生涯健康脳

「有酸素運動」が脳を活性化させる 内臓脂肪型の肥満は脳に大敵
「有酸素運動」をすると「海馬」の体積が増える 中高年の肥満は、将来の認知症のリスクを上げる
「デュアルタスク」で、更に脳を喜ばせる 糖尿病・動脈硬化・高血圧が認知症のリスクを上げる
充分の時間と質の良い「睡眠」が脳を守る ストレスは海馬を萎縮させる
飲酒は脳を萎縮させる 大きな心の傷は、海馬も帯状回も萎縮させる

  ◯「有酸素運動」が脳を活性化させる

  「人間らしさ」を保つために、脳の中でも「前頭葉」や「海馬」がどれほど大切化について述べてきました。そして「認知症」とはどんなものなのかについても、述べてきました。では認知症になら

  ないために、脳を意図的に活性化させることは出来ないのでしょうか。実は日常生活の中に、「生涯健康脳」の作り方があるのです。脳のために良いこと」を集めたら、間違いなく「運動」が

  一番でしょう。「運動」といっても、サッカーやテニスのような激しいスポーツや、ジムのきついトレーニングなどではなく、1日たった30分歩く程度の「運動」です。歩く程度の「運動」が何故脳に

  良いのか。それは「歩く」ことが、しっかり呼吸をしながら継続的に酸素を体に取り込む運動、つまり、「有酸素運動」になっているからです。この「有酸素運動」こそが、脳のために最も良いこと

  なのです。激しいスポーツや瞬発力を使うようなスポーツでは、継続的に酸素を取り込むことが出来ません。継続的にしっかり酸素を取り込むためには、ウオーキングやジョギング、水泳などが

  良いのです。有酸素運動が脳にもたらす効果は、認知症の改善にも効果が高いと注目されています。愛知県にある国立長寿医療研究センターでは、軽度の認知障害である65才以上の

  308名の方を対象に、週一回、ウオーキングやステップの昇り降りなどの有酸素運動を行うグループと、全く行わないグループに分けて10ヶ月間、「認知機能テスト」の実験を行いました。

  その結果、運動をしていたグループは、認知機能が維持または向上していて、特に「記憶力」のテストで良い結果が見られました。そして何よりも脳の萎縮がストップしていたのです。一方、

  運動をしなかったグループは、認知機能は変化が見られず、むしろ脳の萎縮が進行している人が多く見られたのです。同じく、60才から85才までの人に10週間、有酸素運動のエクササイズを

  受けた人と受けなかった人に、注意力や集中力を必要とする「視聴覚認知テスト」を同時に行った調査では、エクササイズを受けた人の成績が時の経過とともに受けなかった人より向上した

  という結果が出ています。また、フィンランドでも65才から79才までの1500名を対象に「高齢者と運動」との関係調査を行いました。その調査から、少なく共週に2回運動していると、運動を全く
  
  しない場合よりも認知症を発症するリスクが半分に減るという結果が出ています。この様に「有酸素運動」が脳を活性化し、認知症の改善や予防に大きね効果があることが報告されています。

  ◯「有酸素運動」をすると「海馬」の体積が増える

  では、何故「有酸素運動」が良いのでしょうか。それは、脳細胞のエネルギー源とも言える重要な栄養素「BDNF(脳由来神経栄養因子)という物質が、有酸素運動によって体内に作られる

  からです。この栄養素は記憶の働きを司り、脳の中枢を担う「海馬」に大きく関わりを持っています。この栄養素は加齢とともにどんどん減り、認知症の方ほど減り方は著しくなります。つまり、

  脳の萎縮が進んでいる人ほど、この栄養素が少なくなっていることが分かります。アメリカのピッツバーグ大学で、55才から80才までの健常な男女120名を有酸素運動と、有酸素ではない

  運動を行うグループに分け、海馬との関わりについて、1年、比較調査を行いました。その結果、有酸素運動ではないグループは海馬が減っていたのに対し、有酸素運動を行ったグループは

  維持するどころか、海馬の体積が増大したのです。つまり有酸素運動をすると、脳にとって大切な栄養素が作られ、それが海馬の体積を大きくして認知機能を高めるということが分かったのです。

  有酸素運動の効果はこれだけではなく、有酸素運動は更に、「認知症」を引き起こす原因の「アミロイドペータ」を壊す酸素を発生させたり、脳への血流を増加させたりします。また感情をコント

  ロールする物質を増やしたり、動脈硬化の原因となる物質や遺伝子を傷つける物質を追い出すなど脳のために良いことだらけなのです。有酸素運動が脳にもたらす効果は、この様にすばら

  しいものがあります。そして、その結果は、わずか30分の有酸素運動で得られることが分かっています。大切なことは、一定の心拍数で有酸素運動をすること。歩くことでも、ジョギングでも、

  水泳でも30分程度で効果があるのですから、無理のない時間と程度で有酸素運動を楽しみましょう。折角頑張っても、疲れて次回につながらないのはもったいないこと、体に無理な負担を

  かけずに、出来る日は少なくとも30分は続ける、まさに「継続は力なり」です。