全ての疲労は脳が原因

  ◎脳疲労を軽減するためにワーキングメモリを鍛える

複数のことを同時に考えて行動する脳の力 効果的な「記憶のタグ付け」のコツは感動すること
ワーキングメモリを鍛えて認知機能の衰えを抑制する ワーキングメモリの基礎力は「再生」にあり
「トップダウン処理」の力を強化する 日常的にワーキングメモリを鍛える3つの方法
「記憶のタグ付け」で情報を有効活用する あとがき

  ◯複数のことを同時に考えて行動する脳の力

  人が生命活動を充実させるためには、日常の生活で脳疲労を溜めないことと同時に、疲労に強い脳を作る脳を作る方法を模索し、実践する必要があります。疲労に強い脳を作るために重要

  な方法として、「ワーキングメモリ」を鍛える事があります。ワーキングメモリという言葉は、耳にしたことがある人も多いと思います。ワーキングメモリーとは脳の働きのひとつを指し、「作業記憶」

  或いは「作動記憶」とも呼ばれます。人は何かの作業をする時に、過去に経験した記憶を参考にしながら複数のことを同時に行っています。ワーキングメモリとは、このようにリアルタイムで

  インプットされる情報(短期記憶)を受け入れながら、過去の記憶、学習、理解など(長期記憶)と結びつけて複数のことを同時に受け入れながら、また行うことを可能にする脳の力、一連の動

  きを言います。ワーキングメモリについては近年、認知心理学、脳科学、医学などの多くの分野で幅広い研究が行われています。解明がこれからの部分もあるが、その概念やメカニズムを

  知っておくこと、叉、ワーキングメモリを強化する実践法は脳疲労の対策に大きく役立つと考えられます。人を含むあらゆる動物は、過去の経験から学び、危険を回避し、獲物を得て生存してい

  ます。この経験は記憶として保存されています。第1章では、記憶を質のタイプから「エピソード記憶」「意味記憶」「手続き記憶」の3つに分類しました。一方で記憶は脳の機能上、保存される

  期間から、短時間のみ保存される「短期記憶」と、長い期間にわたって保管される「長期記憶」の2つに分けられています。長期記憶は一般に、「経験」と呼ばれています。刻々と移ろう環境の

  変化に対応するには、、ここ数日間の短期記憶に加えて、例えば去年の今頃はどうだったのかという長期記憶を参照する事が不可欠になります。ワーキングメモリは、生きてういく上で必要と

  なる短期記憶と長期記憶を密接にリンクさせる作業でもあります。ワーキングメモリの中枢は、知的機能を担う大脳の前頭葉の前頭前野にあると考えられています。前頭前野は、最も効率的

  に作業を達成できるよう、うまく注意配分して脳全体を有効活用する働きを担っています。ワーキングメモリが優れているということはつまり、脳全体をうまく活用し、複雜な作業を省力化して

  効率よく行う能力が高いことを意味しています。第1章で、集中力を高めるのは危険な行為であると言いました。大脳の一つの部位だけを使うことに集中せずに、他の多くの部位を効率的に

  使うことができると、脳疲労が蓄積しにくくなると考えられます。これはスポーツにおける体の使い方に似ています。スポーツが得意な人は、全身の範囲を滑らかに連携させて動かすことがで

  きます。複雜な動きでも特定の範囲に負担を集中させずに筋肉への負荷を最小限に抑えるようにしているのです。一方で、いわゆるスポーツが不得手なタイプの人は、複数の筋肉を滑らかに

  動かすことができず、動きがぎこちなくなります。負荷を分散することができないため特定の筋肉に負担がかかり、ダメージが集中することになります。トレーニングによってスポーツが上達す

  るように、訓練や習慣、経験によってワーキングメモリを鍛えることは可能です。ワーキングメモリを強化すれば、脳疲労を予防する体質になることが可能だと考えられます。

  ◯ワーキングメモリを鍛えて認知機能の衰えを抑制する
                                                                 
  脳の神経細胞は、領域によって担っている機能が違います。これを「局在性」と言いますが、ワーキングメモリを使っていると、神経細胞は、認知、運動、感情、記憶、学習など複数の機能を

  使いこなす「マルチプレイヤー」として成長します。野球選手に例えてみましょう。選手には、ピッチャー、キャッチャー、内野手、外野手という専門があります。しかし、どの選手も野球選手として

  の素養があるため、練習をすれば複数のポジションをこなせるマルチプレヤーとしてせいちょうすると予想できます。神経細胞がマルチプレヤーになると、脳のある部位がダメージを受けても

  ホメオスタシスが働いて脳全体の機能を保つことにつながります。何故そうなるかを説明しますと、例えば、65才以上の高齢者の脳をMRI(核磁気共鳴映像法)で撮影すると、小さな脳梗塞

  (脳の血管が詰まり、神経細胞が壊死する病気)が複数見つかるケースが多いのですが、自覚症状がない場合が殆です。何故なら、脳梗塞で壊死した神経細胞の機能を周囲の神経細胞が

  補い、助けながら担うようになるからです。脳梗塞などの脳血管障害が進むほど、ダメージを受ける神経細胞は増えて人の認知機能は低下していきます。これは脳血管性認知症の一因とも

  なります。ところが、同程度の脳血管障害が進んでいる人達の認知機能が同じレベルであるかというと、そうではありません。認知機能が大きく低下する人と、そうでない人がいます。その

  違いには、神経細胞がどれだけマルチプレーヤー化しているかが関係していると考えられています。神経細胞の多くがマルチプレヤー化していれば、脳梗塞のような脳血管障害が同時多発

  的に起こったとしても、互いに補いあったうえでの総合力で脳機能全体をカバーできるようになります。そうすれば、認知金峰の低下を抑えることが出来るわけです。このことは、脳の局在性を

  生かす事を意味します。領域によって違った働きを担いながら、一つの部位がダメージを被ると他の部位でカバーすることは、脳の機能を維持して脳梗塞を予防することにつながります。