ミネラルと生活習慣病
                       ミネラルと生活習慣病

                                                                    亜鉛

  亜鉛は人の成長・発育に重要な役割を有している必須元素であることが証明されています。現在では、生体内の50種類以上の

  酵素に亜鉛が含まれていることが分かっています。これらの酵素は亜鉛を除去すると活性が低下し、亜鉛を添加すると活性が 

  取り戻されるので、こうした酵素反応に関与した代謝に亜鉛が関与していることは確かです。

                                                         *主な亜鉛酵素と亜鉛結合蛋白質

  分子量 作用
メタロチオネイン 10,000 重金属補足、解毒
アルコール脱水素酵素 80,000

アルコールをアルデヒドはケトンに変換

アルカリフォスファターゼ 300,000 リン酸化合物の加水分解
炭酸脱水素酵素 300,000 炭酸代謝
DNAポリメラーゼ 150,000 DNA合成
RNAポリメラーゼ 370,000 RNA合成

Cu、Znスーパーオキシドジスムターゼ

32,000 抗酸化作用

細胞外スーパーオキシドジスムターゼ

135,000 抗酸化作用

 メタロチオネインは含流アミノ酸であるシステインを多量に含む低分子の蛋白質で、システインのSH基に金属を結合してその毒性を

  弱める作用があります。毒性の強い重金属が体内に入るとメタロチオネエインが合成され、その重金属を補足します。

  必須元素である亜鉛によっても誘導されることが知られており、亜鉛の運搬体としての役割も持っていると考えられます。

 アルコールをアルデヒドに変換させるアルコール代謝系の最初の反応を触媒する酵素、アルコールデヒドロゲナーゼは亜鉛含有酵素です。

  肝臓中亜鉛濃度とアルコールデヒドロゲナーゼ活性の間には明らかな相関があります。

 亜鉛はDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼを通じて核酸の合成に関与しています。亜鉛欠乏による小人症や亜鉛欠乏の母親が

  奇形児を出産する頻度が高くなることなどに、この酵素が関係していると思われます。更に、酵素活性とは関係なく遺伝情報に

  関与する蛋白質の殆どが亜鉛を含んでおり、遺伝との密接な関係が明らかにされています。

 脂質過酸化などを起す過酸化物質を消去する酵素、スーパーオキシドジスムターゼは多種類あることが解明されているが、この中に、

  いくつかの亜鉛を含む酵素があります。この作用により、亜鉛は組織の過酸化を防御し種々な生活習慣病の予防に関与しています。

 膵臓ホルモンのインスリンは、亜鉛を含むと考えられていたが、純粋のインスリンには亜鉛は含まれておらず、補因子として膵臓β細胞で

  インスリンの合成、貯蔵に関与し、糖尿病の予防にも関わっていると思われます。

                                                             *亜鉛の必要量(mg/日)

年齢 男性 女性
推定平均必要量 推奨量 上限量 推定平均必要量 推奨量 上限量
1〜2 4 4   3 4  
3〜5 5 6   5 6  
6〜7 5 6   5 6  
8〜9 6 7   5 6  
10〜11 6 8   6 7  
12〜14 7 9   6 7  
15〜17 8 10   6 7  
18〜29 8 9 30 6 7 30
30〜49 8 9 30 6 7 30
50〜69 8 9 30 6 7 30
70以上 7 8 30 6 7 30
妊婦(付加量)         +3  
授乳婦(付加量)         +3  

                      Cu、Znスーパーオキシドジスムターゼは銅と亜鉛の両者を必要とする酵素ですが、ともに適量のバランスがあり、

        あまりにも亜鉛が多すぎるとバランスが崩れ、銅欠乏になり活性が低下するのです。

  亜鉛欠乏症

  亜鉛の腸管からの吸収が失われている腸管肢端皮膚炎症という先天的な疾患があります。この患者は皮膚障害、毛髪の脱落、

  免疫障害などの症状を起こします。皮膚障害は眼の周囲、手足等にかさぶたをもった皮膚炎が発生します。通常下痢を伴い、

  発育不良、栄養不良になります。免疫力が低下する為、感染症に罹患しやすくなり、一般に短命です。

  この腸管肢端皮膚炎症と類似した症状を有する亜鉛欠乏症が、亜鉛を添加されていない輸液を長期間、続けていた患者に発生する

  ことが報告され続けました。典型的な症状を示したあるクローン病の例では患者は径静脈栄養を施行して3週間でまず、鼻の周囲に

  かさぶたを有する皮膚炎が発生し、5週間で顔面全体に広がり、陰嚢、手足にも発生しました。皮膚炎は最初は水泡状ですが、

  次第に凝結し腐食してきます。6週間くらいから頭髪が抜け落ちて、ついに完全に禿頭になりました。血清亜鉛濃度は非常に

  低値を示し、そこで、経口的に亜鉛を1日220mg毎日2週間与えることにより皮膚障害は治癒し、遅れて毛髪も元に戻りました。

  免疫に関与するナチュラルキラー細胞の活性も低下します。このような輸液性亜鉛欠乏の原因は、まず第一に輸液中の亜鉛濃度が

  低い為(0.4mg/日)と患者は外傷、手術などのストレス状態で亜鉛の尿中排泄量が増加し、亜鉛欠乏状態であったということです。

  最近は、輸液中に亜鉛をはじめ微量元素が添加されるようになったため、この種の亜鉛欠乏の発生は稀になっています。

  全国小児科を対象にアンケート調査によると、皮膚炎、体重増加不良、貧血、脱毛などの症状を有する亜鉛欠乏の小児が多数

  発見され、そのうちの大部分が1才未満でした。幼児が下痢を起こしやすいこと、未熟児では亜鉛が胎児に十分蓄積されないうちに、

  出産することが原因とされています。

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