知りたかった食品成分の機能とエビデンス

  栄養素と食品成分(タンパク質系統)

 タウリン

グリシン

トリプトファン

アンジオテンシン変換酵素阻害ペプチド
カルニチン

BCAA

 カルノシン・   アンセリン

   CPP(カゼイン、  ホスホ、ペプチド)
クレアチン

アルギニン

MBP(乳塩基性タンパク質)

グロビン蛋白分解質

γ-アミノ酪酸(GABA)

 コラーゲンペプチド

 システイン・アセチルシステイン 糖質・炭水化物系の食品成分

                                                      

                                                                                               タウリン  

  我々の健康感は時代と共に変化してきました。とはいえ、何時の時代にも、人々は安定した健康的な生活を送ることを願っています。

  過去の最も恐れられた結核などの感染症も劇的な医薬品の開発と抵抗力ある体作りの為の栄養改善の努力が払われてきました。

  そして、昭和50年代には栄養学上のターニングポイント(世界一の長寿国となり、日本型食生活が理想の食事として世界の注目を浴びた)

  を迎え、疾病罹患率の上位を占める疾患も、感染症から、癌、高血圧症、脳卒中、心疾患や動脈硬化症などの循環器系疾患や、

  糖尿病などの内分泌疾患といった、今日「生活習慣病」といわれる疾患に変化してきました。

  これまでの体格向上を中心とした欠乏の栄養学から、栄養素摂取量や質が問題とされる過剰の栄養学、飽食の時代へと移行してきました。

  グルメブームも経験し、糖尿病罹患者や強く疑われる者が10人に1人といわれる今日を迎え、我々は過剰栄養の害を認識しました。

  しかしながら、健康不安が出発点になりましたが、その反省、すなわち運動や休養の見直しといった健康変容にはつながらず、人々の

  関心は、それを劇的に改善する「お助けフード」を探すというような安易な方向に流されています。医療・保健従事者は健康に対して

  不安を抱える一般の人々に的確な情報を提供し、正しく健康情報を理解する手助けをしなければなりません。

  食育の推進において、今、この混乱の時代こそ食品成分の機能とそのエビデンスを学ぶ絶好の機会であると思います。

           *食品=「栄養素の集合体」ではない

  これまでの栄養学では「食品摂取の意義は栄養素の補給にある」と教えられてきました。その逆「栄養素は食品から供給される」

  これも正しいわけですが、「食品=栄養素」ではないのです。食品には栄養素以外の水分や色素、その他の非栄養素など様々の

  化合物が多く含まれます。食品は化学的に見ると種々雑多な化合物の混合物に過ぎません。しかし、それらの化合物をある視点を

  持って見ると、一つの体系化された化合物群と認識されるようになります。

  ┌―――食品――――――――――――――┐  「非栄養素には生体調節機能が備わっている」という言葉が流行しました。 

    |┌―――――┐              ┌―――――┐ |  「栄養素」という認識(カテゴリー)もそうですし、「生理機能調節物資」や

  | |  栄養素    |        | 非栄養素  |  |  「生体に有害な物資」という見方もあるでしょう。「血糖値上昇抑制物資」や

  |  |         |        |         |  |  「血中コレステロール上昇抑制効果物資」といった具体的視点もあるでしょう。

  || たんぱく質 |                |         |  |  そしてそれらのカテゴリーは、場合によっては重なってくることもあるということです。

  || 炭水化物 |     《生体調節因子》    |  例えば、ある食品にはアンギオテンシン変換酵素を阻害する効果を有する

  || 脂質    |                  |                  |  |  ペプチドが含有していたとします。これはペプチドでありアミノ酸から構成されて

  || ビタミン    |        |         |  |  いるので「栄養素」でもあるといえます。しかし、ギオテンシン変換酵素の阻害効果を

  || ミネラル  |        | 有害成分 |  |  持つ為、その視点から見れば血圧降下作用をもつ「生体機能調節物資」と認識

 | └─────┘       └─────┘ |  されることになります。一方、これをもってして「非栄養素には生体調節機能が

   └―――――――――――――――――――┘  備わっている」といえなくなってしまいます。生体機能調節物資という視点では、

  栄養素も非栄養素も関係は無いというわけです。     食品の多様性・複雑系特徴

  食品に含まれるもの・・・・・「食品成分」には栄養素、非栄養素、生体調節因子、有害成分、栄養障害成分など様々な顔がある。

  カテキン(タンニン)・・・・・「鉄の吸収を阻害する成分」であると同時に、酸化ストレスを軽減する「抗酸化物質」という面もある。

  機能性ペプチド・・・・・栄養素であるアミノ酸でできていると同時に、アンギオテンシン変換酵素阻害やオピオイド作用など、生体調節機能

                を持つ成分である。

  ビタミンB12・・・・・栄養素としては造血系に参与し、メチル基転移反応系酵素などの補酵素、大量投与では覚醒リズム調節、男性

            不妊症改善などの効果がある。

  このように「食品成分」は様々な異なる視点により様々な別の「顔」を持っています。

          食品の機能性と有害性の評価

  食品成分の経口摂取の意義や摂取上の問題点を考える場合において機能性と有害性のエビデンスの認識の問題があります。

  例えば、肝機能を向上させる生体異物の排泄促進効果を持つ成分を含有する食品は飲酒者の肝機能改善や疲労時の肝機能低下防止に

  効果があります。しかしながら、薬物代謝酵素も含まれるので、医薬品を投与されている患者がこの食品を摂取した場合、投与された

  薬物の代謝が促進され十分な薬効を発揮できず、病状の悪化の危険性もあります。この場合、アルコール常飲者には健康増進に

  有効な食品と評価できますが、薬物を使用している患者にとっては有害性を持つ食品と判断できるわけです。 

  糖吸収を促進する成分を含有する飲料があったとすれば、スポーツ選手にとっては効率よくエネルギー補給ができ、疲労を改善でき、

   持久力アップにつながるもであっても、糖尿病患者にとっては、血糖コントロールを乱してしまう食品になりかねません。

   逆に糖吸収を遅らせるものであれば糖尿病患者にとっては血糖上昇抑制効果のある食品かもしれませんがエネルギー補給を優先

  させる場合には逆効果です。場合によっては糖尿病患者でもコントロールの悪い場合にはむしろ低血糖を招く危険性があるかも知れません。   

  このように食品成分の機能性や有害性を評価する場合には、一つの視点のみを持って実施することはまず出来ないということです。

  必ず摂取対象者など「受けての問題」をよく認識したうえで、個人的なアセスメントを通じて十分に状況を把握・確認し、その成分の

  有効性や有害性を多角的、多面的に評価する必要があるのです。

  ある食品成分について、不特定多数に向かって、表面的な情報やエビデンスをしっかり持たない情報のみで評価して発信することは

  極めて危険です。単純に、食品について「体に良い」「体に悪い」という断定的評価をするのは科学的にはまず不可能です。

  個人の食品の摂取効果を評価することは可能ですが、十分に信頼できるエビデンスと個人的なアセスメントを通じた多面的解析で

  もって初めて可能なことであり、その個人の状態によっては正反対の評価となる場合もあるのです。