気力を奪う「体の痛み」がスーッと消える

  ○「怒り」は痛みの一種と考えよ

  怒りは、ちょっとしたイライラから、頭に血が上って怒鳴りまくる激怒まで、幅があり、同じ出来事でもどう感じるかによって反応が異なってくる感情です。

  私達の体は怒りを感じると、自律神経の交感神経が刺激されてストレス反応が引き起こされます。すると、血圧が上昇。心臓がパクパクとし、顔が

  赤くほてり、毛も逆立ち、体はこわばり、歯を食いしばったりもします。では、怒りの感情は悪いのかと言うと、そうは言い切れません。何故なら、

  人が脅威を感じている時に起こる自然な反応だからです。怒りを覚えた出来事に対して反撃する。自分を守る準備の為に神経を高ぶらせる。

  言わば、野性を生き抜く為には不可欠な適応反応なのです。ところが、痛みとの関係を考えると、怒りを感じていいことは殆どありません。

  特に腰痛や肩こり、頭痛など、慢性病を抱える患者は起った時により一層痛みがひどくなるケースが多いのです。この理由ははっきりしていて、

  交感神経の緊張が筋肉を収縮させ、筋肉の緊張が高まるからです。これが強く影響する部位、具体的には腰や肩、背中に痛みを抱えている場合、

  怒りは患部を直接刺激することになり、症状を一層悪化させるわけです。怒りによって、大脳が感知する痛みの総量も多くなり、私達は強いストレス

  を受けた状態になります。つまり、怒りが痛みをひどくさせ、それがストレスを大きくさせる。日頃から痛みを抱えている人は、怒っていいことは何も

  ないのです。腰痛を抱えた50代の女性が、自宅で認知症の実母の介護を1人でやっていました。衣替えの季節がやってきて2階から冬物を

  出そうとしたが、腰が痛むので思うように運べない、しかも母親が便を失敗してしまい、カッとなった彼女は、思わず、2階から下に向かって衣服を

  放り投げてしまったのです。「もう嫌だ!」と・・・。しかし、我に返り、荒れた家の様子を見て、ショックを受けた彼女の腰は、みるみるうちに悪化して

  いきました。彼女の腰の痛みがようやく和らいできたのは、次の春で、ストレスの原因となっていた母親が、施設に入所した直後のことです。

  痛みからくるイライラ、うまくいかない介護へのいらだち、思うように動けない腰痛への怒り、こうした負の要素が重なり合い、彼女は自分を追い

  込んでしまいました。怒りとストレスは、痛みに関する負の情報を増幅させて、脳に伝えます。怒りと痛みは、嫌な記憶、辛い記憶へとつながります。

  その結果、痛みによって性格が怒りっぽくなってしまう人もいます。すると、ちょっとしたイライラや小さなストレスでも大きく感じ、簡単に怒りの引き金を

  引くことになります。怒るほど痛くなり、痛くなるほど怒りが溢れる。この負のスパイラルは全身の不調につながり、人間関係にも悪影響を与えます。

  痛みの治療には、心のケアも欠かせないのです。

  ○痛みに我慢強い人ほど、寝たきりになる

  今、50歳以上の日本人で、痛みを伴う変形性膝関節症を患っている人は820万人いると推定されています。膝の悪い人だけでもこれだけの数に

  なる中で、今後、超高齢化社会に向かう日本では、股関節、腰、肩、(ひじ)、首、頭などの痛みを訴える人がますます増えていくはずです。

  ところが、痛みの治療環境はあまり向上していません。痛みと言うのは、訴える人の個人的、社会的背景によって1人ひとり異なり、同じ病名でも

  症状に違いがあります。本来、痛みの治療には個々の事情に応じた方法が必要なのです。しかし、医者や医療機関にとって1人ひとりに合わせた

  治療を行うのは容易なことではありません。その結果、患者さんたちはしつこい痛みに悩み、効果の出ない治療に怒り、次々と新しい病院、新しい医者

  新しい治療法を求めて、探し回ることになるのです。とはいえ、痛みを一発で消し去る特効薬はなく、患者さんの期待は打ち砕かれて、新たな失望、

  落胆にさいなまれます。こんない我慢しているのに、こんなに頑張っているのに報われない。。そんなことを繰り返すたび、無気力感や絶望感が増し、

  ストレス性の痛みも大きくなる。そもそもの痛みの根っこもまた深くなっていきます。そうなった時、多くの患者は痛みを我慢するようになります。

  医者に行っても治らんのだから、耐えるしかない、と。でも痛みには波があり、痛みが軽い日もあれば、重い日もある。そこで、我慢強く、頑張り屋の人

  ほど、調子が良い日には、痛みで普段できなかったことを頑張ってやり過ぎてしまう。痛い日にはやりたくても出来ないことを埋め合わせようとつい

  無理をして詰め込み過ぎてしまうのです。しかし、普段あまり動いていない状態なのに一気に体を酷使してしまうため、無理がたたって痛みが却って

  強くなってしまいます。するとその後、痛いからと動けない日が1,2日と続き、筋力が落ちてさらに体が弱ってしまうのです。その結果、痛みを強く

  感じるたびに、活動そのものを避けるようになります。ところが、ベッドで安静にしていると、視力、聴力、味覚などが低下します。また、1日につき約8g

  の蛋白質を失い、1週間ごとに1,54gのカルシウムが失われます。仮に6ヶ月間、完全にベッド上で安静にしていると、体のカルシウムのうち40%が

  失われます。休養による活動量の低下は筋力を落とし、関節を硬くして、転倒や骨折、寝たきりの可能性を高めます。つまり、痛みを我慢する頑張り屋

  さんほど、寝たきりになるリスクが高くなると言えるのです。だからこそ、痛みをきちんと軽くして、動ける体にすることが重要です。無痛にはならなくても

  耐えられる痛みを治療の目標にするそうでなければ、どんなにやる気があっても体がついていきません。健康寿命を失う前に、少々の痛みがあっても、

  先ずは「動ける体つくり」を目指しましょう。痛みを軽くすれば、貴方の人生は変わるのです。