知りたかった食品成分の機能とエビデンス

                                                  トリプトファン

  トリプトファンを含むサプリメントは「寝つきが悪い」「眠りが浅い」「不安感やイライラ感を気にされている方の症状を緩和します」などというキャッチフレーズで紹介されているが、

  食品中のトリプトファンは動物性食品から植物性食品まで多くの食品に含まれていて、含量はたんぱく質1g当たり11〜15mg前後と、他のアミノ酸に比べて比較的低い値です。

  「寝つきの悪い時にホットミルク」説は、牛乳のトリプトファン含量とは関係なく、寝る前に摂取できるタンパク質として、手軽に胃に負担をかけない食品という意味かも知れません。

 食品中のトリプトファン含量(mg)
食品名 タンパク質  (g/100g) 可食部   100g当たり タンパク質   1g当たり 食品名 タンパク質   (g/100g) 可食部    100g当たり タンパク質    1g当たり
ごま 19.8 370 19 そば(生) 9.8 120 12
カシューナッツ 19.6 360 18 豚ロース 19.7 240 12
ほうれん草 3.3 53 16 鶏もも肉 18.0 210 12
鶏卵 12.3 190 15 いわし 19.2 220 11
精白米 6.8 99 15 食パン 8.4 96 11
牛サーロイン 18.4 260 14

本マグロ     (赤身)

28.3 320 11
大豆(国産) 35.3 490 14 マダイ 19.0 210 11
牛乳 2.9 38 13 小麦(中力粉) 9.0 99 11
プロセスチーズ 22.7 290 13 イカ 15.6 120 8
カゼイン 86.2 1,100 13 キャベツ 1.4 8 6
さつま芋 1.2 15 13 ゼラチン 85.5 0 0

      ✦生体での働き

  トリプトファンは、タンパク質合成の材料となるとともに、完全分解されてエネルギーとなります。一方で生理活性の高い物質の原料になります。

  トリプトファンの体内での代謝はNAD(ニコチンアミドアデニンシヌクレオチド)の合成にかかわるキヌレニン経由と5−ヒドロキシトリプトファンを経由し、セロトニンやメラトニンを

  生成する2つの経路に大別される。セロトニンの90%以上は胃腸管粘膜で生合成されたのち、門脈血を通じて全身に運ばれます。セロトニンには強力な平衡筋収縮作用がある。

  それともう1つの働きは神経終末に存在し、神経伝達物資としての作用がある。うつ病の治療に広く用いられ、神経終末部位において放出されたセロトニンの神経終末への

  再取り込みを阻害し、神経間のセロトニン濃度を高め、抗うつ作用を示すとされる。脳の松果体ではセロトニンを合成するとともに、メラトニンを合成します。メラトニンの分泌は、

  暗い環境では増加し、明るい環境下では減少するサーカディアンリズム(概日リズム)を示すことにより、脈拍、体温、血圧を変動させ、身体機能の昼夜の調節を行っています。

  ∗トリプトファンを含む健康食品は不眠に悩む人や、時差ボケの防止を目的とする健康食品として、米国で多く利用されてきたが1989年死亡者が出て、安全性が見直されました。

  偏った摂りすぎが原因と判明されたが、睡眠障害に対する科学的データは不十分とされている。トリプトファンをサプリメントとして摂りたいと考えている人は多くの食品に

  幅広く含まれているので、通常のバランスのとれた食生活で十分に摂取できます。食事以外での摂取は生命にかかわるリスクがあるので危険です。とくに妊娠中、授乳中の母、

  腎臓疾患、肝臓疾患、白血球関連疾患の患者には、すぐに摂取を中止しましょう。また、医薬品、ハーブ、サプリメントなどとの相互作用があり、安易にサプリメントとして

  飲むのは危険です。抗うつ薬などとの併用は心臓の異常、ふるえ、発汗、不安感、眼震などの深刻な副作用をもたらす恐れがあります。向精神薬との併用は可逆性の

  運動障害やパーキンソン症候群様の硬直が起こる危険がある。向てんかん薬などの鎮痛薬との併用は相加作用が生じ、倦怠、ウトウト状態を起こす可能性がある。また

  同様の作用をもたらすと考えられるハーブ(エゾウコギ、カミツレ、セイヨウオトギリソウ、カバ)やメラトニンなどがあります。食品中の必須アミノ酸であり、生体内で重要な

  働きをもつトリプトファンですが、摂りすぎると大変危険なものとなります。食品で摂取することの重要性を再認識させてくれるアミノ酸でせす。