食の安全 裏側の話

  ✲バナナ

  世界中で日本だけが気にする自給率って?

  食料の自給率ということが政治的に良く問題になります。今日、日本の食料自給率は40%くらい、と言われているが、私達の食べる物の半分以上が

  輸入されてきたものかというと、そうでもないのです。自給率には「重量べース」「金額べース」「カロリーべース」という3つの計算方法があります。

  このうち、重量ベースは品目別に使われるが、重さの違う食品を全て含めた総合的な計算には向かないので、食糧全般の自給率を言う時には、

  金額ベースかカロリーベースのどちらかになります。金額ベースは国内の食糧消費金額で食糧生産金額を割ったもので、だいたい70%位になります。

  輸入飼料など、国内で食糧生産の原料になるものは、その輸入金額を生産金額から引いています。40%位といわれるのは、カロリベースのほうです。

  これは金額ではなく、カロリーとして計算します。1番大きな違いは、畜産物などの二次生産される食糧を計算に入れず、一次生産物である飼料を

  計算に入れることです。つまり、その食糧の持っているカロリーが何処から来たかを問題にします。 一般には40%の数字が良く使われていますが、

  これはカロリーベースの計算が優れているというよりも、低い数字を出したいという要求によるのではないかと思います。政治的な目標については、

  利害が対立することが多いのですが、自給率については、政府をはじめ、生産者側、消費者側を含め、あらゆるところが自給率が低過ぎるので上げなければ

  いけないという意見です。こういう意見の時には低い数字を持ち出す方が説得力があるので。こうした食料自給率の数字は、実は世界的には殆ど使われて

  いません。よく諸外国の数字と比較したグラフなどがあるが、これらは日本の農水省が各種統計から計算したものなのだそうです。  

  食料自給率が向上するのは良いのか悪いのか、輸入が増加して自給率が下がるのが悪いのか、無理に向上させるのも何の意味があるのか?

  日本が世界中から食料を買うことは喜ばれることではあっても、非難されることではない。国際的には評価されるべきものであるのでは?

