食の安全 裏側の話

  ✲米

  ✣日本の米が高いわけ

  93年は冷夏で米の不作で大騒ぎしました。10年後の2003年も冷夏で不作だったのですが、それほど問題にならずに済みました。この違いは何なのか?

  日本では米が供給過剰になって久しく、減反政策がとられていることは知られるところです。

  10年前に必要量に足りなかった生産量でも、10年後には必要量が減ってしまっていて、  

  問題にならなかったということです。また、93年の緊急輸入を皮切りに、毎年かなりの量が

  輸入されるようになっていることも、米不足が起こらなかった原因と思われます。

  しかし、本当の原因は、米の出荷元である農協などが米を出荷しなかった為に起こった騒ぎ

  だったのです。収穫量が激減することが分かったとたん、殆どの農協が通常の米出荷を

  ストップしています。先高を見込んでの売り惜しみをしたのです。但し、政治力の強い

  酒造業界だけには通常通りの量の米が入荷していたのです。ところが、一般市民の食べる

  米は極端な不足を来してしまいました。政府は米の出荷を強制するのではなく、緊急輸入の

  米を市場に流すことで乗り切ろうとしたのです。これはタイ米(サラサラの食味)で評判が悪く、

  困った流通業者は「抱き合わせ販売」に走りました。

  この年米の生産農家も、農協も、濡れ手で粟の大儲けをしました。

  しかし、その結末は、国民の米離れが加速しています。まさに自業自得です。また、輸入米も知らないうちにその勢力を確立してしまい、

  目先の利益を追った結果は国内の市場での国産米シェアの落ち込みという結果を招いたのです。

  味噌などの醸造業界も、当時原料米の入手に困っていて、びくびくしながら輸入米を仕込んだところ、これが意外にも大成功で、品評会の上位を外国産米

  から仕込んだ味噌が独占したのです。それ以来、味噌等の原料はほぼ輸入米に変わっています。2003年も不作でしたが前回のような売り惜しみは

  発生しなかったようです。日本の米が高いのは、農家が機械の購入・維持にお金がかかるのが重荷になっており、これは消費者に人気のあるコシヒカリなど

  特定の品種に集中することから、収穫時期が重なり、年に1度しか使わないコンバインも1軒に1台保有することになってしまいます。

  農場の整備が進み、1ヘクタール(100m2)という大きな田んぼが殆どで、10アール(10m2)当たり10表収穫があったとして1へクタールで100表、1表15,000円で

  売れると150万円です。面積は広大だけれど農地としてはこれだけではやっていけないのです。1軒で4ヘクタール作付して、粗収入600万円になるが、

  ここから肥料や農薬、機械類などの経費を負担しなけらばなりません。兼業で繋いでいるのです。専業であれば10ヘクタール以上の農地を持っているか、

  米以外の換金作物または畜産などを手掛ける必要があるのです。日本は農村問題を米の生産者価格の高値維持と公共事業で防いできた。その結果、

  現在では殆どが兼業農家となり、大都市とそれほど変わらない生活水準を維持しています。しかし、この為に日本の農業は国際競争力を失ってしまいました。

  シンガポールは農地というものがなく、農産物は全て隣国からの輸入に頼っています。日本の食料自給率が40%というのはそれと比べるとまだ良いのですが

  果たしてこのままでよいのかどうかは問題です。日本の米作りは減反などせず、目1杯作れば年間1300万t位収穫できるそうです。実際にはその半分で

  足りてしまうので、残りは他の作物に振り替えられそうなものですが、現実にはそのようにはならず、半強制的な減反政策によってかろうじて需給を調整

  しています。通常の農産物の場合、供給過剰は価格の暴落に直結します。その為生産者の方がで生産を調整し、需給を調整するのが正常な市場のあり方

  ですが、日本では米の正常な市場がまだ形成されていないこと、兼業農家には生産を自主的に調整する当事者責任能力がないことがこういう異常な

  事態の原因です。米を特別扱いにするのは日本の伝統的なものですが、この先、どういう展開をしていくのか、日本の農政も悩み深いところです。

  

    ✲かん

  ミカンの美味しさは、まず糖度、その次に酸度が問題になります。糖度は以前は12〜13度もあれば上等でしたが、今のミカンはもっと高い濃度になっています。

  酸っぱいミカンは、今では敬遠されるようになってきました。しかし、全く酸がないと、ぼけた味になるのであまい美味しくありません。また、酸の低いミカンは  

  すぐに腐ってくるので、貯蔵には向きません。糖度、酸度ともに高いと、収穫後すぐに出荷するのではなく、いったん貯蔵して出荷するのです。

  これは酸が多いので腐りにくいこと、貯蔵中に酸が抜けてちょうどよい美味しさになること、という理由です。ミカンを美味しくする肥料というと、「ニシン」です。

  北海道から運ばれてくるニシンカスは江戸時代からずっと、最上の肥料として尊ばれていたそうです。最近は手に入りませんので使われておらず、代替えとして

  イワシは駄目なのだそうです。果樹は大量に肥料を消費します。有機肥料を使っていると自慢する農家があるが、そういう人は信用できません。

  何故なら、専門の農家で有機肥料なしで果樹を作っている人なんかいません。さも自分だけがやっているという言い方でしたら、あまり信用しない方がよいでしょう。

  農薬では、1番使っているのは「マシン油」でただの鉱物油です。油虫に効果があるということでよく使われている。他に古典的な農薬に「ボルドー液」や

  「石灰硫黄」などがあります。近代的な有機農業が登場するまでこうした無機農薬が現在でも使われている。他にダニや貝殻虫などに殺虫剤も使っていた。

  ミカンの樹は南方系で、台湾当りまでいくと巨木になるのだそうです。そいうところでは美味しいミカンはできません。北限に近い所で美味しいミカンがとれる、

  ようです。手入れもせず放置しておいたミカンの樹が、枯れる寸前にとても美味しい実をつけることがある。ミカンの樹が痛んできた時に、美味しい実がとれる 

  ということなのです。状態の良い時に自分自身を成長させる「栄養成長」と、状態の良くない時に子孫を残すことにエネルギーを集中させる「生殖成長」の

  バランスが難しいのです。いっときのことなら樹を痛めて「生殖成長」に偏らせることは簡単だが、それでは長続きしません。肥料を入れ過ぎても味がぼける

  ということもあり、これは逆に「栄養成長」に偏ってしまうのです。他の雑柑類、ハッサク、夏ミカン、伊予柑なども普通は年末位に収穫して貯蔵しておきます。

  中には収穫せずに樹になったまま年を越し、春まで置いておくことがあります。春になるともう1度甘味がのるので、最高に美味しくなります。しかし、これは

  樹にとって負担が大きいので、1部で趣味的に行われているだけです。レモンは、冬に温度が下がると駄目になるので、難しい柑橘です。