高齢者の食事で留意すべきポイント

   イ) 行事食:日本には季節や時期によって様々な行事や風習がある。行事や風習に合わせて食する旬の食材は栄養的にも

           優れており、健康管理において理にかなった食べ物である。

   ロ) 生活習慣病予防の食事:加齢による生活習慣病は多くの利用者が対象になる。肥満、高血圧、心臓病、骨粗しょう症など、

           1人の利用者は複数の疾病を持っている。食欲を低下させない範囲での対応が必要である。

   ハ) 食形態の対応:高齢者の食事摂取能力は、咀嚼力の低下、嚥下能力、舌の運動能力の低下など、個人差が大きい、

           ベッドサイドにおいて、訓練食などを利用することでよく観察し、食形態を決定する必要がある。

           特に、水分摂取量には注意が必要である。

   ニ) 食品と薬の相互作用:高齢者は様々な薬を服用すると、薬によってある食品と一緒に服用すると薬の効果が高まったり、

           弱まったりすることがあるので薬剤の確認は必要である。

           鉄剤ー牛乳で吸収が低下

           消化性潰瘍治療剤、健胃消化剤ー大量の牛乳の服用により、高カルシウム血症の可能性がある。

           抗凝固剤ー納豆に含まれるビタミンKが薬の効果を弱らせる(その他、ブロッコリー、ほうれん草など)。

           カルシウム拮抗剤ーグレープフルーツに含まれるフラノクマリン類が、消化器官や肝臓の糖たんぱく質や

            薬物代謝酵素の働きを減弱させるために、薬の吸収量が増えて薬が効き過ぎ、血圧が下がり過ぎる。 

                                                   

         食事介助

   ☆ 高齢者を感染から守ることは、最も大切なことです。高齢者は細菌の侵入を防ぐ皮膚が弾力を失い乾燥しやすく、また

     損傷もしやすい為、細菌に侵されやすくなっています。 さらに、免疫力も低下しており、咳嗽がいそう反射が悪く、呼吸器

     感染症にかかりやすくなっています。その他にも寝たきりによる褥瘡じょくそう、嚥下障害などによる栄養不良、膀胱留置や

     カテーテルなどの挿入により、感染症の危険にさらされる危険が多くなっています。食事の時の感染の知識と予防の理解が重要です、

   ☆ 口腔ケアは、歯磨きやうがいなど口の中の清潔維持が目的ですが、なかでも、

     @ 口腔疾患及び呼吸器感染の予防を目的としたケア

     A 口腔機能の維持、回復を目的としたケア

     B 健康の維持・回復や介護負担の軽減を目的としたケア  の3点が重要です。

    口腔内は常に37℃前後に保たれ、微生物の増殖には最適環境であり、口腔ケアを怠ると虫歯や歯周病などの疾患

    ばかりでなく、誤嚥性肺炎、不顕性誤嚥などによる肺炎を引き起こす危険があるため、口腔ケアは重要なケアとなります。

         栄養ケアの今後

    栄養ケア・、マネジメントは、利用者の低栄養状態の予防・改善を重要な課題として位置ずけています。その取り組みは、単に

    栄養指導の改善を目的とすることではなく、低栄養状態の予防、改善を通じて、利用者の生活機能の維持、改善や尊厳ある

    自己実現に寄与することでありQOL(生活の質)の向上を目的とするものです。

    利用者の低栄養状態の改善にあたっては、生きる意欲や楽しみにつながる「口から食べること」を優先的な課題として取り組むことが

    重要です。経腸栄養を行う場合でも、経口摂取への移行の可能性について多職種協働の食介護チームにより、適切に評価を

    行い移行計画を作成し「口から食べること」を支援することが必要となるでしょう。栄養補助食品の活用の検討もせねばなりません。

    栄養ケア・マネジメントの運用に当っては、食事の提供を含めて「食介護アセスメント」を行い具体的な栄養ケアに関する計画を

    策定し、利用者に説明した上で、医師の指導にもとずいて行うことになります。もちろん施設および在宅サービス間の継続的

    なサービスとして提供しなければなりません。

    栄養ケア・マネジメントの体制については、多職種協働により、栄養改善、身体状況及び生活機能の維持・改善の観点から

    評価し、継続的な業務の品質改善に向けて行う必要があります。   

                                                                                                       

