臨床の現場から考えるメタボリックシンドローム(MS)

              冠動脈疾患患者を調べた結果

  内臓脂肪蓄積者(内臓脂肪面積100cm2以上) 49%

  糖尿病 46%     高脂血症 77%     高血圧症 59% であり危険因子が3つ以上の 

  多重リスク者は約4割に達する。

  心筋梗塞を発症した人の経過を見ると

  30才代:肥満 → 40才頃:脂肪肝・高血圧 → 40才代後半:脂質異常 → 50才過ぎ:高血糖・心電図異常

  → 50才後半:心筋梗塞発症  このようにリスクの重積は長い時間の間に徐々に進むので、

  いかに早期から予防するかが鍵になります。

                                                       注: A  内臓脂肪蓄積肥満者(内臓脂肪型肥満)

                                                      B 内臓脂肪蓄積非肥満者

                                                      C 内臓脂肪正常肥満者(皮下脂肪型肥満)

    評価

  MSでは、内臓脂肪蓄積が病態の根本原因ですので、内臓脂肪を軽減する事が治療の目標

  となります。

  内臓脂肪は皮下脂肪と違い、代謝が活発な組織ですから、少しの減量でもかなりの量の

  内臓脂肪を削減する事が可能です。標準体重まで減らすといった大幅な減量を無理に行う

  必要はなく、現在の体重ないしは腹囲のマイナス5%程度を目標の緩やかな減量がポイントです。

  その際、同時に生活習慣の問題点をはっきりさせることも重要です。

  上記のグラフから

  食習慣において内臓脂肪型肥満(A)では、満足するまで食べる為1回の食事に30分以上かかり、

   間食が多く、アイスクリームを好むという食習慣上の特徴を認めます。喫煙の割合も高い。

  肥満ではないが内臓脂肪が増加している場合(B)には同様の傾向が認められることから

   肥満にかかわらず、生活指導上の注意が特に必要と考えられます。

 

  MSは生活習慣と密接に関連する病態です。心血管疾患の発病にかかわる重要な病態ですが

  わずかな減量でも大きな改善効果が期待できます。

  ☆まず第一に診断基準の活用を

   この基準の策定方法は各国で異なっており、女性が男性より腹囲で上回っているのは(日本だけ)

   皮下脂肪の多さを考慮したもので、病態が正しく反映できるように配慮されています。

   過食、運動不足が続くなかで、高度の肥満ではないが内臓脂肪の蓄積により腹囲が増加し、

   軽い耐糖能異常がある、血圧がやや高めで、軽度の高脂血症がある、というように、

   普通であれば見過ごされるような、軽度のリスクの重なりをもつ人々を、心血管疾患から

   予防する為に考慮された基準なのです。

   先ずは診断基準を使ってみて、5〜10年、栄養指導や生活指導に使った結果、心血管疾患の

   羅患者が減少しているのか、予防に有効であったかを検証する事が重要です。

                                                                                      戻る

                                          

                                           ❋行動変容アプローチ

  人が健康に良い行動をとるには、”ご利益”が“不都合”を上回らないと、実行や継続は困難であり、この理屈を理解したサポートが大切である。

  脂肪細胞は、エネルギーの貯蔵庫として、生き物の生存に欠かせない細胞です。先進国では肥満が伝染病の如く蔓延しています。

  日本でも食事に占める脂肪摂取割合が増えるに従い、また車や冷蔵庫の普及に伴い、肥満が増加したといわれています。わが国の成人男性の30%はBMI25を超える

  肥満の状況にあります。この30年の変化で男性の肥満割合は、15%から30%へと着実に増加しています。太鼓腹の中年男性に糖尿病、高血圧、脂質代謝異常が重なって

  発生することは気ずかれていたのだが、1980年後半あたりから内臓脂肪が増えすぎた人にこれらが起こることが明らかにされました。

  内臓脂肪はどこの部位の細胞なのか?小腸から吸収された栄養素は、門脈という血管を通って肝臓へ流れ込みます。小腸と肝臓の間には、腸間膜という膜があり、

  内臓脂肪はこの腸間膜に張り付いている脂肪組織です。

    メタボリックという言葉は「代謝の」という意味です。シンドロームは「症候群」。これはいろいろな症状が同時に発生する状態を示します。代謝異常症候群と訳します。

  代謝は酸素とブドウ糖からエネルギーを作り出したり、タンパク質を合成したり、分解したりと生物が生きているという証です。このエネルギーの出し入れが異常である、

  つまり、エネルギーの過剰摂取(食べ過ぎ)または利用不活発(運動不足)で発生する様々な兆候(血糖異常、血圧異常、脂質代謝異常)が一辺に発生するので

  症候群というのです。出し入れの異常ということはバランスのとれた食事と、動くことで根本的に解決するわけです。INを抑えてOUTを増やすだけでメタボは撃退されます。 

  メタボの方は、腹腔という閉じられた空間に、脂肪組織がびっしり埋め尽くされている状態にあり、この肥大化内臓脂肪細胞で“酸化ストレス””低酸素状態””慢性炎症”の

  状態となる。そうするとそこから悪玉のアデイポサイトカインと呼ばれる生理活性物資や遊離脂肪酸が全身に放出されています。動脈硬化を進めるTNF-αとかIL-6などが

  炎症状態の内臓脂肪組織から分泌されます。内臓脂肪を減量すると、悪玉物質の分泌は停止、代わって善玉物質アデイポネクチンが復活してくるのです。

                            