  通常のプランテーションのバナナと違い、山に自生している野生種は小さいが甘味がある。バナナは木ではなく草で、葉を押しておくとどんどん大きくなって、

  半年くらいで実を付けます。日本に輸入されてきたバナナはまだ青い、未熟なものです。黄色くなったバナナは輸入が禁止されています。これは

  軟らかくなった果皮に害虫の卵が付いてくる為だということです。未熟なバナナでも、検疫を受け、害虫の卵が発見されると、燻蒸という処理を受けます。

  2/3くらいはその処理をするので、箱に無農薬を書いていたが、今はなくなり、今でもあれば、信用できないものです。未熟なバナナは繊維が固く、

  食べれません。熟してくるとこの繊維が軟らかくなり、また糖分もできてきて甘くなるのです。こうした「追熟」の必要な果物は他にもあります。

  ほおっておいてもいずれ黄色くなるが、タイミングよく熟させて出荷する必要があるので、追熟させます。このとき、エチレンを使います。

  エチレンは殆どの植物に老化や追熟をもたらす植物ホルモンです。リンゴはたくさんエチレンを出すので。冷蔵庫にリンゴと他の野菜や果物を一緒に入れる

  のはよくありません。昔は青いバナナとリンゴを一緒にして、米びつで追熟させたものです。フィリッピンの僻地の山で自生していたバナナが私達の

  家に届くのですが、原価はバナナそのものが最も安く梱包、輸送で高くなります。

  ✲

  無添加ハムも最近では多くのメーカーが作るようになり、手に入れることはそれほど難しくなくなりました。しかし、実際に店頭に置いている店はまだまだ少なく、

  生協等の共同購入を通じての販売か、学校給食などでの消費が多いようです。1970年代から、地域生協が大きく伸びてきた時代に、「無添加ハム」も

  登場してきました。その頃は非常に珍しく、本当に生協などに加入しないと買えないものでした。ハム類はヨーロッパの伝統的な食肉加工品ですが、

  食品工場で作られるようになってからは添加物がいろいろ使われるようになりました。色に関係するものには発色剤や着色料、味に関しては燻液くんえきや化学調味料、

  その他、結着剤や保存料等が主なものです。無添加ハムはこれらを全部使わないで作ったのですがから、当時としては画期的なものでした。

  味も大変美味しくて、価格的に少し高いのですが草創期の生協などを支えた主力商品でした。この無添加ハムの原料の豚肉は国産品ではなくカナダ産の 

  物が航空便で冷蔵されてきたものでした。当時は国産品のイメージが良くなかったのです。日本の経済の成長につれ、安かろう悪かろうだった日本の工業製品が

  次第に世界の一流品として認められていきました。農業の分野ではそういったことと無縁だったのですが、円高の進行につれ、安い外国産の農産物が輸入

  されるようになってきました。それに対抗して全農等が国産品愛用のキャンペ−ンをはじめ、なんだか国産農産物も世界の一流品のようなイメージが

  国民の間に定着する錯覚に陥りました。特に畜産の分野では後進国です。今では改善されてきたが無添加ハムが登場した当時は食肉加工のスタートである

  屠畜場の設備は非常に劣悪なものでした。処理された肉は皮や内臓をとって、背骨のところで左右に分割した「枝肉」という形で出荷されます。

  今では冷蔵車で運ぶが、当時は平荷台のトラックに載せて運んでいたのです。衛生面の意識が遅れていたのです。こうした環境の為、鮮度面から見ると、

  解体してからまだ日が経っていない国産の豚肉より、冷蔵で輸入してきた豚肉の方が優れていたのです。

  ハム類の製造には「結着剤」というものを使用します。これは主に重合リン酸塩で、肉の保水性を高め、食味をよくするとともに歩留まりを上げる効果があります。

  無添加ハムでは結着剤を使用しないので、肉の保水性が良くないと美味しいハムにならない為、品質の良い豚肉が必要でした。それが輸入肉で解決しました。 

  ハム類の歩留まりは普通100%を超えます。歩留まりとは原料からどれくらいの製品ができるかという率で、結着剤を使用し、保水性を高めることで製品の

  重量を増やしています。具体的には豚肉に注入された調味液の分、重量が増えるわけです。製品の重量を原料肉の重量で割った値が歩留まりですが、

  これが100%以上になるということは、原料肉より製品の方が重量が重くなるということです。この重量の「水増し」は、ハムのコストを大きく左右する要素です。

  しかし、無添加ハムでは結着剤を使用しない為、どうしても100%を下回ります。普通のハムと無添加ハムのとの価格差はこれが1番の原因になります。   

  原料肉の品質が良くないと、もっとひどくなって、殆どハムにならないといってよいのです。現在でも、無添加ハムの店頭での販売は苦戦しています。

  その原因は色の悪さです。塩漬けにした時に発色剤を使うと、肉の色素(ミオグロビン)と亜硝酸が結合して、きれいに発色します。この色は加工後も

  変色しないので、大変都合が良いのです。生肉を扱っていると、肉の色は色々と悩みの多いものです。枝肉やそれを部位ごとに分割したブロック肉では、 

  ミオグロビンはまだ殆ど酸素と結合せず、黒っぽい色だが、スライスして空気に触れるとミオグロビンは酸素と結合して赤く発色します。ミオグロビンは

  血液中の酸素を運ぶヘモグロビンの親戚ですので、同じような挙動をするわけです。ミオグロビンは徐々に酸素を離して黒っぽく変色していきます。

  変色は腐敗とは別の過程ですので、変色した肉が食べられないわけではないが、商品としてはもう駄目です。この変色を防ぐ添加物も使われていました。

  現在では酸素や二酸化炭素をパックに封入して、パック肉の変色を防ぐという方法が多くとられています。この方法は変色には有効ですが、腐敗を遅らせる

  わけではないので、衛生管理の向上と併せて対策をとらないと「変色していなが腐敗が進行している」という最悪の状態を招いてしまいます。

  亜硝酸塩をハムの発色に使用する方法は歴史が古く、かっては塩漬けの際に硝石を使っていたそうです。亜硝酸塩は食品添加物の中では毒性の強いものです。

  食品添加物などに使われる物質の毒性を計る指標として、LD50とかADIとか言うものがあります。LD50は半数致死量で、マウスなどに食べさせると

  その半分が死んでしまう量を体重1kg当たりに換算して求めます。これは急性毒性の指標になります。亜硝酸ナトリウムの場合、ラットで85mg/kg、マウスで220mg/kg

  という値になります。ADIは最大1日許容摂取量で、慢性毒性の指標です。毎日これくらいの量なら、一生食べ続けても安全という量です。

  この量は動物実験で求められた最大無作用量(一生食べ続けても安全という量)を安全係数として100倍した量です。亜硝酸ナトリウムの場合、

  0〜0.06mg/kgとされている。これは一般的な食品添加物より少ないので、亜硝酸塩は使用を控えたい添加物の代表的なものと言えます。

  実際の食品添加物の摂取量はADIを超えて摂取されているようなものはなく、食品添加物の安全性の根拠になっていました。ところが最近摂取する亜硝酸の量が

  ADIを超えているというのです。ハムからの亜硝酸塩はほとんど問題にならないほど微量ですが、野菜から大量に硝酸イオンを摂っているのです。

  肥料のやり過ぎによる窒素過多が原因のようですが、野菜に自然に含まれるので手の打ちようがなく、困ったことです。だから野菜を食べるのを控えるわけには

  いきません。その後製造技術の進歩で、無添加ハムも国産豚肉で作るようになったが、品質的にはまだ輸入品には劣るようです。国産豚肉で無添加で作るのは

  難問のようで出荷先は主に学校給食用です。一般にはあまり売れていないのです。店頭では見た目と価格の両面で苦戦しているのが現状です。