 
     
 食介護の現場   

  2005年の介護保険制度改正により施設入所者等に対して個別の栄養ケアサービスを提供する「栄養ケア・マネジメント」が導入、翌年4月から、摂食・嚥下困難な

  施設入居者の”口から食べる”ことの管理に対して「経口維持加算」が創設されるなど、高齢者へのケアも単に栄養充足という考えから、口から食べることをとおして、

  本人の思いや生き方を支援することに重点が置かれるようになり栄養士の役割がますます大きくなり現場の声を聞いた。

  ✨1人一人の個人差が非常に大きいので、同じ食事を提供しても、太る人もいれば瘠せてくる人もいる。その方に合った食とは何か?その見極めが大切で難しい。

  ✨基礎代謝量が人によってかなり違うので、ハリスーべネディクトの計算式どおりに食事を提供すればよいと言えないこともある。しかも、心身の状態は日々違います。 

   その違いも考慮しながら食を微調整していく必要があります。

  ✅1人一人の摂食機能に関する残存能力を正しく評価し、機能低下を補うとともに、残された能力をうまく引き出して、いかに食べていただくかが最も苦心するところです。

   例えば、それほどエネンルギーの多い食事でないのに体重が増えている方には、主食の量を減らす、お箸が使えない方にはおにぎりに代えるとかで、ご自分の力で

   食べられるようにしたりと個々人の摂食機能に合った食事をチームケアにより提供している。

  ✅医療型療養病院ではドクター、ナース、薬剤師、ソーシャルワーカー、理学療法士、管理栄養士が一緒に回診し、病態によっては、その場で食形態の変更もある。

   あるいは厨房担当者に電話を入れ、食形態の変更を指示する。

  ✅調理側の声で、以前は食事を作れば高齢者は食べてくれると思っていたことから高齢者は一様でないことを学び、それぞれの方にいかに食べていただくかをい考えながら

   作るようになったので、細かな指示が描かれた食札を見ても驚くことがなくなった。

  ✅同じ食形態でも自力で食べる方、介助されて食べる方もおり、厨房担当者も食事巡回を行い、入所者の食事風景を見てもらい、指示を出した理由が納得できます。

  ✅全員が食べているところを写真に撮るとよくわかります。まさに百人百様、違います。ご飯を先に食べてからおかずを食べる人、ご飯の上におかずを載せて食べる人、

   刻み食は嚥下障害の人に良くないといわれるが、それを希望する高齢者もいます。お粥のうえに載せて食べるのがお好きなんです。それがその人にとって一番おいしい

   食べ方なのです。それを大切にしなければなりません。その方が施設での生活を心地よく過ごしていけるように援助するのが職員の仕事なのですから。単に栄養のことだけでなく、  

   その方の嗜好や食事スタイル、食の楽しみ(例えば食後のコーヒー)といったことも考慮しながら、その方に適した食を考えていくことがとても大事です。

  ✅施設の中でのプランターで野菜の栽培、共に収穫などで認知症の方も喜んでイキイキとしてくる。あるいは料理教室でおはぎを皆で作って食べる。嚥下障害の方もおはぎを

   食べられるのです。これは不思議で、ご自分の好きなものなら食べてしまうのです。普段はソフト食なのに、大好きなお寿司は普通に食べられたりするのです。

   いずれにしても、おいしい食事を提供すれば皆さん残さず食べてくださいます。残菜を処分するにはお金がかかるので少なくするのは経済効果も高いわけです。

   材料費、人件費、光熱費も含めて1日1人\1,380でやっていかなければいけない介護施設においては、経済的な問題は無視できません。

   冷凍食品を使えばゴミは少なくて済むが、味が落ちたり、繊維が多すぎて食べにくいといったこともありできれば生の食材を使いましょう。食は1人だけの力で出来るものでなく

   皆の「協働作業」なのです。

                                                                   

  ✲多職種と協働・連携を図りながら栄養ケアのレベルアップを!

