせい?

  子供の精神状態が不安定で怒りっぽく、いわゆるすぐ“キレる”のは食事に原因があるという説をよく耳にするが、食事の問題の背後にある家族関係などに  

  全く触れずに、食事だけに原因を求めるのは、いかがでしょうか?生理的・心理的な健康維持に食生活が大切であることは言うまでもありません。

  各種栄養素の不足は脳機能にも悪影響を及ぼします。特に、胎児期や乳幼児期に重度の栄養素欠乏に見舞われるとその悪影響は深刻で、精神機能に永久的な

  障害をもたらしたり、発育期の鉄不足で発達の遅れや学習成績の低下などが報告されています。成人の場合でも慢性的な栄養不足は、意欲の低下を招き、  

  社会的関心などを減少させ、むら気や過敏反応を増大させます。ビタミンやミネラルの欠乏も感覚機能の低下や注意力の欠損、抑うつなど、精神面や行動面に

  いろいろ変化を生じさせます。というように、栄養素の摂取不足が心理的・生理的機能を損なうことは事実ですから、悪い食事が子供を「キレさせる」可能性も

  十分に考えられるが、インスタント食品、清涼飲料類の摂取が多い中学生はイライラする、腹が立つという調査結果がこの説の根拠とされています。

  補導された少年たちの食生活も朝食抜き、清涼飲料水の大量摂取、スナック菓子、インスタント食品、野菜嫌いが全員に共通していたという調査もあり、どちらも

  食事内容の悪さが子供の心を荒れさせるという論です。精神的不安定さが食事内容を悪くしている可能性、非行が生活リズム全体を乱れさせ、結果的に食生活も

  乱れさせている可能性はないのでしょうか?非行やキレることと食生活との関係が論じられる時、何故か栄養素の欠乏だけが問題にされ、そういう食生活をするに

  至った家庭生活の背景やその問題点は抜けています。食事内容が良好であることは、食事を始めとした、その家庭の生活がほぼ適正であることを反映しています。

  朝食摂取が意味することは、単に栄養素の補給だけでなく、その家庭が親子ともども適正な生活リズムで暮らしていることを表しています。そのような家庭に育つ

  子供たちが精神的にも安定していることは当然考えられます。一方、清涼飲料とスナック菓子が日常的な食事の代わりになっている家庭なら、子供の成長を真面目に

  考えているとはとうてい思えません。親の責任を放棄した家庭なのかもしれません。それで貧弱な食生活となっているのであれば、それは食事内容、すなわち栄養素摂取の

  適・不適が問題というより、家庭環境の問題が子供の心を不安定にしているということになります。