病気の9割は薬なしで治る

  ◎内部と裏側から見た医療

先端医療はごく1部の人のもの サプリメントは数年で効かなくなる
ミスを100%防ぐのは不可能である 白い巨頭はかって存在していた
医学界にもスピリチュアルブームが忍び寄る?

  ●先端医療はごく1部の人のもの

  「先端医療」という言葉が、よく聞かれるようになりました。癌や脳梗塞など、様々な分野で新しく開発され、最近実践されるようになった治療法のことです。

  治療が難しい病気を抱えている患者やご家族にとっては、先端医療は「希望の光」或いは「頼みの綱」と思えるでしょう。先端医療は素晴らしいと言いたいが、

  その多くはあまりうまくいっているとは言えません。例えば、今話題になっている先端医療の1つに、t-PAという薬を使う脳梗塞の血栓溶解療法があります。

  脳梗塞は脳に血栓ができ、それが血管に詰まることで脳の機能が失われる病気です。この血栓を溶かす有効な方法がなかなか見つからなかったのですが、

  t-PAによってそれが可能になりました。実を言えば、t-PA自体は新薬ではありません。開発されたのは25年も前で、当時は画期的な血栓溶解剤として医療の

  業界で話題になったものです。欧米では20年ほど前から、心筋梗塞の特効薬として盛んに用いられています。ところが日本では全く用いられていません。

  日本の場合、心筋梗塞の患者には病院でPTCA(経皮的冠動脈形成術)を受けます。血管の中に風船を入れ、それを膨らませて血管を広げる方法です。

  日本の医者は器用なので、t-PAという薬を使わなくても、心筋梗塞治療ができてしまいます。その為、わが国では、脳梗塞の特効薬として脚光を浴びるまで、

  この薬は殆ど使われず、その存在さえあまり知られていませんでした。このため日本では、今頃になってt-PAが「夢の新薬」扱いされ、脚光を浴びているわけです。

  「脳にできた血栓を溶かすのはいいけれど、脳の血管が切れた時、逆に血が止まらなくなるという危険はないのだろうか?」という疑問が湧いてきます。専門家も

  その危険を考えて、t-PAを脳梗塞の治療に使おうという研究は長年行っていなかったのです。しかし、今では研究も進み、脳梗塞を起こしてから3時間以内なら、

  t-PAを使った治療をしても脳内の出血は起きない、と分かってきました。またt-PAには即効性があり、発症から3時間以内に注射で投与すると、血流が再開し

  麻痺が回復します。こうした効果が全ての患者に見られれば、「血栓溶解療法は素晴らしい先端治療である」と断言できるのだが、実際は効果のない患者もいます。

  脳梗塞の治療に関して、先端医療に従事する医者より、病後のリハビリを一生懸命してくれる医者の方が大事だと思います。ところが、医療機関もメディアも

  血栓溶解療法の成功例だけを強調し、先端医療に対する幻想を広げているのです。メディアでとり上げている先端治療には、100例に1例、或いは1万人に1例ぐらい

  しか成功しないものや、それを実施している医療機関はまだほんの1部だけというものもあります。先端医療を紹介している番組や記事を見たら良くチェックしてください。

  「この治療はまだ実験段階で、一般の治療は行われていません」という文句が番組の最後か或いは雑誌の片隅に見られます。先端医療の恩恵を受けられる人は

  まだまだ少ないのです。実験に莫大な費用を費やしながら結局は一般的な実施には至らず、消えていく先端医療もあります。いつか奇跡的な治療法が見つかる筈だ

  と夢を持つことは必要ですが、情報に振り回され、後でがっかりしないようによく調べた方がいいと思います。 

  ●ミスを100%防ぐのは不可能である

  医療過誤のニュースが、しばしば流れています。その為、「最近の医者は昔に比べてミスが多くなった」と感じている方もいるのではないでしょうか。しかし、実際の医療

  ミスの件数は、昔より今の方がずっと減っています。手術に必要な器具や麻酔技術、それと肝心な医者の腕前も、今の方がずっと進歩しているのです。薬の管理や

  チェック体制もかってより慎重に行われるようになり、投薬ミスも減っていると思います。それなら何故今の方が医療過誤の報告が多いのかと言えば、内部告発が行われ

  るようになったからです。昔は、例えば手術中に多少のミスが生じても、現場にいたスタッフは決してそれを外部に漏らしませんでした。真剣に取り組んでいるいる中で

  起きた失敗なら仲間内でかばい合う、という暗黙の掟があったと言えます。それが、今は変わってきたのです。他の業界でも内部告発が目立つようになったところを見ると、

  これも時代の流れなのでしょう。もちろん患者の利益を守る為に、ミスを起こしたら過ちを正直に述べ、誠意をもって償わなければなりません。医療従事者には、正義感

  も求められています。但し、最近の医療ミス告発者が全て正義感からミスを明らかにしているわけではないのです。医療過誤のニュースには、2~3年前に起きたものも

  かなり含まれています。この裏側を探ってみると、自分の立場や待遇に不満を抱いた時、かって目撃したミスをマスコミに話した、などというケースもあるのです。例えば、

  自分も加わった手術でミスを犯した医者との折り合いが悪くなり、病院をクビになった腹いせに告発する、ということも少なくありません。「最近のスタッフは怖い、何か

  不満があると、小さなミスを大げさに吹聴したり、悪い噂を流されかねない。だから本人の意思ではないのに病院を辞めたり移ったりしていく人の送別会は盛大にやるんだ。

  花束も一杯上げて、気持ち良く送り出してあげないと、後で何を言われるか分らないからね」という医者もいました。病院での人間関係も、一般企業と何ら変わりないのです。

  ミスは、なくすのが理想ですが、人間が行うことでなので、完全はあり得ません。どんなに細心の注意を払っていても、ミスが起きることもあるのです。患者に被害を及ぼ

  さない小さなミスは日常茶飯事と、言っても決してオーバーではありません。最近医療機関では、事故を起こさない為のシステム造りや、万が一起きた時のカバー体制

  強化に力を入れていますが、医者や医療スタッフは全知全能ではないということを、頭に入れておいてください。ところで、大病院の内部には、その病院で働く医者達の

  腕前を知り尽くしている人物がいます。それは病理学、法医学の医者です。患者が病院で亡くなると、場合によって病理解剖が行われます。それを担当するのが病理学

  や法医学の医者ですが、解剖の際、外部には知らされなかった手術ミスや投薬ミスを発見してしまうこともあるのです。ある外科医が「うちの病理の先生、院内ですれ

  違うとニヤッと笑うんですよ。別にミスを犯した覚えはないのだけど、⦅俺はお前の弱みを握ってるぞ⦆と言われているようで、その先生に会うたびにヒヤッとします」と

  言っています。しかし、こういう怖い存在が院内にいるのは、悪いことではなく、優秀な病理学、法医学の先生がニラミを利かしている病院では、医者達も気も引き締まる

  ので、重大なミスは起こらないかもしれません。


                                                     

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