  高齢者は、最初から最期まで1か所に留まってケアを受けるというよりも、重度になれば在宅から介護や医療の施設へ、或いは介護施設に入っても具合が悪くなれば病院の

  お世話になって回復したら再び介護施設に戻ってくる、といったように在宅と施設、施設と施設の間を行き来する方が大半です。ところが、身体は移動しても、食事に関する

  情報は少なく、その結果、それまで口から食べていた方が、他の施設に行くと食べられなくなるといったケースが多く見受けられます。環境の変化の影響もあるでしょうが、

  情報の少なさが食のレベルの低下を招いている場合が少なくないのも事実です。それでは食べる機能や生活機能を維持できないという反省から、「協働」や「連携」の必要性が

  言われ始めました。食の情報が施設間で伝わることは、利用者や患者に前施設で何をどのように食べていたのか、その情報が前もって伝わっていればスムーズに

  対応できます。現行の診療報酬では、急性期病院の平均在院日数の短縮が求められているため、食事を口から食べられるようになるまで患者さんを病院に置くのが

  難しい状況にあります。実際、療養型医療施設に急性期から送られてくる患者さんを見ていると、輸液による栄養摂取の方が非常に増えています。長期入院が可能な

  療養型では、そのような患者さんを口から食べられる状態に戻して、特別養護老人ホームや老人保健施設に引き継いでもらうようにするのですが、食の情報も一緒に

  渡すことで、そのレベルを次の施設でも維持することができます。

  ✲食に関してのこれまでの「協働」「連携」の状況は介護施設、病院、それぞれの組織内で、また各施設の団体、特養であれば全国老人福祉施設協議会という全国レベルの

  団体の中で施設間同士の交流は行われてきた。しかし、老健や医療機関などとの交流は殆どなかったのが現状です。医療に関しては、今、厚労省がクリニカルパスの整備を

  積極的に進めていて、医療情報の伝達がかなりスムーズに行われるようになっている。病院、介護施設間では、まだそのようなパスはない。が患者や利用者の情報を

  共有化する栄養サマリーを作ろうという動きは一部で出てきているが、全体には浸透していない。施設間ではないが多職種の協議・連携という意味では、2005年の介護保険制度改正

  により導入された栄養ケア・マネジメントがあります。ここでは管理栄養士、介護士、医師、看護師、相談員などが互いに専門の立場で利用者をアセスメントし、管理栄養士が

  皆の意見を集約して栄養ケア・プランを立てる作業をしてます。この多職種の協働・連携は施設間と同じくらい重要です。多職種で人がかかわるうちに元気になったりします。

  共同・連携をとる場合の問題に共通の食事内容の伝達ツールがない。例えば食形態で「やわらか食」といっても、どの程度なのか各施設で異なります。嚥下困難についても、

  どんなレベルも「嚥下困難」という一言で表現されている。それから、今後推進していかねばならないのが在宅との連携です。在宅の高齢者が栄養的な知識や技術を知り

  対応しておけばこんなに重度にならなくても済んだのではないかと思うことが多いようです。例えば、脱水症回避の方法で砂糖と塩を少し水に加えるだけで経口補水液となり

  吸収が良くなると知っていれば応急処置はご自宅でできます。70才以上の1人暮らしの高齢者には地域の高齢者の相談窓口として民生委員がアンケート調査をする。

  そういう調査の時に食についてもアドバイスしてもらうように参加を呼びかけるようです。