どうしたらやめられる? アルコール依存症

  多くの人が酒を自由に好きな量だけ飲めるようになったのは、せいぜい100年ほどの歴史しかない。

  社会環境の変化で現代社会のように、飲みすぎ食べすぎが自由な社会の中で、いかに自分で

  これらをコントロールするかの指導が要求されています。

    アルコールと同じエタノールはエネルギーとして7.1kcal/gである。飲酒により胃と空腸の上部消化管

  より吸収され、門脈血流により肝臓に運ばれ2つの代謝経路を通じエタノールはアセドアルデヒドに酸化され

  さらに酵素により速やかに代謝され酢酸となる。酢酸は肝臓から血流に乗り全身に運ばれ、

  主に筋肉などで代謝され最終的に二酸化炭素と水になる。

  アルコールのエネルギーはエンプティカロリーといわれ、蛋白質やビタミン類・ミネラル類・

  食物繊維など他の栄養素を含んでいないという意味で使われている。

  ビールを毎日5本以上飲む大量飲酒者は、ビールだけですでに1000kcal以上のエネルギー

  をとることとなり、総エネルギー量の50%以上がアルコール飲料によることになる。しかし、

  残りのエネルギー量では他の栄養をバランスのとれる形で取ることは困難であり、必然的に

  蛋白質、ビタミン、ミネラル不足を来すことになる。

  アルコール依存症患者ではビタミンB1やニコチン酸の欠乏、亜鉛やマグネシュームの欠乏がみられ、

  ウエルニッケ脳症や末梢神経障害などを来しやすい。また膵炎患者には大量飲酒者が圧倒的に多い。

  慢性膵炎になれば、消化酵素などの外分泌機能障害にともなう吸収障害や下痢を来し、

  そして内分泌機能障害である糖尿病を来し、共に栄養障害をきたすこととなる。

  このようにエタノールとして毎日75g以上を飲むという大量飲酒では、バランスの取れた栄養を

  とることは難しい。他の栄養素も十分にとろうとすると、当然の結果として、総エネルギー摂取量は

  過剰となり、肥満を来すことになる。

  アルコール依存患者では、低栄養による肝障害やビタミン欠乏症などがよく知られているが、

  現代では肥満が大きな社会問題であり、むしろ飲酒と過栄養についての留意が必要となる。

  飲酒をする人ほどエネルギー摂取量も多いという報告があり、両者には正の相関がある。

                                                                            アルコール飲料の中身とエネルギー

飲料の種類 量(㎖) アルコール(g) 糖質(g) 脂質(g) 蛋白質(g) 総エネルギー(kcal)
ビール大瓶1本 633 22 20 - 3.2 247
日本酒1合 180 23 7 - 0.9 193
ウイスキーダブル1杯 60 19 - - - 134

