生涯健康脳

  ◎「寝る子は育つ」は本当だった!

子供の脳は、大人の脳の土台となる 子供の脳を育てるには適時性がある
「寝る子は育つ」は本当だった 「知的好奇心」が「生涯健康脳」のペースを作る
子供の朝食は、菓子パンよりご飯が良い 子供の「知的好奇心」は家族が育む

  ◯子供の脳は、大人の脳の土台となる

  加齢研究とは高齢者の方を対象にした研究という意味ではなく、「受精卵から人の一生涯」がその対象となります。「生涯、人間らしくあるためには」のカギを見つけ出すために、遺伝子レベル

  からすでに研究は始まっています。乳幼児は動いてしまい画像映像ができないのですが、それでも5才から18才までの子供や青少年の脳のMRI画像を含めた疫学データも集積しています。

  子供を対象にした疫学データを持っているところは少なく、この数は東洋一を誇っています。「生涯健康脳」を追い求めれば求める程、子供の頃の過ごし方の重要性が明らかになってきました。

  子供の時の生活習慣が、脳には様々に大きく関係することが分かってきたのです。子供の時に作られる脳は、当然、大人の脳になるための土台となります。ですから、子供の時の脳は、将来

  認知症にならない脳を作る土台となる脳でもあるということです。読者の方の中には、小さなお子さんをお持ちの方や、可愛いお孫さんがいらっしゃる方も多くいらっしゃることでしょう。そこで、

  「将来のために、子供の脳にとって良いことは何か」についてお話しをします。

  ◯「寝る子は育つ」は本当だった

  まず着目したのは、「睡眠」と「脳の発達」との関係です。子供達のMRI画像の集積から見えてきたのは、子供の睡眠時間が「海馬」に大きく関係していることでした。具体的には、8時間、9時

  間近く寝ている子供たちは、5、6時間しか寝ていない子供に比べて相対的に海馬の体積が大きいことがわかったのです。言い換えれば、「睡眠時間が短い子供は、充分寝ている子供より

  海馬が小さい」ということもできます。海馬の体積が大きいということは記憶に関わる能力が高く、海馬は脳の司令塔なので、脳のあらゆる領域を発達させる能力も又高いことを示しています。

  昔から「寝る子は育つ」といわれてきましたが、脳の中もまさにその通リだったのです。睡眠に関しては、寝る時間の遅い子や睡眠時間の少ない子供たちは学業成績が良くない。或いは記憶

  力があまり良くない。ということも世界中から報告されています。また、マウスやラットを使った動物実験では、寝たら起こすという睡眠妨害の実験を行った結果、海馬が萎縮したという報告も

  されています。では何故、睡眠時間が短いと海馬が萎縮するのでしょうか。その原因は体にかかる「ストレス」にあると考えられています。ストレスは、大人も子供も海馬の神経細胞が新しく

  生まれ変わる働きを抑えてしまい、その度合がひどくなると海馬がかなり萎縮する事が分かっています。短時間睡眠は、本人が眠いとか、眠くないとかに関わらず、成長期の子供の脳や体に

  かなりの負担がかかっていることがわかります。但し、寝れば寝るだけ海馬が大きくなるというわけではありません。寝過ぎは夜間に目が覚めてしまう回数を増やし、睡眠の質を下げるので、

  逆効果と言われています。適度な睡眠を年齢と発達段階に応じて取ることが大切です。子供のうちから「海馬」の体積を大きくしておくーこのことが将来の「認知症」や「うつ病」予防に、大きな

  力になることは間違いありません。

  ◯子供の朝食は、菓子パンよりご飯が良い

  子供たちの食事の内容も、脳の発達に大きく関連していることが分かりました。「朝、何を食べるか」で、脳の発達に違いがあることが分かったのです。子供たちが朝食でご飯を食べているか、

  パンを食べているか、パンの場合はどのようなパンを食べているか、おかずの品数がどれぐらいか、週に何回食べているか、などの様々なデータを収集し、私達は子供達の能力と比較・解析

  を行いました。その結果、朝食でご飯を食べている子供のほうが、菓子パンを食べている子供よりIQ(知能指数)の平均値が高いという結果が出ました。おこで、脳のMRI画像と照合し詳細を

  調べたところ、ご飯を食べている子供の方が、「言語」の働きを担う領域「前頭前野」の灰白質の面積が大きく、言語能力はじめ、いくつかの認知機能が高いことが分かったのです。

  食事内容は家庭環境によって差が出やすいものですが、疫学の解析では世帯年収、子供の年齢、性別、朝食の頻度などで影響が出ないように統計学的に補正をするので、正しいデータ

  結果ということができます。では、何故ご飯のほうが脳に良いのか。その理由は「GI値」が関係していると考えられます。「GI値」とは、よくダイエットの話題に出てきますが、食べた物が体内で

  糖に変わり、血液中の血糖値の上がるスピードのことです。パンは、この「GI値」が高めで、菓子パンなどは特に高いと言えます。その為、血糖値が急激に上がり、急激に下がります。反対に、

  ご飯は「GI値」が低く、血糖値の上昇と下降が緩やかで、スピードも又ゆっくり変化します。子供達の脳は、神経細胞と神経細胞をつなぐ道を沢山作ったり、使わない道を壊したり、大人の2倍

  近い血液が流れています。発達のために、エネルギーも沢山必要になります。そのため、脳に長い間エネルギーが保たれる「GI値」の低い食べ物のほうが良いのです。では、ご飯がよくて

  パンが悪いかというと、そういうことではありません。パンでも欧米などで主食として食べられている全粒粉のパンやライ麦パンは、菓子パンよりも血糖値の動きは緩やかです。ご飯もまた、

  玄米や雑穀米の方がより「GI値」は低くなります。又海外では、朝、砂糖たっぷりのシリアルを食べている子供達は、健康的な食事をとっている子供に比べ成績が悪いというデータが出ています。

  これも血糖値が影響していると考えられます。朝はシロップがいっぱいかかったパンケーキより、「GI値」の低い食事が子供たちの脳には良いのです。