  メタボ・サポートというお仕事は、お互いを高め合い、楽しくなければ仕事ではない!との信念で、しかし、楽しい仕事は人から与えられるものではなく、種をまいて、世話をして、

  やっとこさ花が咲き、最後に果実が手に入るのです。メタボ・サポートは重要な保健サービスであり、その理念は「国民医療制度を守ること」にあります。これは医療従事者だけで

  議論して片ずくものではありません。医療の当事者が、自らの健康は自らで守るというセルフケアを実践することで国民皆保険制度を維持できるのです。セルフケアは

  超高齢社会に突入した我が国の全国民の責務と言っても言い過ぎではないでしょう。セルフケアで医療を守ることがメタボ・サポートの根幹なのです。総纏めとして

  ✲保健指導についての考え方として、3つのM、即ちMotivation (意欲)、Modification(生活を変えていくための工夫)、Emotion(感動)からなり、何のために、自分自身の

  出来ることを各自で工夫して開発し、最後に目的達成でお互いが感動をわかち合います。各自がセルフケアの実践でお互いに協力し合う関係でありたいものです。

  2008年4月からの特定健診・特定保健指導は40才以上75歳未満の被保険者、被扶養者を対象にしたメタボリックシンドロームの予防、解消のためのものです。これまでの

  病気の早期発見・治療から生活習慣を改善するための保健指導を行い、糖尿病などの生活習慣病の有病者・予備軍を減少させることを目的としています。

  健診は個人が生活習慣を振り返る絶好の機会と位置ずけ、行動変容につながる保健指導が求められています。ポイントをまとめると次の通りです。

  @結果を重視したこと:2008年に対し、2015年には、糖尿病等の有病者・予備軍の25%を減少させることを目標に据えた。

  A内臓脂肪に着目したこと:行動変容により内臓脂肪は減少し、病態が劇的に改善する知見にもとずき、行動変容モチベーションを維持できる。

  B検査項目、方法、判定基準の標準化を推進したこと          C保険者に健診・保健指導を義務化したこと

  具体的な保健支援は、積極的支援、動機付け支援、情報提供に階層化されて下記のように支援Aと支援Bに分けてポイントを算定します。

  動機付け支援は、実際の保健指導では、面接は原則1回ですが、6ヶ月経過後に

  実績評価を行います。個別支援では1人当たり20分以上、1グループ8名以下の

  集団支援では1グループ当たり80分以上かけて、生活習慣と健診結果の関係や

  生活習慣改善のメリット、放置した場合のデメリット、食事や運動など、具体的な

  行動目標の設定を支援します。

  積極的支援での実際の保健指導における初回面接は、さらに突っ込んだ内容で、

  対象者が自らの現状を自覚し、生活習慣の改善に向けた自主的な取り組みを

  継続して行えそうな実践可能な行動目標を選択できるように支援します。

  実践可能な行動目標について、優先順位を付け、対象者が選択できるように

  支援計画書を作成します。3ヶ月以上にわたる具体的な支援内容に対しては、

  ポイントがつけられ、支援Aの方法で160ポイント以上、支援Bの方法で20ポイント

  以上の支援を実施、合計180ポイント以上になることが最低条件とされています。

  特定健診・特定保健指導の問題点

  @40才代の女性が受けるべき検診は、乳がん検診、子宮がん検診であり、メタボ

  健診が最優先ではありません。

  A“30才ぐらいから毎年1kgずつの積み残しが、43才の厄年になって、15kg体重が増えた”

  これが標準的なメタボおやじコースです。この現状から40才からの保健指導は遅すぎないか?    30才から始めねばならないのでは?

  Bこれまで日本人にはいなかったような欧米型の体格をした20才代の若者が増えています。特に減量に難渋するタイプがこれらの若者です。膵臓のインスリン機能が

  欧米人並みであればよいのでしょうが、実際は30才代であっという間に糖尿病が悪化していきます。この20才代をどうするのか、ほったらかしですか?

  C50才代の女性は、エストロゲン分泌の急激な減少により内臓脂肪蓄積が顕在化します。女性のメタボはこの年齢層がターゲットなのですが、対象者に説明されていない。

  D健診後、健康保険組合の責任で階層化され、該当者には保健指導受診券という形で通知されるが、改めて忙しい働き盛りの者が保健指導を受けに来るか?

                                 

  メタボ・サポートがもたらすものは「お互いに成長すること」これがメタボサポートの楽しみです。マニュアル通りのお仕事では、決して人の心に浸みこむようなサポートにはなりません。

  あなたの人間力が問われています。地道なメタボ・サポートを意欲的にやり続けるには、”効果が目に見えて表れ、自分の存在が認められ、そして自分が成長する”のです。

  21世紀を生き抜くキーワードに、持続可能性と多様性(みんな1人一人が違う)があります。メタボ・サポートでは、ずーと続けて行く習慣を、1人ひとり違うものを選び取って

  、そして、仲間の知恵を共有しながら、1人で百歩進むのではなく、百人で1歩進みましょう。