もっと知りたい! 食事と疾患の関係

                                                                                  糖尿病の食事

  糖尿病の食事療法の歴史的変遷

  紀元前1550年には、糖尿病患者に対して特定の食品を使用し、ある食品は禁止することが行われていた。その後、食事療法において

  炭水化物の質と量の問題、脂肪摂取量の問題などがその時代の学問的背景により論じられてきた。18世紀末には、糖質の制限食を

  主張し、食事の内容を動物性食品のみに頼り尿糖を陰性化しようとする方向は、このあと一層強まっている。その後、飢餓日を

  設けたりして、特に糖質を減らす指導を行うと共に、運動療法も取り入れられた。これが長い間の食事療法のスタンダードになっていく。

  1921年にインスリンが発見され、糖尿病は体内のインスリン作用不足により起ることが解明された。インスリン療法が行われ、

  摂取エネルギー量は増加したが、厳しく糖質摂取制限が行われた。1950年代には、2型糖尿病患者に経口血糖降下薬が使用できる

  ようになり、炭水化物の摂取量の増加が行われた。1986年には、糖尿病患者は非糖尿病患者と比べ動脈硬化の促進が認められたので

  脂肪摂取量の制限と炭水化物を摂取エネルギー量の60%まで増やすことが勧められた(米国)。

  1994年、米糖尿病学会で、糖尿病患者の食事療法では、炭水化物と脂肪の占める割合は固定せず、個々の患者で変動しうるものであり、

  飽和脂肪酸を摂取エネルギー量の10%以内に制限すべきであるとしている。

                                      糖尿病の食事療法の各成分の割合の変遷

年代 炭水化物(%) たんぱく質(%) 脂肪(%)
1921年以前 飢餓療法
1921年 20 10 79
1950年 40 20 40
1971年 45 20 35
1986年 60まで 12〜20 < 30
1994年 12〜20 *、**

                    *:適当な割合を決める     **:飽和脂肪酸は10%以下

  現在、日本ではおおよそ糖質 60%、たんぱく質 16〜20%、脂質 20〜25%が適正な栄養素配分とされている。(この配分比は正常人と同じ)

  科学的根拠に基ずく糖尿病治療ガイドライン→指示エネルギー量の50〜60%を炭水化物で、脂肪は総エネルギーの25%以内とする

  ことが勧められている。食事療法に関する明確なエビデンスはさほど多くない。

  糖尿病の食品交換表について

  日本では糖尿病患者は1955年頃から増加してきた為、これに応じて糖尿病治療の基本である食事療法の患者指導が行われ始めた。

  1965年糖尿病治療の為の食品交換表の初版が完成した。それから改訂を重ね、初版以来続いたたんぱく質摂取不足への配慮を止め、

  かわりに糖尿病に合併しやすい血管障害、とくに心筋梗塞を中心とする動脈硬化症の発生防止に役立つ方針を立て1993年

  改訂第5版をを発行し、2000年に「5訂 日本食品標準成分表」が出版された。これを受けて「糖尿病食事療法の為の食品交換表:が作られた。

  この表では@適正な1日摂取エネルギー量A3大栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂質)の適正配分Bビタミン、ミネラルの適正補給

  を挙げ、この3原則を満たす食事献立作成を”表”と”単位”で組み立てている。1単位を80kcalと定義され、各食品が表1〜6と

  調味料に分類されている。

  科学的根拠に基ずく糖尿病治療ガイドライン

  摂取エネルギー量ー血糖値、血圧、血清脂質のコントロール、体重の推移、年齢、性別、合併症の有無、エネルギー消費、

   従来の食事摂取量を考慮したうえで、標準体重に身体活動量の指数を乗じて算出する。

   摂取エネルギー量=標準体重 X 身体活動量

   標準体重(kg)={身長(m)}2 X 22

    身体活動量(kcal/kg 標準体重)=25〜30 軽労作   30〜35普通の労作(デスクワークや主婦など)   35〜重い労作(力仕事が多い) 

   肥満者や高齢者は範囲の中で少ない方を取るとされている。

  炭水化物ー指示エネルギー量の50〜60%を炭水化物で摂取することがすすめられている。炭水化物の種類や形態よりも、トータルの

          量のほうが血糖値におよぼす影響が強いとされている。果糖(果物)は肝臓でブドウ糖に転換し血糖値を上昇させるので

          1日1単位とされている。

  たんぱく質ー標準体重1kg当り1.0〜1.2gを指示することが多いとされている。

           近年増加中の糖尿病性腎炎になった場合、たんぱく質制限が必要になる。

  脂肪ー脂肪の摂取量は総エネルギー量の25%以内にするように勧告されている。また飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸は、それぞれ

        摂取エネルギー量の10%以内に収めるようにいわれている。

  食塩ー多くても10g/日以内、高血圧や尿蛋白が1g/日以上の腎症を合併した場合、7g/日未満に制限することが述べられている。

  糖尿病食は長寿食とも言われように、特別な食事というわけではなく、健康人にとっても最適な食事と考えられる。

  従って、糖尿病の食事療法を学び実践することは、一般の方にとっても意義のあることである。