アレルギー性鼻炎は、好発時期から通年性と季節性に大別され、特に、日本ではスギ花粉症患者の増加が問題になっています。
アレルギー性鼻炎は国民の20%以上が
戦後、建築資材用としてスギの植林が盛んに行われ、20〜30年経過した1970〜80年代頃からスギ花粉の大量飛散が始まりました。
東京や大阪のような大都会でもスギ花粉の飛散がみられるのは日本特有の現象です。スギの植生が殆ど無い北海道では患者も
わずかですが、白樺花粉による花粉症が見られます。最近の高校生や大学生の感作率(スギ花粉に対してIgEというアレルギーを
誘導する抗体を産生してしまうこと。但しこの抗体を持つと全員が花粉症を発症するのではなく1/4〜1/3の方がスギ花粉症を発症
します)は70%にも達しています。外材搬入の増加などから、さすがにスギの造林はなくなったが、放置され、今後も当分の間はスギ
花粉の飛散は増加すると考えられています。一方、ヒノキ花粉はスギ花粉と構造や成分が似ていて、スギ花粉症の70%以上の方が、
ヒノキ花粉に対しても花粉症となってしまいます。ヒノキは関東以西に多く分布しており、今後はヒノキがスギを上回ります。
アレルギー性鼻炎の患者は、スギ花粉やダニといった原因物質(これを抗原、或いはアレルゲンといいます)に対して、IgE抗体という
物が作られます。人の体は細菌やウイルスなど外部からの侵入に抗原を作って防衛するが、これは、IgGやIgAといった種類が主です。
作られたigEは、鼻の粘膜にある肥満細胞というヒスタミンなどの炎症を引き起こす物質を含んでいる細胞の表面に結合し反応し
ます(抗原抗体反応)。その結果、肥満細胞の膜に変化が生じて、ヒスタミンなど炎症を引き起こす
物質が放出され、これがくしゃみの神経を刺激したり、鼻水を引き起こしたり、鼻の血管に作用して
鼻ずまりを誘導してしまいます。さらに炎症に関連した細胞が集まってきて、症状をさらに悪化させて
いくと考えられています。眼、口、喉、皮膚などの症状、さらには発熱、頭痛などの全身の症状を
引き起こすことも少なくありません。
診断は、鼻の粘膜をのぞいてみると、蒼白に腫れた独特の粘膜と、水溶性鼻汁が見られるが、この鼻汁の中にはアレルギーで
特徴的な好酸球を確認し、体内にスギ花粉やダニなどの抗原に対してIgE抗体を持っているかどうかを調べる。
さらには誘発検査(原因抗原を確認する)を行う。アレルギー性鼻炎に罹患すると、年齢とともに自然に改善する割合は10年間で
10〜30%といわれています。小児では小児ぜん息やアトピー性皮膚炎に比較して少なく、多くは自然改善もなく成人に移行しています。
予防&治療は、花粉の情報、マスクや眼鏡の使用で花粉やダニ(布団や絨毯のこまめな掃除)に接触しないこと。
治療法は免疫療法、抗ヒスタミン薬や点鼻薬の薬剤があるがアレルギー性鼻炎の治療薬には、自分の症状の内容、程度にあった
物を選択し、組み合わせる必要があります。花粉の飛散が始まる前から薬剤を投与する初期療法が広く行われるようになっている。
他に、薬の効果が悪い方は、レーザー治療や高周波電極を使用して鼻の粘膜を変性してコントロールする治療もある。
花粉症に効果があるといって様々の健康食品の多くは作用機序が科学的に検証されていないものが殆どです。
減感作療法など、その効果が科学的に評価されている治療法もある。花粉症の治療の近道は医師にしっかりと相談し、症状に合わせた
治療を受けることです。
口腔アレルギー症候群とは、食物摂取時に口腔咽頭粘膜を中心に即時型の食物アレルギーが生じる疾患である。原因食物を食べて
15分以内に刺激感、そう
花粉との交差反応性が知られている。
従来の食物アレルギーは、ある食物を摂取することで腸管より感作(アレルギー反応を起こす状態の成立)され、その後、同食物を
摂取するとアレルギー反応を示すようになる。このような食物アレルギーを「クラスT食物アレルギー」という。代表的食物として卵、
