生涯健康脳

  ◎認知症の正体を知っておこう

認知症は脳の老化とは違う 認知症の原因アミロイドペータは15年前に見つけられる
認知症は主に3タイプある 睡眠が認知症の原因物質を洗い流す
認知症は階段を降りるように進行する 認知症の脳に働きかけるユマニチュード
”黒いシミ”と”おたまじゃくし”が認知症を起こす 優しくされると脳のストレスホルモンが減る
認知症を病気の一つと受け止める 認知症の治療は進化している

  ◯認知症は脳の老化とは違う

  「生涯人間らしく」あるためには、記憶が失われていく「認知症」の正体について知っておく必要があります。日常生活でこんなこと、ありませんか。部屋に入った瞬間「あれっ、何し

  に来たんだっけ?」「この俳優さんの名前、えっと、あの・・」「昨日の夜食べたのは、えーと」「あ、冷蔵庫に入れたままだ!」「あれ買うの忘れちゃった」「あれ、どこにしまったけ?」

  思わず苦笑いされた方もいらっしゃることでしょう。でも大丈夫です。これは加齢によって自然に起こる「もの忘れ」と言われる現象です。医学的には「良性健忘」と言います。

  加齢によって起こる現象は、脳のMRI画像でも見ることができます。脳の健康度というのは、具体的にいうと脳の萎縮度で測ることができます。脳は、年齢に伴い少しずつ萎縮して

  いき、ある程度加齢を重ねると、血液が通わなくなる虚血性の変化として、シミのようなモノが脳に見られるようになります。このシミの量や萎縮の度合いで脳の加齢度を測ること

  ができます。では「認知症」というのは、どのようなことをいうのでしょうか。「認知症」は、記憶の働きや思考力・判断力などをはじめとする認知機能が低下して、日常の生活に支障

  を来す症状のことを言います。加齢によって起こる自然な老化現象の延長にあるものではなく、脳梗塞・脳出血・クモ膜下出血など脳の血管に起こる病気や、アルツハイマー病な

  どの病気によって引き起こされる症状なのです。ですから「認知症」は年をとれば仕方ないと思うのではなく、病気の症状として受け止められることが大切です。

  ◯認知症は主に3タイプある

  「認知症」にはいくつかのタイプが有り、大きく3つに別れます。「脳血管性」「レビー型小体型」「アルツハイマー型」が3大認知症です。「脳血管性認知症」は、脳梗塞・脳出血・クモ

  膜下出血などの脳の病気に伴う、脳の障害によって引き起こされる認知症です。障害の起きた血管の場所によって「認知症」の症状も異なります。「レビー小体型認知症」は、レビ

  ー小体という異常な蛋白質の集まりが、神経細胞の中に溜まることによって起こります。レビー小体は、パーキンソン病を引き起こす物質でもあります。もの忘れなどの記憶障害

  ではなく、幻覚を見たり、うつ状態になったり、パーキンソン病の様な手の震えなどが見られるのが特徴です。そして、最も多いのが「アルツハイマー型認知症」です。「アルツハイ

  マー病」によって引き起こされるもので、認知症全体の50%を占めます。「アミロイドペータ蛋白」や「タウ蛋白」という異常な蛋白質が脳に蓄積し、脳の神経細胞にダメージを与える

  事によって起こります。

  ◯認知症は階段を降りるように進行する

  此処から先は、最も多い「アルツハイマー型認知症」に絞って話を勧めていきます。「認知症」の進行は、脳の萎縮のスピードと大きく関係しています。脳のMRI画像で見ると、1年

  あたりの脳の体積の減少量は、ごく初期の認知症であっても、健常者に比べて約2倍のスピードで落ちていきます。10年間で健常者の脳が約5%減るとしたら、認知症の方は10%

  減ってしまうことになります。脳にとっての10%というのは相当の量です。高齢になると、そのスピードが一気に加速する傾向も見られます。認知症の症状は「もの忘れ」から始まり

  ます。ですが、加齢による単なるもの忘れとは異なり、日にちや時間、曜日などが分からなくなります。また、近い記憶から少しずつ失われ、記憶の一部がそっくり抜け落ちていきま

  す。そのため、夕ご飯に何を食べたかではなく、夕ご飯を食べたことそのものを忘れてしまうようになるのです。このような状態が半年以上続くと「認知症」と判定されます。但し、

  認知症の診断は必ずしも容易ではなく、老年期うつ病など他の病気との鑑別が難しいこともあります。中期になると、失われる記憶の期間が長くなり、数十年単位で抜け落ちて

  しまうことから、実際の年齢より、20才、30才若い時の意識でいるようになります。この頃から、ボタンをかける、お箸を使うなどの日常生活で、手や道具を使う動作も難しくなり、

  歩行や排泄にも障害が出てくるようになります。この中期の段階までいくと、自分が認証であることは分からなくなります。そして後期まで進むと、相手が誰なのか、そして自分が

  誰なのかまで分からなくなり、会話をすること、自分の意志で体を動かす事もできないようになります。「人間らしさ」といえる、記憶、思考力や判断力などの認知機能が失われ、

  最後には動物として生きるために重要な、立つ、食べるという働きまで失われてしまいます。やがて自分で食べることのできない嚥下障害が起き、身体が衰弱していくことによって

  終末期を迎えることになります。