ワイングラス2杯

240 24 4.8 - 0.8 184

焼酎1合

180 36 - - - 252

  空腹時にアルコールを飲み、食事をろくにとらない低栄養のやせた患者においてアルコール

  肝障害がみられる一方で、飲酒をしつつ食事を十分量以上とり過栄養のために肝障害が

  進展する例も多く、低栄養と過栄養の両極端の栄養障害が肝臓病の進展に関連するのである。

  脂肪肝の増加が人間ドックの全国集計で異常所見として最も多い検査異常となっている。

  脂肪肝の三大原因はアルコール、肥満、糖尿病であり、これらが重なり合っている場合が多い。

  アルコールは食前酒として使われるなど胃酸の分泌を促すといった食欲亢進作用もあり、同時に、

  食事を節制しようとする中枢神経を麻痺させる作用もあるため、肥満や糖尿病などの食事の

  節制が必要な人には基本的に飲酒はすすめられない。

                                                          ✱ アルコール症スクリーニングテスト

  最近6ヶ月の間に次のようなことがありましたか 回答 点数
酒が原因で大切な人(家族や友人)との人間関係にひびが入った事がある ある  3.7
ない  -1.1
2 せめて今日だけは酒を飲まないと思っていても、つい飲んでしまうことが多い ある  3.2
ない  -1.1
3 周囲の人(家族、友人、上役など)から大酒飲みと非難された事がある ある  2.3
ない  -0.8
4 適量で止めようと思っていても、つい酔いつぶれるまで飲んでしまう あてはまる  2.2
あてはまらない -0.7
5 酒を飲んだ翌日に、前夜のことをところどころ思い出さないことがしばしばある あてはまる  2.1
あてはまらない -0.7
6 休日には、殆どいつも朝から酒を飲む あてはまる  1.7
あてはまらない -0.4
7 二日酔いで仕事を休んだり、大事な約束を守らなかったりした事が時々ある あてはまる  1.5
あてはまらない -0.5
8 糖尿病、肝臓病、または心臓病と診断されたり、その治療を受けた事がある ある  1.2
ない  -0.2
9 酒が切れた時に、汗がでたり、手が震えたり、いらいらや不眠など苦しい事がある あてはまる  0.8
あてはまらない -0.2
10 商売や仕事上の必要で飲む よくある  0.7
時々ある  -0
めったにない  -0.2
11 酒を飲まないと寝付けない事が多い あてはまる  0.7
あてはまらない -0.1
12 殆ど毎日3合以上の晩酌(ウイスキーなら1/4以上、ビールなら大瓶3本以上)をしている あてはまる  0.6
あてはまらない -0.1
13 酒の上での失敗で警察の厄介になった事がある ある  0.5
ない  0
14 酔うといつも怒りっぽくなる あてはまる  0.1
あてはまらない 0

      {判定方法}  点数の合計が

             2点以上:きわめて問題多い(重篤問題飲酒群)

             0〜1.9点:問題あり

             -4.9〜0点:まあまあ正常(問題飲酒予備軍)

             -5点以下:まったく正常(正常飲酒群)                                             

                                                           ✱    アルコール依存症判別検査                                    

  アルコール依存者への栄養相談の注意点

   1.対象者に飲酒問題が観察されない場合:問題行動が見られなくても、日本酒換算で1合

    /日以下の飲酒量を目標とします。週に二日間の休肝日を設け、できれば連続2日間とし、

   自分の意思で我慢できるかをを確認します。未成年者、妊婦、・授乳婦は断酒です。

   少量の飲酒習慣は循環器疾患の死亡率を下げると報告されていますが、飲めない人が無理に

   飲酒しても効果は期待できません。

   2.問題飲酒行動が観察された場合:主治医に報告し、プレアルコホリック教育プログラムなどの

   専門治療に導くことが必要です。服薬している場合は、飲酒による薬効の減少あるいは増加の危険が

   あるため、スタッフ間で情報の食い違いを注意します。特に糖尿病では、入院中は断酒および

   投薬により血糖コントロールができていても、退院後の再飲酒時に低血糖になる危険性があり、

   その際低血糖発作に気ずきにくく突然死の可能性が高いので、服薬期間中は飲酒について

   十分に注意します。

   3.最後にアルコール依存症の場合:飲酒を楽しむより不安から強迫的に飲み続けている

   状態なので、専門治療が必要です。栄養相談では、完璧な食事療法を目指すよりも、断酒の

   継続支援を最優先目標とします。数年間断酒できても、1回の飲酒により再発する事が多いので、

   依存症は節酒ではなく、生涯断酒になります。

   入院時のビタミン類欠乏は、食事よりも薬剤によって集中的に補給します。アルコールの

   離脱後は食欲が増加しますが、急な過食による脂肪肝を防ぐ為、間食や夜食に注意します。

   また、昼夜逆転、欠食などの不規則な生活は飲酒欲求を引き起こすので、生活習慣や食習慣の

   自立支援が大切です。患者の多くは長年の過剰飲酒により、脳、神経障害による理解力低下、

   運動機能低下などの日常生活の支障に加えて、配偶者への暴力や離婚など家族関係に

   問題を抱えている場合があるので、食事計画は患者個人の状況を考慮し、実行しやすい

   簡便な方法を用いる必要があります。

   抗酒剤はアルコール含有食品と反応する為、服薬中は調理酒、みりん、ドリンク剤等の食品は

   厳禁とします。これらの食品は飲酒欲求誘引となるので、原則として禁止します。

   アルコール依存者の多くは自覚のない味覚異常があるので、味付けは本人の感覚に頼らず、

   減塩しょうゆのようにあらかじめ調整された食材やパックしょうゆなど計量が簡便な食材を利用しましょう。

                      ★適正飲酒10か条

     @ 笑いながら共に、楽しく飲もう      E 人に酒の無理強いをしない

     A 自分のペースでゆっくりと         F 薬と一緒には飲まない 

     B 食べながら飲む習慣を          G 強いアルコール飲料は薄めて

     C 自分の適量にとどめよう         H 遅くても夜12時で切り上げよう

     D 週に2日は休肝日を            I 肝臓などの定期検査を

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