高齢者の栄養、現状と対処法

  2009年版高齢社会白書によれば、日本の総人口の22.1%が高齢者(65才以上)となり、そのうちの10.4%を75才以上の人口が占めています。心豊かな長寿社会を目指す為に、

  これを支える大きな柱の1つに「食」があります。

高齢者の食べることの意義

  中高年期から高齢期への移行に際しては、健康状態や身体の変化に伴い、食事や栄養に対する注意を変えるべきです。しかし、実際には、中年期に受けた指導に基ずき

  生活習慣病予防や肥満予防を目的とした食事への配慮のみが続いていたり、口腔機能の低下に伴う食事量の減少に気ずかない、或いは高齢者だからそれほど食べなくて

  良いといった配慮の不足が目立っています。

  ✣低栄養予防

  低栄養状態とは、タンパク質やエネルギーが不足した状態で、高齢者の低BMIや体重の減少を通じて身体機能や免疫能の低下で介護状態の重度化を招きます。

  65才以上の高齢者の日常生活動作(食事、排泄、着替え、移動、入浴、歩行)の調査(米国)でBMIが18.5未満の者、また約4.5kg/年を超える体重減少のある者はこれらの

  項目の低下が大きい。その為、介護予防では低栄養のリスクのある者(血清アルブミン値や食事摂取量から判断)を対象に、栄養改善のプログラムを実施します。

  ✦低栄養の現状

  介護認定を受けておらず介護予防のハイリスクな特定高齢者   2〜3kgの体重減少のあった者(6ヶ月間) 15%      BMI18.5未満 8.3%   両方に該当した者 4%

  介護認定を受けた要支援者                               同上               15.7%     同上   10.8%   いずれかの該当者 31.6%

   ✦低栄養予防の対応

  高齢者へのたんぱく質とエネルギー補給の効果はいろいろの調査で2.2%の体重増加が認められ、栄養状態の悪い高齢者に栄養補給した場合、死亡率が21%低下した。

  ✧高齢者における推定エネルギー必要量は = 基礎代謝量 X 身体活動レベル

  基礎代謝基準値 = 70才以上男性 21.5kcal/kg/日   同女性 20.7kcal/kg/日

  虚弱高齢者 = 健康な高齢者の安静時代謝量 19.4kcal/kg/日   疾病を有する高齢者の同左 20.4(18.5〜22.2)kg/日     殆ど差がない

             低体重者の  同上       24.9kcal/kg/日   90才を超える高齢者の同左 23.8kcal/kg/日          高くなる。

  体重当たりの安静時代謝量は、BMIが低いほど高くなるため、低体重者においては、基礎代謝基準値に体重を乗じた値が、基礎代謝量を過小に推定している可能性があります。

  ✧身体活動レベル

  70才以上の値が大きく変更 「低い」「普通」「高い」において1.3,1.5,1.7が1.45、1.70,1.95と高くなった。健康で自立した高齢者の平均値が1.69であったことによる。

  90才代を対象とした身体活動レベル  女性1.19、男性1.36  と低い    患者、低体重者、超高齢者の同左 1.2〜1.4  と1.45より低い

  ✧たんぱく質

  高齢者の推定平均必要量 0.85g/kg/日  成人の0.72g/kg/日より高い  施設入居者では、身体活動量の低下に伴い骨格筋のたんぱく質代謝が低下し、窒素出納が負になる。

  窒素出納はエネルギー摂取量の影響を大きく受けるので、エネルギー摂取量が500kcal不足すると、タンパク質必要量を約3g増加させる必要がある。介護予防を目的とした

  場合に、身体活動量の増加、十分なエネルギー摂取ができるように食事摂取量を増加しながら、タンパク質の摂取量に配慮することが必要と思われる。

  低栄養を引き起こすファクター

  ✅慢性疾患や薬物療法によって、食欲や食べようという動機付けが減少している

  ✅食べ物の臭いや味が分からなくなり、一緒に食べる人がいないために、食べる楽しみが減っている。

  ✅痴呆性の疾患のため、あるいは買い物に行くことができない、家計が苦しいなどの理由によって、食材が調達できない。

  ✅認知や身体機能の障害、あるいは台所の環境が適切でないために、調理ができない。

  ✅認知、視覚、手先の器用さ、歯の疾患、嚥下の問題によって、食物を摂取することができない。

  ✣脱水予防

  人体は約63%の水分を含んでいますが、その多くは除脂肪部分に含まれています。高齢者においては、筋肉量や骨量の低下に伴う除脂肪量の低下が認められており、

  また、口渇感の減少や腎機能の低下などによる水分代謝への影響があります。特に高齢者の場合、食事摂取量の減少による食品からの水分摂取量の減少、失禁・

  夜間排尿への不安或いは介助者への遠慮から水分摂取量を減らしがちであり、脱水のリスクは成人より高いと考えられます。脱水は重症になると、精神的な錯乱や

  身体機能の低下、皮膚の損傷、感染症や転倒を起こしやすくなります。

  ✧脱水の現状

  水分の量が不足すると汗をかきにくくなり、熱中症を発症することがあります。2008年8月の救急搬送状況から1ヶ月間に全国で熱中症による救急搬送は8857件

  あったが、そのうち65才以上の高齢者は40%を占めていた。高齢者の人口構成割合の22%から比べると、高齢者に熱中症による搬送が多いと言えます。

  デイサービスに通所する在宅要介護高齢者を対象とした調査によると、脱水を疑われた者は18.4%で、性・年齢・要介護度別に差はなかった。

  水分摂取量の過不足を評価することは難しいものです。口渇感は、体の水分量がある程度低下してからしか起きず、日常で水分出納をとるための指標とはなりにくく、

  特に高齢者では、口渇感の低下から水分不足の指標にはなりにくいのです。スポーツ選手では、発汗時の水分補給状態の指標として、体重の変化がしばしば使われます。

  しかし、高齢者では、慢性的な水分摂取不足状態にある場合があること、低栄養による体重変化の可能性もあることから、体重を水分摂取量の過不足の評価に用いにくい

  のが現状です。尿量、尿の浸透圧、尿の比重などが体の水分状態の指標となるが、日々の評価には適していません。現在、色見本による評価が試みられている。

  水分は食物と飲み物から摂取され、どちらも把握するのが難しいもので、ある調査で、1日の飲水量(食事以外)は平均で1146.8㎖で加齢と共に減少する傾向にありました。

  食物からの摂取量は通常1000㎖と仮定されているが、高齢者ではおそらく600〜700㎖に減少していると推定されます。脱水予防には、脱水を起こす可能性のある高齢者の確認

  が必要でそのファクターとして ✅85歳以上 ✅口渇感の低下 ✅飲み物を得ることへの障害 ✅コミュニケーションの障害 ✅認知機能低下 ✅嚥下機能低下 ✅食欲低下

  ✅投薬(利尿剤、緩下剤、鎮痛剤など) ✅急性疾患(発熱、嘔吐、下痢など) ✅介護者の注意不足等が挙げられます。