エイジングを科学する

  

  ✲エイジングとアンチエイジングな食べ方:

  日本人の平均寿命は80才、過去1世紀の間に先進諸国では、平均寿命は30才も延長、即ち100年前の平均寿命50才の時代から、高齢期が30年間延長したことになります。

  長い高齢期を活動的に過ごし、生き甲斐のある人生を全うする為には、病気の治療や療養の期間をなるべく減らし、いわゆる健康寿命を延伸すことが肝心です。その為には、

  高齢期の生活の質を下げてしまう生活習慣病や高齢期に発症が増える癌、また要介護の原因となる骨粗鬆症、関節疾患、認知症などの病気を予防することが大切です。これらの

  病気の発症には10〜20年もの無症候期があり、発症前の食生活や生活習慣が病気の発症に大きく関わっていることが明らかにされています。従って、中年期の食生活が高齢期の

  発症してくる病気の予防にきわめて重要です。このようなことから、自分自身の食事内容をアンチエイジング効果の観点から見直すことが重要です。つまり、十分な栄養素を食事で

  確保し、エネルギーの摂り過ぎを予防、抗酸化食材や植物性化学物質を食材として十分に使うことで、生活習慣病や癌の発症予防を目指すのです。その為には自分自身の健康を

  自ら作り上げていく為の食材、料理の基礎理論を身につけることが重要です。✦アンチエイジング食材として最初に注目すべきが、野菜、果物に含まれている植物含有化学物質です。

  一般に、我々が毎日食べている野菜(ターメリック、緑茶、蜂蜜、チリペッパー、大豆、ニンニク、生姜、ブドウ、キャベツ、トマト、ブロッコリー・・・)には、数千種類以上の植物含有

  化学物質が存在していると考えられています。これらの化学物質は抗酸化作用が認められるだけでなく、抗腫瘍作用が認められます。例えば、ブロッコリーには約200種類もの

  植物含有化学物質が含まれていることが明らかになっている。赤ワインで注目のポリフェノール類の物質も、本来、赤ブドウに含まれている植物含有化学物質と考えられます。

  従って、野菜をベースにして、多くの種類の野菜や果物を食材として選択することが、アンチエイジングメニューの組み立ての基礎となります。それでは動物の肉には抗酸化物質が

  ないかというと、そうではなく、魚や家畜の肉にも強力な抗酸化物質が含まれています。例えば、鮭に含まれる微量成分の中にはビタミンB2,B12,A,D等の体に必要なビタミン類に加えて

  アスタキサンチンという抗酸化物質が含まれており、これはトマトのリコピンに構造が似ているが、それより強力な抗酸化作用があり、脳に移行し認知症予防に適した食材です。

  また、鮭には動脈硬化を予防するEPAも含まれ、うまく料理に使えば、様々な疾患を予防する食事を組み立てることが可能です。✦食事の組み立てで次に重要となるのが、

  摂取エネルギーと栄養素の問題です。生活習慣病予防のためには、エネルギーは必要最低限に近くした食事を心掛けることが肝心です。適正なエネルギーのコントロールが

  生活習慣病全般の予防につながること、過剰摂取が生活習慣病の発症、癌の発症につながっていることが科学的に明らかにされています。しかし、厳密にエネルギーを制限すると、

  時に栄養素が足りなくなり、骨のミネラルや筋力が減少することがあります。低栄養による骨・筋力低下を予防するためにも、ビタミン、ミネラルを確保する必要があり、野菜、果物を

  食事の中に上手に取り入れていくことがポイントとなります。エネルギー制限は寿命を延伸するための唯一の確立された介入方法であることが数々の動物実験でも証明されている。

  ✦人体は60兆もの細胞からなり、1つひとつの細胞がそれぞれ23,000個の遺伝子を持ち、その中に老化や寿命を制御している遺伝子が50〜100個程度存在することが明らかに

  されました。それらの遺伝子はある時は不活性化し細胞を老化させたり、ある時には活性化し老化を遅らせて細胞の若さを保ったりすることができます。最近、米国で生活様式が

  ある長寿遺伝子を活性化させるメカニズムを明らかにしました。この遺伝子であるSir2遺伝子は、全身の細胞の老化プロセスを日々コントロールしていて、メタボリックシンドロームや

  U型糖尿病のような生活習慣病の発症メカニズムにも関与していることがわかりました。動物実験でSir2遺伝子が活性化されると動物の寿命が延びることが実験で証明された。

  摂取エネルギーが制限されるとSir2遺伝子が活性化されることが突き止められた。酵母で発見された活性化因子NADは我々の体にも存在し、摂取エネルギーが制限されると

  細胞内のNAD濃度が高くなることがわかりました。つまり、NADは細胞レベルでの栄養状態を反映する因子なのです。NADはSir2に結合することでSir2を活性化するするため、

  過剰にエネルギーを摂取している状況ではSir2遺伝子は活性化されないことがわかりました。つまり、長寿遺伝子Sir2を活性するためには適正なエネルギー摂取が必要になります。

  日本で腹8分目という目安があるが、実験では腹6〜7分目の条件でした。動物実験の条件から短絡的に我々の適正エネルギーを決めるのは危険があるので、人での長寿遺伝子を

  活性化するための適正エネルギーを知るにはさらなる研究が必要です。いずれにしても、毎日食べている食事の内容が細胞の老化のプロセスをコントロールする重要な因子である

  事が解明されつつあります。これらの研究により、化学的な観点から毎日食べている食事を考え直したり、より健康的なメニューを考案することが可能となったのです。