病気が長引く人、回復が早い人

  ○年をとってからでも、運動で脳の海馬を増やすことができる
 
  ●認知症は発症の20年前から始まっている・・・人間の脳を解剖して研究すると、興味深いことが分かってきました。認知症で現れてくる特徴的な変化は、実は認知症の症状が出る20年前から

  すでに現れているというのです。アルツハイマー型認知症の脳神経細胞には、β・アミロイドタンパクという異常なタンパク質が溜まっています。このタンパク質は、認知症の症状が出るずっと前から

  蓄積し始めています。例えば、70才で認知症の症状が出たとすると、それは突然始まったわけではありません。50才の時、すでに脳にこのタンパク質が溜まり始め、ジワジワと知らず知らずのうちに

  脳の細胞にダメージを与えていた。つまり、気ずいた時には完全に認知症になっていた、というわけです。

  ●ウオーキング、ラジオ体操を1時間ずつ週3回行う・・・β・アミロイドタンパクの恐ろしいところは、一旦溜まり始めてしまうと、なかなか分解できない点です。欧米では、このタンパク質に対する抗体が

  薬として何度も試されたが、副作用が多くて製造禁止になっています。ところが最近になって、β・アミロイドタンパクが運動で分解されることが分かってきました。運動をするとネプリライシンという

  酵素が働き、この悪いタンパク質を分解してくれます。運動といっても激しいものではなく、週3回程度の有酸素運動でこの分解酵素が働くのです。有酸素運動とは、ウオーキングやエアロビクス、

  ラジオ体操など、楽に呼吸しながら継続的に行う運動のことです。この運動は、科学的根拠のある認知症対策だと言えます。他にも、運動が脳の容量を増大させることが分かっています。

  2006年の研究報告では、運動習慣のなかった高齢者(60~79才)の男女を、運動するグループとしないグループに分けて半年後に脳を観察したところ、前者のほうが脳のボリュームが増えた

  ということです。この時に行われた運動も有酸素運動です。1時間の有酸素運動を週3回しているだけで、半年後の脳に大きな違いが生まれます。増大したのは、記憶の中枢である脳の中の

  海馬という部分の体積です。一昔前は、脳神経は成人してから増えることはないと考えられていました。ところが海馬は工夫によって高齢になっても変化するのです。有酸素運動は薬より安全で

  確実な科学的根拠を持ちます。あきらめず、面倒がらずに今日から是非取り組んで下さい。


  ○ボケない脳」を作るために、日記をつけよう

  ●22才の言語能力が80才の認知機能を決める・・・「ナン・スタデイ」(修道女研究)という研究があります。これは1986年米国の大学で75~106才までの678人の修道女の脳を研究したものです。

  この研究の特徴は「均質な生活、食事をしている修道女」を対象にしている点です。修道女の生活は規則正しく、起床時間や食事内容も決められています。研究の際に条件を整えるのが簡単なので、

  比較・解析しやすいのです。また、修道院では、個人情報に記録も残されているため、その人の来歴、病気の内容を検証することができます。どのような人がアルツハイマー型認知症になりやすいのか

  を研究しました。修道女の生活を追跡するだけでなく、亡くなった時には同意を得た上で脳の解剖も行ったのです。この件によって分かったことは「若い頃の言語能力が、その後アルツハイマー型

  認知症になるかどうかを予言している」という結果でした。若い頃、(平均22才)に書いた文章の意味密度(語彙(ごい)の豊かさ、文章中にどのくらいの数の意味が含まれているのかを密度として出す」と、

  老年期(平均80才)の認知機能の間には深い関係がありました。密度が高く、複雑な構文を使っていた人ほど、認知症のなりずらかったのです。若い頃に言語能力を鍛えていれば、アルツハイマー型

  認知症にを予防できる。若いうちに脳のシナプスを鍛えるのが大事だということです。特に計算能力より、本をよく読んで、言語能力を鍛えることが重要なのです。

  ●例え認知症になっても1/3は症状が出ない・・・この研究には他にも興味深いところがあり何人かの修道女の脳を解剖したところ、すでにひどいアルツハイマー型認知症になっており、症状が出て

  いてもおかしくないような病理変化が見られたのです。ところが、生前の彼女達にそのような症状は全く見られませんでした。1番高度に萎縮していた女性の脳を解剖すると、アルツハイマー型の

  変化が進んでいました。しかし、彼女は83才でこの世を去るまで、認知機能検査でも正常だったのです。彼女は修士号を取得し、教員をしていました。脳病理学的には、高度なアルツハイマー型

  認知症になっているにもかかわらず、実際には症状は出ないというケースは、1/3に及びます。尾のような人達を「脳に強い抵抗力があり、症状が表に出るより先に寿命を迎えた人」、つまり

  逃げ切った人達と呼んでいます。「抵抗力」これこそがレジリエンス」なのです。若い時の勉強は、年をとっても脳に保護的に働き、抵抗力をつけてくれるのです。勉強や教育の重要性、規則正しい

  生活の大切さが分かる事例と言えるでしょう。

  ●ネットの細切れ文章より、1冊の本を通して読む・・・年をとってからでも、勉強すると、認知症になりにくくなるというデータもあります。日々勉強することを軽く見ず、新しい知識を学ぶようにしましょう。

  修道女の脳の研究を経て、ボケない脳のためには本を読むこと、言語の力をつけることが「脳の抵抗力」をつけることになる。細切れの文章を読むより、1冊の本を読むこと。日記やブログなど、

  できるだけ語彙の豊富な文章を書くことでボケにくくなります。