お腹の不調を治す新常識

 おわりに

  [今日はお腹の調子がすぐれないから、低FODMAP食にしておくわ」こんな会話が昼下がりにのおしゃれなレストランで交わされる。[もうすぐ受験だから、緊張

  しても下痢しないように、低FODMAP食にしておこうね」こんな思いやりの言葉が、親子の普段の語らいになる。このような姿が日常になってはじめて、日本から

  腹痛や下痢、ガスなどで悩む患者さんが減り、不安のない明るい日本の姿になると私は夢見てきました。本来、人間のお腹の状態、つまり腸内細菌の種類は

  個人差が大きいものです。従って、万人に通用するような食事法はありません。貴方には自分の腸にあった「オーダーメイド」の食事法があるのです。それが

  低FODMAP食です。「発酵食品や水溶性食物繊維が腸にいい」とTVや雑誌で報じられると、翌日にはその食がスーパーから姿を消し、皆がそれに飛びつく・・・。

  日本でよく見かける光景です。しかし、試験管を振って化学物質を分析したり、マウスを相手に研究しているだけの研究者ならまだしも、実際に生きて話すことがで

  きる人間の患者さんを相手にしている臨床の医師が「一般的に腸に良いと言われている食事をしているのに調子が悪い」と訴える患者さんの声に真摯に耳を傾け

  てきたでしょうか。このような患者さんは近くに沢山いたはずです。尊敬する医の巨人、ウイリアム・オスラー葉、「患者の言うことに耳を傾けろ、彼らが診断を教え

  てくれる」と医学生を(さと)しました。我々医師は、こういったセンスを持ち、常識に当てはまらない患者さんを目の前にした時、その小さな声を聞き逃さずしっか

  り傾聴し、臨床上の疑問として取りあげ、それを研究につなげていくことが本来の医師の姿だと自戒を込めて思います。未来の医学の教科書の中身は、目の前の

  患者さんの声の中にあるのです。私達医師は、悩んでいる多くの同胞達に、「一般的に腸にいい」と世間で言われているものが実際には過敏性腸症候群をはじめ

  とするお腹の調子が悪い人にとっては不調につながることを、もっと知らせなくてはなりません。この本がPHP研究所から出版されることを医師として誇りに思いま

  す。又、企業の皆様には、セリアック病患者の多いアメリカにおいてグルテンフリー食の市場が9億7300万弗(2014年)であるように、日本においてもお腹の調子

  が悪い人向けの低FODMAP商品の開発をお願いしたと思います。高FODMAP食を扱う食品業界の方には、全ての人が皆様の扱う食品を食べられないわけでは

  なく、「本当に食べて健康になる人にだけ届くことが一番食を生かすこと」であるとご理解いただけると思いまし、商品開発や品種改良の際の1つの目標になると思

  います。海外ではグルテンンフリー・カフェと同じように、低FODMAP・カフェもあります。共同して共にお腹の不調を持った人に優しい社会ずくりを目指して生きたい

  ものです。毎日、仕事や子育て、はたまた親の介護など、忙しくストレスの多いきつい生活でお腹の調子を崩していらっしゃる皆さんに、まずは食事を変えましょう

  そんな中でも、毎日数分でも自分の一人の時間をつくり、自分のお腹の声に耳を傾ける「傾腸」を行ってみてください。そうやって時間をかけ、あなた自身の腸の

  声を聴くことが、自分を見つめ直し、本当に愛することにもつながるのです。貴方はかけがえのない自らの腸に「傾腸」し、自分だけのオーダーメイドの食事法、

  低FODMAP食に是非トライしてみてください。