床ずれを防ぐ栄養とケア

                                        褥創じょくそう発生のメカニズム

  創(床ずれ)は持続的な圧迫により組織への血流が途絶えて、筋肉や皮下脂肪組織、更に皮膚が死んでしまうことによりできる傷をいう。 

   この傷は、圧迫が加わりやすいところ、つまり骨が他のところより飛び出ており、かつ、体の下になっている部分に

  できます。また、圧迫時間が長い人にできるため、寝たきりの人の仙骨部や背骨の部分に、あるいは下半身マヒの

   方で車椅子利用の人の座骨部や尾骨部に発生します。このとき圧迫は、骨の突き出したところと体表の間の

    すべての組織に加わりますが、圧力が一番強くかかっているのは、骨に近い体の奥のほうであり、

  体の表面の皮膚の部分の圧力は一番弱くなります。

  皮膚の色が変わってきたときには、すでに皮下脂肪のところや筋肉の部分で、もっとひどい傷害が起きています。

                      ▲ 褥創の発生を加速する要因

  持続的な圧迫が褥創発生の原因ですが、ほかに悪化を加速させる物理的と全身的要因があります。                      

  前者は「摩擦」が大きな要因で、体位変換をしたり、状態を起こして食事するとき、背部や仙骨部がズレて

  摩擦が働きます。摩擦によって皮膚が剥離はくりすると(擦過傷さっかしょう=すり傷)、そこから菌が入ることがあります。

  また一番傷害の少なかった皮膚までがやられてしまうことから、褥創が一気に悪化してしまうからです。

  後者は血圧が低かったり、動脈硬化で血流が悪かったり、糖尿病で代謝が低下していたりなどいろいろあります。

  中でも一番重要なのが栄養摂取状態です。持続的圧迫の加わった組織では傷害が繰り返し起こっていますが、

    同時に、痛んだ組織は絶えず修復も行われています。このとき栄養障害があると、組織の修復が停滞して、

  やがて修復できなくなり褥創となってしまうのです。食事をしっかり食べ、栄養状態のよい人では、

  一般的に褥創はあまりできません。できていても栄養管理をしっかり行うと速やかに褥創が治ることは、臨床の現場では常識となっています。

                                                        ▲ 褥創の予防と治療

  発生を防ぐ対策として従来は「2時間ごとの体位変換」が述べられてきたが何の効果も見られません。エアーマットレスが有効とわかりました。

  体位変換時やベッド挙上時に体がズレてゆかないよう工夫をします。「皮膚の浸軟しんなん(ふやけ)が起きると摩擦力が高くなり、

  皮膚が剥離しやすくなるため、皮膚が浸軟しないように留意することも大切です。

  淡白合成 → 圧迫によって傷ついた組織は細胞の自然死によって自己融解し、常に新しい組織に置き換わっています。

  異化作用 → 自己融解していくこと。  体の中ではこの両作用がバランスよく行われているのです。

  異化亢進状態 → 体を維持する最低限の基礎エネルギーを下回ると体の中に蓄えたエネルギー源を消費するようになります。

             肝臓中のグリコーゲンなどはすぐになくなるので、そうすると、壊れやすい筋組織や脂肪を壊してエネルギー源にします。

       この状態では淡白合成作用は著しく低下し、組織修復はストップし、やがてはっきりとした褥創になってしまうのです。

       エネルギーが十分投与されたとしても、たんぱく質が不足すると、褥創を治すための淡白合成を行うことができません。

       たんぱく質の合成にはアミノ酸が原料で、それは食事からとったたんぱく質を分解して作られます。つまりアミノ酸になる

       たんぱく質の摂取が不足すると、結果として褥創部での淡白合成が行えなくなるのです。

       ビタミンやミネラルも重要で、特にビタミンCと亜鉛が、淡白合成のときに、大量に消費されるからです。

                      ▲ 褥創予防の栄養ケア

  褥創を発生させないために除圧用具の使用に意義を唱える医療従事者はいないでしょう、が栄養の危険状態を早期に発見し、

  栄養食事療法を開始するところは未だ少数です。

                      * 栄養状態の危険度を知るために用いる養スクリーニング

質問事項
1 食事は1人で食べることが多いですか  はい いいえ
2 買い物や食事の支度は1人でできますか はい  いいえ
3 1日3回きちんと食べていますか はい  いいえ
4 この頃、食べる量が少なくなったと感じますか  はい いいえ
5 この頃、体重が減ってきたと感じますか  はい いいえ
6 野菜は毎日食べていますか はい  いいえ
7 晩酌は毎日しますか  はい いいえ
8 薬は何種類飲んでいますか  3種類以上 2種類まで
9 食べたり、飲んだりする時にむせますか  はい いいえ
10 入れ歯やかみ合わせに問題がありますか  はい いいえ

        注: 黄色の枠のチェックを1点と数えます。0〜1点「問題なし」、2〜5点は「要観察」、6点以上は「危険」とします。

    血清アルブミン値の検査も大切 → この値が3.0g/㎗以下では創の発生率が高まる、2.5g/㎗では治療がしにくい。

               * 栄養状態の危険サイン

  血液データに出る前の栄養状態の評価は喫食量で判断すべきでしょう。なお、栄養状態の悪化は、まず水分摂取量不足で始まります。

  危険状態の水分量 → 1,000㎖/日以下(食事からの水分も含む)    摂取エネルギー → 900kcal以下も危険状態

  このような状態であるかどうかの判断は、管理栄養士の患者と家族との会話で正確に計算されます。

               * 栄養危険状態での対応  

  このような危険状態では、一刻も早く、まず500㎖の維持輸液の点滴が必要です。

  そして1日の水分量と摂取エネルギーを1,000㎖および900kcal以上へ持っていきます。

    このとき、管理栄養士は食形態、補助栄養やサプリメントの是非などを総合的に考え主治医や看護婦とも意見交換して栄養食事療法を

  実施していきます。