もっと知りたい! 食事と疾患の関係

                                    肥満遺伝子から見るテーラーメイド型食事指導の考え方 

  肥満に関して遺伝子の関与は25%くらいで、75%は環境因子(食生活習慣、交通手段、精神面的因子など)によるとされている。

  単一遺伝子病としての肥満は世界的にもまれで、レプチン欠損症、レプチン受容体欠損症による肥満ぐらいで、過食、高脂肪食、運動不足

  などの環境因子が加わると肥満を引き起こす。多因子病としての肥満遺伝子は数多く報告されている。これを倹約遺伝子と呼ぶ。

  現在、肥満に関する遺伝子は100種以上報告されているが、日本人には特に倹約遺伝子が欧米人の2〜4倍も高頻度に存在する。

  この遺伝子多型に安静時代謝量が低下するものと亢進するものがあり、診断を行いどの遺伝子変異の組み合わせを持つかを分析

  することで、個人の体質に合った制限を守れば必ず痩せられるテーラーメイド型食事指導も可能な時代に入った。

            ▲ 日本人肥満者のエビデンスにもとずく遺伝的特徴

  人類の大多数は飢餓との闘いであり、食料不足の状況では、摂取したエネルギーを最大限吸収し、消費エネルギーを最小限にすることが

  生存に必要だったので遺伝子が変異したと考えられているのが倹約遺伝子である。日本人に非常に多い。 

               安静時代謝量に影響を及ぼす肥満関連遺伝子多型   

遺伝子 遺伝子多型 安静時代謝量       状態
アドレナリン受容体 β3-AR(Trp64Arg) -200kcal/日 内臓肥満や糖尿病になりやすい(34%)
アドレナリン受容体 β2-AR(Arg16Gly) +300kcal/日 日本人の16%に存在し、やせやすい
UCPファミリー UCP1(A-3826G) -100kcal/日 日本人肥満女性の24%に存在する
PPARγ2 Pro12Ala +100kcal/日 6%は代謝量亢進しておりやせやすい
Pro12Pro   日本人では94%がPro12Pro型でやせにくい
FABP2 Ala54Thr -100kcal/日 日本女性に内臓脂肪肥満型になりやすい(39%)
Kir6.2 Glu23Lys +100kcal/日 日本女性 やせやすい(41%)
Angiotensinogen Met235Thr +250kcal/日 日本肥満女性 減量効果良好(80%)
RAGE Gly1704Thr -350kcal/日 日本女性やせにくい(14%)
Lymphotoxinα 252A/G -100kcal/日 日本女性 内臓脂肪肥満を呈する(29%)
SUR SUR1Exon31(AGG1273AGA) +350kcal/日 日本肥満女性10%  やせやすい

           ▲ 肥満遺伝子診断にもとずくテーラーメイド型食事指導

  女性肥満症患者の減量食は、基礎代謝量に相当する1200kcalまで下げないとやせにくい。(男性は1500kcal)

  減量目標は、肥満症の合併が糖尿病、高血圧症、高脂血症などの内科的なものであれば、今の体重の5〜10%の減量で合併症はとれる。

  この程度の減量なら3ヶ月間で達成できる。その後は減量体重の維持に重点を置く。この期間中のおやつは果物2個、甘みも人工甘味料、

  油類も極力減らす。空腹感を起こさせないため、毎食前にキャベツなどの生野菜を大量に10分間かけて噛ませ、脳で満腹感を感じさせ

  、便通改善効果とビタミンCは減量後のやつれ予防への貢献が期待できる。

  おかずは1200kcal減量食(たんぱく質70g)では1日当り牛乳2001本+卵1個+魚80g(刺身5切れ)+肉80g+豆腐1/2丁と青野菜は

  大量に。主食はご飯2/3杯(120g)を3回/日。運動は毎食後30分後より30分間の散歩をすすめる。

  しかし、安静時代謝量が低下した遺伝子多型を持つ肥満者ではこの減量食ではやせにくい。

  β3-ARを持つ肥満者では安静時代謝量が200kcal減弱しているので1000kcalの減量食を指示すべきである。

  UCP1遺伝子多型を併せ持つ場合は300kcalエネルギー消費量が低下しているので900kcal減量食を指示すべきである。

  β2-AR遺伝子多型を持つ人は300kcal亢進しているのでβ3-ARを併せもっても、お互いの効果が相殺されうまくやせられる。

 *このように、最新の遺伝子診断を用い、個人の体質に合わせたテーラーメイド型を守れば確実に痩せられる食事指導が

  可能な時代に入ってきている。