医者の

  ◎机上の空論 放置療法

癌の放置を勧めて治療のチャンスを奪う大罪 知っていてほしい、癌の発生の仕方
放置治療の拠り所「がんもどき」等存在しない 一般の人には意外と不評だった癌放置療法
頭の中だけで治療理論を作るのは傲慢

  ◯癌の放置を勧めて治療のチャンスを奪う大罪   

  ✱「治療は無意味」という極めて特異な主張                          

  皆さんは、「癌と診断されても治療せず、放置しなさい」と勧める医者の存在を知っているでしょうか。癌を放置してもよいとする、彼の説はこうです。●癌と診断される病気には2種類あり、

  転移する癌と、転移しない癌は「別物」である。●転移する癌は、見つかった時にはすでに転移している。従って、治療をしても助からない。早期発見・早期治療に意味はない。

  ●一方の転移しない癌は、ずっと発生した場所にとどまり続ける。生命維持に欠かせない臓器を冒すまでは、命を奪うことない。従って、治療に必要はない。

  ●苦しい癌治療を受けると、どちらの癌の場合でも生活の質を落とすだけになる。むしろ放置したほうがいい。こうした持論を展開しているのが、有名なK医師です。K氏は世間でそこそこ

  人気があるようで、K氏のセカンドオピニオンを30分3万円で受け、最後に「どうしたらいいですか?」と尋ねると、「俺は知らない」と答えられたので呆れたと、ある患者さんが言っていました。

  ✱癌放置理論に傾倒していた女優の川島なお実さん 

  女優の川島なお美さんが癌で亡くなったのは、記憶に新しいところです。彼女の胆肝癌は、2013年の8月に人間ドックで発見されました。胆管というのは、消化液のひとつである胆汁の

  通り道です。癌ができた部位が肝臓の中にあると治療しにくく、消化器系の癌の中では、予後も悪いほうです。なお美さんの癌は、肝臓内にできていました。治療自体の難しさとは別に、

  なお実さんは舞台に立てなくなる手術や抗癌剤治療に消極的だったようです。そこで、癌と分かってから、何人もの医師にセカンドオピニオンを求めています。そして、その2番目として、

  癌が見つかった翌月にK医師を訪れています。彼女と癌放置理論との関わりを、遺書『カーテンコール』(夫・鎧塚俊彦氏との共著/新潮社)から考えて見ましょう。
 
  彼女が亡くなった後、K医師も雑誌の取材などに答えていますが、それは参考にとどめます。ここで大事なのは、患者さん自身がどう感じていたのかです。著書を読んでK氏に傾倒して

  いたなお実さんは、彼に「放置しておけば大丈夫」という答えを期待してようです。しかし、意に反して、「胆肝癌だとしたら厄介だね。2,3年は元気でも、ほっておいたらいずれ黄疸症状が

  出て肝機能不全になる。手術しても生存率は悪く、死んじゃうよ」K医師の言動を、なお実さん自身がどう感じたかは、著書に書かれています。ですから、敢えてそこまでは触れません。

  さひかし、このくだりを読んで、放置療法を標榜する医師のいいかげんさに呆れ果てました。しかもK医師は、自身の意見として、胆肝癌の治療には適していないラジオ波焼灼(はしょうしゃく)術(肝臓内に

  電極を入れて癌を焼く治療法)を提案しました。その結果、希望を持ってラジオ波の専門医を受診したなお実さんは、「治療不適」という結論に一時打ちのめされています。最終的に

  手術を受ける決断をした彼女は、2014年1月に腹腔鏡手術を受けます。しかし、術後半年で再発し、悲しい結末を迎えてしまいました。彼女が亡くなったのは2015年9月のことでした。

  ✱天国からの訴え「癌を放置しないで」

  この経過について、分かる範囲で医師としての見解を述べてみます。なお実さんの胆肝癌は、発見の時点では大きさも1.7cm。ですから「早期癌」というべきものでした。予後のよくない

  胆肝癌とはいえ、発見時にはステージⅡで、すぐに手術をしていれば亡くならずに済んだかもしれません。そこに免疫の力で体内の癌細胞を一掃するANK療法を加えていたら、完治も

  夢ではなかったはずです。なお実さんが、亡くなる直前まで、プロとして舞台を務め、生き抜かれた事は称賛に値します。しかし、一旦癌の「放置」を検討したことが、結果的に命取りに

  なったのではないかと思われます。「癌は放置しても大丈夫」という医者がいれば、それを信じて早期治療を軽視してしまう患者が出てもおかしくありません。その例が、なお実さんなのです。

  彼女は、K医師の前に会った医師の最初のセカンドオピニオンで、すでに「即手術」を勧められています。ところが、癌放置理論に傾倒していたために、「慎重に治療法を探そう」と考え、

  結果として半年近く放置してしまったようです。いたずらに時間を費やしてしまったことが、貴重な女優人生を締める結果になったと思われ、残念でなりません。癌のたどる道は様々

  なので、あくまで結果論になりますが、なお実さんは「遅すぎた手術」と言われながらも、術後1年8ヶ月近く生き続けました。ということは、もっと早く手術していれば、治せたのではないか。

  少なくとも、もっと長く生きられたはずだという思いにかられるのです。K氏が「手術が死期を早めた」と述べていることには、強い違和感を覚えます。なお実さんは、遺著で、癌患者にこう

  呼びかけています。ー決して「放置」などしないでください。まだやるべきことは残っています。-ともかく放置だけはしないでください。この言葉の重みを、受け止めなければいけないと

  思います。