老化か病気の見極め方

  ○食事中によくむせる→老化:誤嚥を予防しましょう

  これは病気ではなく老化に伴う現象でしょう。加齢とともに嚥下機能も変化するのです。但し、高齢者ではこうした身近な変化がもとで誤嚥を招き、重篤な

  肺炎にかかることがあります。誤嚥を予防する方法の1つとして、顔を軽く下に向け、顎を引いて飲み込むことはやってみる価値があります。慣れるまでは

  奇異に感じるかもしれないが、これを習慣化できるとかなりリスクは小さくできます。飲食物が食道に運ばれる際に、喉頭蓋がスムーズに閉じやすくなる

  からです。又、食べ物は皿の上であらかじめ小さく切っておく。口に入れたらよく噛むなどの地道な工夫も危険を回避することにつながります。更に、今は

  まだ大丈夫でも、将来誤嚥をしてしまう可能性を考えて、今のうちから口腔ケアをしっかりして、歯周病があれば治療を受けておくことです。誤嚥で歯周病

  菌が肺に侵入すると、肺炎を引き起こすこともあります。少しでも口腔内の悪玉細菌を減らす為には、舌ブラシも定期的に使って、舌苔(ぜったい)を掃除し清潔な

  状態に保ちましょう。特に糖尿病を持っている方は口腔ケアが血糖値の安定にも大きく役立ちますから、念入りに取り組んでください。ここまでの説明が

  指しているのが医学的にいうと顕性誤嚥。むせていることを本人が自覚している状態です。これ以上に問題なのは、全くむせることなく、物がすとんと気道

  に落ちてしまう不顕性誤嚥です。その場合は肺炎を起こす可能性大です。実は肺炎で入院する高齢者に非常に多く見られます。老化が進み、嚥下反射

  機能も衰えてくると、むせることさえ影を潜めるから、誤嚥したことに本人は気ずかないのでしょう。唾液(に含まれる口腔内の常在菌)の誤嚥さえ高齢者の

  肺炎につながることはしばしばです。むせているうちは、まだまだ希望がある、ということかもしれません。

  ○顔や首、脚がむくみやすい→病気:朝からむくむのは病気の疑いがあります

  顔や首と脚のむくみには別の原因が考えられます。夕方にかけて脚がむくみやすくなる場合は、あまり心配ないが、朝からむくんでいたら心配です。

  夕方は1日かけて立ったり、座ったりした後です。リンパや血液、体液などはどうしても重力に引かれて、下半身に滞留しやすくなっています。更に運動不足

  だったり、筋量の少ない人はこれらを上へ押し返す力が少ないので、どうしてもむくみやすくなるのです。というのも、動脈血は心臓が力強く押し出して

  くれるが、脚を流れる静脈血を心臓に戻すのは主に脚の筋肉の動きだからです。但し、栄養状態が悪く、血中の蛋白質の濃度が低いと、ただそれだけで

  むくみやすくなります。病名を挙げるとしたらネフローゼという腎臓疾患があります。これは腎臓内で血液をろ過し、尿を作る糸球体に異常が起こり、本来

  ならば排出しないはずの蛋白質を尿中に流出してしまう病気です。血清アルブミン(血中の蛋白質の約半分はこれです)が3.0g/dℓ以下になると、原因が

  何であれむくみます。ここまで血液内の蛋白質の濃度が低くなると、濃度が高い周囲の組織へと水は染み出るからです。低栄養状態にある高齢者の中に
  
  は、ぎりぎりの3.0gしか計測できない方は結構います。こういう方は今はむくみやすいが、将来的にサルコぺニアや寝たきりになるリスクが非常に高いのです。

  サルコぺニアは全身の筋量、筋力が低下していく加齢性症候群です。顔がむくみやすかったら、肺癌や胸部の悪性腫瘍が隠れているかもしれません。

  それがリンパや静脈血の循環に影響している可能性があります。実際に、こうした訴えがもとで肺癌の見つかったケースはあります。血液が低蛋白質状態

  でむくむ場合には、間違いなく脚もむくむから、違いは自覚できるはずです。上半身だけの場合は、何かが静脈に影響していると思っていいでしょう。

  ○貧血気味なのか、立ちくらみが増えた→老化:血液検査を受けましょう

  下瞼を広げて、結膜が白っぽかったら貧血があるかもしれません。かかりつけ医に血液を検査してもらえば、治療すべき疾患としての貧血なのかどうかは

  判明します。鉄欠乏性貧血であれば、内服薬を処方してもらうことになるし、そこまでではない貧血”気味”ならば、主に食生活の改善が求められます。

  高齢者の中に顔色が真っ白の方をたまに見かけます。血液が薄くてこういう顔色になっているとは限りませんから、疑わしい場合はやはり検査がお勧めです。

  加齢によって造血組織が変化してくるのは確かです。但し、その変化は非常に緩やかに進み、治療が必要になるほどのものではありません。ヘモグロビン

  の量は加齢のためだけでも血液1dℓ当たり11gぐらいまで下がるが、治療が必要になる10g以下まで下がってしまうことは希です。逆に、そこまで下がって

  いたら、その原因を突き止めなければなりません。但し、ゆっくり鉄欠乏性貧血の進んだ若い女性の中には、5~6gといったとんでもない低い値でもピン

  ピンしている人もいるから、要注意です。加齢とともに増加する血液疾患は実際にあります。50代以降に増えてくる骨髄異形成症候群(MDS)は前白血病

  状態とも呼ばれるように、予後の非常に良くない病気です。また、消化器系の癌が発症していて、無自覚のまま出血を続けていることから貧血に陥って

  いるケースもあります。或いは全身で癌が進行していても、消耗の現れの1つとして貧血を生じることはあるし、腎臓が悪くても貧血(腎性貧血)になります。

  血液検査の結果、数値に異常がなければ、これらの疾患の可能性は一挙に全て否定されるから、先ずは受診してみることです。