「リンパ呼吸」で不調は治る

  このことを踏まえて、第2の実験を行いました。g・hの2群に分けた被験者に、今度はどちらもマッサージは行わず、以下のことをしてもらいました。

  g群=仰向けになる+腹式呼吸  30分間仰向けになって、1分間に2~3回のゆっくりした


 腹式呼吸をしました。 h群=仰向けになる  30分仰向けになりました。呼吸は普通。

  そして、実験1と同じように、各項目について前後の濃度を調べました。その結果、どちらの群も、題の実験と

  同じく、総タンパク量やアルブミン濃度は低下し、血液が薄くなりました。それだけリンパの流れが良くなった

  ことを示します。しかし、寝ているだけのh群では、その他の数値で有意に下がったのはヘマトクリット値のみで、

  足の周径にも変化は見られませんでした。それに対して、仰向けになって腹式呼吸を行ったg群では

  総タンパク量とアルブミン濃度に加えて、赤血球とヘマトクリット値も下がり、膝の周径まで有意に細くなって

  いました(左図)。g群では、血漿タンパク濃度、アルブミン濃度、赤血球数、ヘマトクリット値の低下について、

  高い水準の有意差が認められました。膝の周径の変化も同様です。腹式呼吸を加えるだけで、劇的に

  リンパ液の流れがよくなり、足のマッサージをした時以上の効果(膝の周径まで細くなった)が得られたのです。

  









  ◯尿意もリンパ液の流れ方を裏付けた

  更に、g群で特徴的なのは、ADHというホルモンの濃度が下がったことです。これはパゾプレッシングという「抗利尿ホルモン」の略称です。抗利尿ホルモンとは、尿を出すのを

  抑える、つまり、尿意を少なくするホルモンです。ADHは、脳下垂体の後葉というtころで作られ、他のホルモンとは違って神経が産生して、後葉に蓄えており、体の状態に

  素早く反応します。どの様に反応するかというと血液中の浸透圧濃度(実際には塩分の濃度)が上がると、たちまちADHの分泌が増えます。血液中の塩分が増えるのは、

  体内の水分に余裕が無い証拠なので、大切な水分を節約するため、ADHが増えて濃い尿を作るのです。大量の汗をかいた時の分泌などがこれに当たります。逆に、

  血液中の塩分濃度が下がると、水分に余裕ありとみて、ADHの分泌が減り、薄い尿が作られます。ADHの濃度を比較すると、仰向けになって腹式呼吸を行ったg群では、

  ADHの分泌が明らかに大幅に減っていました。これは何を意味するのか?

  仰向けになって腹式呼吸を行うことで、リンパ液の流れが急速に良くなり、血液が薄められた結果、

  ADHの濃度が急激に低下したと考えられます。尿意を抑えるホルモンが減るわけですから、現象としては

  尿が増え、オシッコが近くなります。その関係を示したのが左図の下にあるグラフです。このグラフは、

  縦軸が「尿意を感じる程度」で、横軸は実験前のADH濃度に対する実験後のADH濃度の割合(ADHの減少率)

  を示します。これを見ると、ADHの減少率が高いほど、尿意を感じる人が多くなっています。従って、

  このような専門的な検査をしなくても、尿意の程度で、どれだけ血液が薄まったか、つまり、リンパ液の流れが

  どれだけ促されたかが分かるわけです。実際に、第1、第2の実験を通じて、被験者の皆さんは普段よりも

  多く尿意を感じていたようです。体では、何かの変化が起こると、何かの変化が起こると、多くの場合、

  自覚できる何らかの現象で知らせてくれる仕組みが働きます。

  リンパ液の流れについても、「流れが活発になるほど、尿意が頻繁に起こる」という自覚できる方法を、体はちゃんと用意してくれていたわけです。因みに、

  スポーツの中で、リンパ液が一番流れるのが水泳(平泳ぎ)です。そこで、水泳をしている多くの人に、アトランダムに排尿の具合を聞くという聞き取り調査も行いました。

  すると、(確かに、水泳をすると、直前にトイレに行っていてもまた行きたくなる)という声が多数聞かれました。中には、「水で冷えるせいでは?」という意見もあったが、

  よく聞くと温水プールでも同じ現象が起こっていたので、冷えのせいではないようです。これも、水泳でリンパ液の流れが急激に良くなった結果として、尿意が起こっている

  と考えるのが妥当です。皆さんも何らかのセルフケアを行って、リンパ液の流れが促されたかどうかを知りたい時にも、尿意の有無と程度を指標にすると良いでしょう。