牛乳、小麦、そば、大豆などがあり、熱処理や消化酵素に対して消化管で分解されにくい食物が原因となることが多い。
これに対して、花粉やゴムラテックスなどの抗原(アレルギーの原因となるたんぱく質)を吸入するか接触することにより感作されて、
花粉症やラテックスアレルギーが生じるが、それと交差反応する食物を食べた時に、食べた食物が直接接触する口唇・口腔粘膜や
咽頭粘膜に始まるアレルギー反応が引き起こされる。このような食物アレルギーを「クラス2食物アレルギー」という。症状が口腔粘膜
に限られる食物アレルゲンはじんま麻疹や消火器症状などの全身的な症状を引き起こすものよりも、熱処理や消化酵素で分解されやすい。
口腔アレルギー症候群の原因となる食物は、原因花粉の種類により、またラテックスアレルギーの場合も異なる。花粉症の中で最も
代表的なものはシラカンバ花粉である。その合併率は40〜50%であり、原因食物としてリンゴ、桃、サクランボ、梨、イチゴ、ビワ、杏
などのバラ科食物が多い。日本では北海道や東北でしか自生しないが、関西ではオオバヤシャブシ(カバノキ科)が花粉症の原因
として知られており、オオバヤシャブシ花粉症患者の24.7%に口腔アレルギー症候群の合併が見られる。
花粉症の原因植物 |
口腔アレルギー症候群の原因食品 |
シラカンバ(ブナの木カバノキ科) | リンゴ、桃、サクランボ、洋梨、イチゴ、ビワ、杏(以上バラ科) へーゼルナッツ、ピーナッツ、ブラジルナッツ、ココナッツ、アーモンド、クルミ、にんじん、セロリ、じゃが芋、キウイフルーツ |
スギ(スギ科) | トマト |
ヨモギ(キク科) | セロリ、にんじん、ピーナッツ、キウイフルーツ |
ブタクサ(キク科) | メロン、すいか、ズッキーニ、きゅうり、バナナ |
カモガヤ、オオアワガエリ、マグサ、イネ(イネ科) | トマト、メロン、すいか、じゃが芋、オレンジ、セロリ、バナナ |
*口腔アレルギー症候群のステージ分類
ステージ1 | 口腔咽頭症状 |
ステージ2 | 口腔咽頭症状 + 鼻眼症状 |
ステージ3 | 口腔咽頭症状・鼻眼症状 + 全身性じん麻疹 + ぜん息・胃腸症状 |
ステージ4 | 口腔咽頭症状・鼻眼症状 + 全身性じん麻疹 + ぜん息・胃腸症状 + アナフィラキシー |
注:アナフィラキシー:血圧低下、めまい、意識消失
口腔アレルギー症候群では熱処理や消化酵素で分解されやすいものが多く、抗原性が低下するため、
市販のジュース、缶詰、加工品であれば症状を起こさないことも多い。
治療と注意点
花粉症に関係して生じる口腔アレルギー症候群の場合、花粉症の自然寛解が少ないため症状が消失することが少ないといわれる。
従って、基本的には原因食物を回避することが治療の中心になる。症状が軽微でも繰り返しの摂取で重篤になることもあるので要注意。
原因となる食品が知らないうちに混入して症状が誘発されて初めて分かることもある。対処療法としては抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤
の内服液を服用する。症状が重い場合はステロイド剤のエビネフリンの自己注射製剤で使用するエピペン(商品名)の携帯を勧める。
口腔アレルギー症候群は、通常新鮮な果物や野菜で出現するので加熱で調理・加工すれば摂取可能になることも多い。一方、
ナッツ類は生でも加熱されたものでも、同様の症状が引き起こされる。果物のなかには収穫後数週間経過して熟したものの方が
抗原性が高いものもある。また果物は果肉より果皮のほうが抗原性が高い。このように種類により症状に特徴があるので、個々の
食物に対応した注意が必要である。従って、口腔アレルギー症候群が疑われた場合、専門の医療機関を受診して必要な検査を
受けて、原因食物の診断をしてもらい、何が食べられ、何が食べられないかを知り、適切に対応することが大切である。