知りたかった食品成分の機能とエビデンス

                                                             カルノシン・アンセリン

  アミノ酸は、タンパク質を構成する成分として栄養の面から重要視されてきたが、近年になって、個々のアミノ酸がもつ生体調節機能が注目されるようになり、アミノ酸を利用

  した様々なサプリメントや健康食品が販売されています。これらの関心の高まりと歩調を合わせるように特定のアミノ酸が複数結合したペプチド類への関心が高まっています。

  これらペプチド、カルシノン・アンセリンは動物性食品に分布しており、特に筋肉組織内に多く含まれていることが特徴です。カルシノンは特に豚肉や牛肉に、アンセリンは

  鶏肉やマグロ、カツオ、鮭等の魚類の筋肉に高含量で含まれています。また、バレニンは鯨肉に特異的に含まれることが特徴です。

  ✲生体での働き

  これらのペプチドが何故筋肉内に存在し、その生理作用が十分解明されていませんが、近年の食品機能性研究の進歩により、いくつかの機能が明らかになってきました。

  これらのペプチドは、ヒスチジンまたはメチルヒスチジンというアミノ酸を構成因子として含むことが特徴で、ヒスチジンは塩基性アミノ酸の1つです。

  収縮によって産生される乳酸が蓄積されると、筋肉は疲労状態になり、それ以上収縮できなくなることが知られていますが、これらヒスチジン含有ペプチドは、乳酸によって

  筋肉内のPHが酸性に傾くのを緩衡する効果があると考えられています。またヒスチジンは、アミノ酸の中で抗酸化能をもつことが特徴で、カルノシンやアンセリンといった

  ヒスチジン含有ペプチドは、水溶性物質における抗酸化力ではアスコルビン酸やポリフェノールに及ばないものの、細胞毒性が少なく細胞質内に代謝されずに容易に

  存在できるという点において、優れた抗酸化能を示す成分と考えられます。酸素消費の高い筋肉組織においては、効果的な抗酸化能、ラジカル消去能を示し、筋肉組織の

  保護に役立っているものと考えられます。

  ✲経口摂取の効果と意義

  小腸で速やかに吸収されるカルシノンやアンセリンは、特定保健用食品としては許可例がなく健康食品として、スポーツ用サプリメントや神経機能改善、腎機能改善効果、

  痛風予防、白内障や糖尿病合併症の予防に期待できる健康食品として販売されています。これまでの摂取効果としては抗疲労効果が挙げられます。仕事量の向上や

  運動後の筋肉痛の改善などが報告されています。カルシノンは脳などの神経組織にも比較的多く含まれており、その関連から神経機能の改善効果、学習能の向上、

  腎機能改善効果などが報告されていますがこれらは動物実験の段階でエビデンス的に今後の研究が待たれます。

  最近、脳虚血からの保護効果が注目されているローズマリー抽出物に含まれるカルノシン酸は、カルノシンとは全く構造の異なるフェノール系ジテルペン化合物ですので

  注意が必要です。畜肉や魚類に多く含まれる成分なので安全と考えられるが、健康食品として摂取する場合の食事摂取基準も存在しないので過剰摂取には栄養指導上

  注意が必要です。米国では十分な科学的データはないものとしており、妊娠中や授乳中の女性の摂取に対する安全性は確立しておらず、摂取禁忌としている点に注意を

  払う必要があります。

  ✲栄養指導の際のアドバイス

  運動選手のスポーツ栄養指導や筋肉量の低下に伴う基礎代謝量の低下が原因とされる隠れ肥満の改善などには、良質なたんぱく質の摂取と適切な運動処方が重要となるので、

  これらの指導においては効果的に利用できれば有益な情報となるかもしれません。それ以外の機能については十分なエビデンスがないので過剰摂取による健康被害には

  注意を払うべき旨を伝えるべきと考えられます。