高血圧の基本を学ぼう

    血圧を測る機会は多いもの。健康診断はもちろん、温泉や銭湯、さらに家庭用など、いろいろなところに測定器があります。

  高血圧のいろはを理解し、日頃の健康増進に役立てたいものです。

  外来血圧:外来診察時の値→収縮期血圧が140/90mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上の場合を高血圧。

  家庭血圧:起床後食事前に測定した値で135/85mmHg以上を高血圧の目安とする。

  白衣高血圧:未治療の人で、家庭血圧が正常なのに外来血圧が高血圧の範囲にある人。

     同   :治療中の患者で、同様に家庭血圧が正常範囲で外来血圧が高い人は「白衣現象をもつ高血圧」と表現する。

  仮面高血圧:外来血圧が正常なのに家庭血圧が高い人。服薬中の人でその効果が切れている状態(早朝は血圧が上がりやすい)。

                ▲現段階での必要な対応

  @未治療で外来血圧が高い人は、高血圧と診断されるが、朝の家庭血圧が低ければ「白衣高血圧」として経過観察でよい。高ければ要治療。

  A未治療で朝の家庭血圧が135/85mmHgを超えたら、医療機関の受診が必要である。  

  B治療中の患者については、朝の家庭血圧も正常範囲になる治療が望ましい。

               ▲高血圧はなぜ怖いか

  大きな合併症が出るまで、日常生活に困るような症状が殆どないことで「サイレントキラー」と呼ばれる。

  高血圧の最も怖い合併症として脳卒中が挙げられるが、運動麻痺による寝たきりや痴呆の原因になることから、高血圧対策は高齢社会の

  日本において重要な課題といえよう。      *高血圧が引き起こす重要臓器の病気

    脳 → 脳出血、脳梗塞、一過性脳虚血発作     血管 → 頚動脈壁肥厚、動脈硬化性プラーク、閉鎖性動脈疾患、大動脈解離     

    腎臓 → 微量アルブミン尿、たんぱく尿、腎障害、腎不全    心臓 → 左室肥大、狭心症、心筋梗塞、心不全

               ▲わが国の高血圧の現状

  日本全体では約4000万人   60才以上男女とも50%以上   降圧薬内服中の男女とも約20%   60才以上約40%服薬中

  高血圧患者の中での降圧薬内服の状況は40〜50%の患者が内服治療を受けていることになる。

  目標血圧まで十分に降圧できている患者の割合は半分程度とされているため、治療を受けて目標血圧値までコントロールされている

  人の割合は、全高血圧患者の20〜25%程度と考えられる。まだまだ国民レベルの喚起と対応が必要である。

                            

               ▲高血圧はなぜ起こる 

    高血圧は遺伝因子と生活習慣に代表される環境因子、それぞれ50%くらいずつ相互作用を持って発症すると考えられる。  

  生活習慣は自分の努力で改善しうるものが多く、遺伝因子は薬によって対応が試みられている部分ともいえる。

  塩分→塩分摂取量と高血圧の頻度は正の相関がある。日本人の摂取量は平均で12〜13g/日であり目標の6gを大きく上回っている。

        本体性高血圧(80〜85%)と腎臓病高血圧(15〜20%)→腎臓から水分や塩分を排泄するのに正常の人より高い血圧を要する。

  アルコール→一般に飲酒後すぐは、血管拡張作用により血圧が下がるが、長期的な作用としては血圧を上げる。

        日本酒2合/日以上飲む人は要注意 

  ストレス→仕事のストレス、人間関係のストレス、地震や火災といった災害に伴うストレスはいずれも血圧上昇に働く。

  肥満→抵抗血管となる抹消の血管床が増えること、肥満した脂肪細胞が交感神経を活性化させるホルモンを分泌すること。

        インスリン抵抗性が憎悪し、その結果生じる高インスリン血症がNa再吸収促進や交感神経活性化などに働く。

  メタボリックシンドローム→内臓肥満に象徴される脂肪組織の不適切な分化と、それが分泌するアデイポサイトカインと呼ばれる

        一連の内分泌因子の関与が考えられている。この病態では、いずれの疾患も軽症の段階で動脈硬化が進むので要注意。

  遺伝→血圧が上がりやすい体質、上がりにくい体質がある。遺伝子レベルの研究が進みテーラーメイド医療が期待されている。

                                  ▲高血圧の治療と予防のポイント

  高血圧治療の最大の目的は、長期に血圧を調整し続けて、脳卒中や心筋梗塞、腎不全といった合併症を予防することである。

  原因に立ち返った治療が必要であり、減塩と運動療法は重要である。降圧による予後の改善は確実に認められているが、生活習慣が

  不良のままだと、合併症の抑制には十分でない可能性もある。実際に降圧効果に治療抵抗性が出る。

                     *江戸時代の健康十訓 

  一、少肉多菜  二、少塩多酢  三、少糖多果  四、少食多齟  五、少衣多浴  六、少車多歩  七、少はん多眠    八、少念多笑

  九、少言多行  十、少欲多    高血圧の治療と予防のポイントをよく表している。

             ▲リスクの層別化による治療計画・薬の開始時期の判断

  高血圧の治療の目的が心血管疾患の予防であることから治療に際しては高血圧以外の危険因子についても注意が必要である。

  具体的には、糖尿病、高脂血症、肥満、喫煙、55歳以上の男性または65歳以上の女性、若年での心血管病発症の家族暦、心肥大、

  アルブミン尿などが挙げられる。脳卒中や心筋梗塞のような標的臓器傷害を合併している人はさらに注意が必要である。

  危険性があまり高くない人は降圧薬による治療をすぐに開始する必要はなく、生活習慣の修正に努めることが優先される。

  一方、血圧がそれほど高くなくても合併症を起こしてしまっている人では、すぐに降圧剤による治療が必要である。

              ▲降圧目標

  一般成人 → 130/85mmHg未満        糖尿病や腎症合併例 → 130/80mmHg未満  がひとつの基準である。

  高齢者の場合、急激に降圧することで心臓や腎臓、脳への血流が傷害される危険性が高く緩徐かんじょな降圧が求められる。

     前期高齢に分類される65〜74才 →  140〜90mmHgを目標に

  後期高齢とされる75才以上では → 150/90mmHg未満を第一目標に設定し達成後重要臓器への血流傷害がないことを確かめて、

  最終的に → 140/90mmHg未満を目指すことが勧められる。