生命と健康を守る免疫力

  

  ✲病気と闘う免疫の仕組み:

  ✦生れながらにある「自然治癒力」が病気を治す→病気は医師が治すものではなく病院や医師は私達の自然治癒力の手助けをしているにすぎません。この自然治癒力の原動力は

  免疫という、私達の体に生れながらに備えられている生体防御機構(免疫システム)です。私達は、ウイルス、細菌、真菌、原虫、寄生虫などの微生物に取り囲まれて暮らしている。

  人は毎日1万個もの微生物を吸い込んでいるといいます。にもかかわらず、平気で生きていられるのはひとえに免疫のお陰といっても過言ではありません。

  ✦人間には細菌やウイルスの侵入を防ぐバリアがある→体内に侵入しようとする微生物には大きい順に ✴回虫などの「寄生虫」 ✴マラリア原虫や赤痢アメーバなどの「原虫」 

  ✴白癬菌(水虫)などの「真菌」 ✴結核菌やブドウ球菌などの「細菌」 ✴インフルエンザやポリオなどの「ウイルス」があります。細菌とウイルスに対する防御に絞って説明すると

  細菌(バクテリア)やウイルスは、極く微細で、人間の体内に侵入して増殖しようとします。それには、皮膚、呼吸器、消化管、目のいずれかを突破しなければなりません。

  ✧皮膚ー皮膚にはケラチンからなる角質層があり、微生物はケラチンを消化できないため通過できません。また、皮膚の1番外側の表皮ケラチナサイトが分泌するソライアシン

  というタンパク質は大腸菌を殺します。さらに、皮脂腺や汗には乳酸、リゾチームなど消毒作用のある物質が含まれています。

  ✧呼吸器ー気道の粘膜層は粘液に覆われており、空気中から侵入してきた微生物は粘液によって捕えられ、繊毛運動によって口腔咽頭部へと押し出されます。

  ✧消化管ー水や食物と一緒にやってくる微生物に対しては、✨唾液にはウイルス感染を防ぐムコ多糖が含まれている ✨胃液は強力な酸で殆どの微生物を殺傷する ✨腸では

  抗菌性フェノール化合物や腸内に常駐している腸内細菌が侵入を阻止する…などして侵入を防いでいます。

  ✧目ー涙には細菌を洗い流す作用があります。また、涙に含まれるリゾチームは目の表面を感染から守っています。しかし、残念ながらこれらのバリアは完壁ではありません。

  例えば皮膚の場合、切り傷やすり傷、火傷によってバリアがなくなったり、蚊やダニなどの虫を介して侵入を許してしまうことがあります。

  ✦体内をパトロールして異物を排除する「自然免疫」→これらのバリアを突破して細菌やウイルスが侵入してきた時が免疫の出番です。免疫システムを担っているのは白血球です。

  白血球には、マクロファージ、樹状細胞、顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)、リンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞)など、様々な種類があり、それぞれが役割を持っています。

  マクロファージと好中球は「貪食細胞」と呼ばれ、常に体内をパトロールして、侵入してきた細菌やウイルスなどの異物を捕まえ、細胞内に取り込んで、殺菌性ペプチド、消化酵素、

  活性酸素を使って、異物を破壊します。貪食細胞はとくに細菌や真菌に対して有効で、原虫にはそれほど効果はなく、寄生虫を食べるには小さすぎます。ウイルスに対しては

  NK細胞が殺傷します。NK(ナチュラル・キラー)細胞はその名の通り、怪しい敵を見つけると無差別に攻撃します。ウイルスに感染した細胞や体内で発生した癌細胞を除去する

  重要な細胞です。NK細胞は異物の細胞にとりつき、パーフォリンという分子で標的の細胞膜に穴をあけ、そこからグランザイムというタンパク質分解酵素を送り込み、細胞を破壊する。

  貪食細胞やNK細胞による異物に対する一次的な防御を「自然免疫」といいます。この特徴は多くの病原体に対応でき、毎日体内を巡回して不審者がいれば、即座に攻撃します。

  ✦専用のミサイルで異物を攻撃する「獲得免疫」→自然免疫のお陰で、細菌やウイルス等の異物が侵入してきても多くの場合、病気にならないか、なっても軽い症状で済んでしまう。

  しかし、赤痢菌、肺炎球菌、ボツリヌス菌、破傷風菌、サルモネラ菌、結核菌などは、自然免疫をものともせず、体内で増殖し全身に広がって重い症状を引き起こすことがあります。

  そんな時は、4〜7日かけて、抗体(免疫グロブリン)を作って異物を攻撃します。さらにその異物を記憶しておき、2,3度目に侵入してきた時にはより早く排除できるようにします。

  このようにある特定の病原体に感染して始めて作られる免疫を「獲得免疫」と言い、獲得免疫では、白血球のうち、マクロファージ、樹状細胞、T細胞、B細胞等の細胞が活躍します。

  とりわけリンパ球の中のT細胞とB細胞は重要な役割を果たします。そのメカニズムは、強敵が侵入してくると、まず、マクロファージ、樹状細胞、B細胞が異物を取り込み消化して、

  貪食した異物の構成成分(抗原)を細胞膜の表面に提示します。つまり、T細胞に捕まえた異物の種類を報告するわけです。それを受けたT細胞はただちに増殖・分化して、攻撃の

  司令塔である「ヘルパーT細胞」、攻撃実戦部隊の「キラーT細胞」、ブレーキ役の「サプレッサーT細胞」などが心臓のそばにある胸腺で作られます。司令塔のヘルパーT細胞には、

  敵がウイルスの時にキラーT細胞を呼び出す「Th1」、敵が細菌の時にB細胞を呼び出す「Th2」の2つのタイプがあり、前者は、マクロファージを活性化させ、異物の殺傷能力を持つ

  キラーT細胞を誘導します。こうしてマクロファージが活性化すると、ウイルスに感染した細胞を貪食する能力が増強されます。さらに、キラーT細胞はNK細胞と同じようにウイルス感染

  細胞や体内にある癌細胞などを見極めて攻撃し、殺傷することが出来ます。NK細胞が怪しい細胞を無差別に攻撃するのに対して、キラーT細胞は目標を定めて攻撃を加えます。

  一方の後者は、B細胞の働きを助けます。B細胞は抗原に結合して、抗体産生細胞となって、異物だけを狙い撃ちできる抗体を作ります。何千何万と作られた抗体は異物にとりついて

  マクロファージが細菌を貪食する作用を増強するとともに、細菌を攻撃する「補体」と呼ばれるタンパク質を活性化させて、一挙に異物を排除します。1週間でピークとなる。

  そして、2度目に同じ異物が侵入してきた時には、1度目と比較にならないほど迅速かつ強力な攻撃で異物を排除します。麻疹や水疱瘡に2度かからないのはこの為です。

  サプレッサー細胞は敵をすべて倒した時に、攻撃終了の合図を出します。獲得免疫のすごいところは臨機応変に立ちまわれる機動力です。免疫システムが戦わねばならないのは

  細菌やウイルスの種類は数千万〜一億とも言われます。それら病原体の1つひとつを的確に記憶し、効果的に迎え撃って病原体から私達の体を守っているのです。

  自然免疫と獲得免疫は、「免疫系のホルモン」と呼ばれるサイトカインという生理活性物質で互いに連携しながら、異物の攻撃・排除に24時間絶え間なく、あたっています。