脳細胞は甦る

  ◎脳細胞こそ最も長寿な存在

ニューロンの脱落は、何故起こるのか 癌の予防にもビタミンCが効く
鍛錬できるのは、脳と手足と心臓の3つ 脳の鍛練は会話から始まる
TVは脳を鍛錬するか 果たして、心は出来そこないの百科事典か
何故、癌はボケも呼ぶのか 心はホルモンが作る?
頭のいい情報整理法 風邪をひかない為に


  ●ニューロンの脱落は、何故起こるのか

  鍛練と言う概念がある。オリンピックなどで抜群の成績を上げるスポーツマンは、恐らく先天的に優れた運動能力を持っていて、鍛錬によって、それが花を咲かせる。

  知能に問題があると見られている人も、優れた作曲や絵画にその潜在能力を引き出された人も多い。それは「人間の存在価値は先天的要素によって決まるのではなく、

  後天的獲得要因によって決まる」と言うことだ。そして、現在の我々の知識は、そのプロセスについて十分熟していない、と言うことに気ずかされるのである。

  後天的獲得要因の対立物として、後天的退行がある事を見逃してはなるまい。全身の細胞数は、最盛期、即ち成人したあたりで60兆と言われる。その後、それは平均

  して1日に9億個ずつ失われるとの計算がなされている。脳の場合、この最盛期を過ぎると、平均して1日に15万個のニューロンが脱落すると言われる。仮に最初の

  数を1000億個とすると、1日に失われる数は、最初の数の1.5/100万、つまり1.5ppmに過ぎない。しかも、生体の合目的性から考えれば、これは未使用ニューロンを

  整理する性格のものだから、決して大きな問題にはなり得ない。このことは、脳を最重要な器官とする我々にとって大いなる恩恵である。

  ▲いくつになっても、脳は鍛練を好む

  人間のの頭の特徴の1つは額が大きいことだ。この額の奥には「前頭葉」と呼ばれる領域がある。人類の脳ではこれが良く発達して、大脳新皮質の表面積の40%を占め

  ている。原人ピテカントロプスの前頭葉はこれより目立って小さく、ゴリラに至ってはまことに小さい。この大脳新皮質の役割は、情報処理を行い、結果をアウトプットする

  事にあると言われる。これはつまるところ、知性脳の主役と言うことだ。1部の研究者は、前頭葉の発達は25才からだと言っている。しかし、科学史上の大天才ニュートン

  は、万有引力の法則の発見、微分積分学の発明、光の分散の発見など、1人の人間には出来ない程の業績を残しているが、それら全ては25才になるまでにやって

  のけた。ニュートンの前頭葉は他人より早く発達したと言うことなのか、それとも,そもそも25才から前頭葉が発達すると言う説が間違っていたのか、わからない。

  また、ある研究者の報告によれば、情報の蓄積量が最大になるのは50才代、情報処理能力が最大になるのは60才代であると言う。これは事実の様である。脳の

  発達については、まだまだ分からないことが多いが、少なくとも「人間の脳はなかなかしぶとい」と言うことだけは間違いない。ボケさえしなければ、なかなか長持ちする。

  それは、「年がいくつになっても、脳は鍛練が効く」ということでもある。

  ●鍛錬できるのは、脳と手足と心臓の3つ

  後天的要因獲得への道は、原則として、鍛練と言うことになるだろう。脳の場合には、鍛練と言う言葉より学習と言う方が適切かもしれないが、ここでは「鍛練」として

  一括することにする。さて人間は、自然死のない細胞を2種類持っている。1つは神経細胞、1つは筋肉細胞である。つまり、これらの細胞には「寿命」がないのである。

  先に「毎日、15万のニューロンが脱落していく」と記したが、これは寿命がきて死んでいくのではない。まともに使われていないので、自分から消滅してしまうのである。

  死なない細胞では、その細胞自身が保存されるが、細胞の中身も保存される。と言うことは、鍛練と言う作業で獲得した何かがあれば、それもまた保存されると言うこと

  である。皮膚や髪の毛等の細胞は寿命があって、毎日のように死んでいくから、いくら鍛えても、そこで獲得されたものは消え去ってしまうけれど、脳や筋肉にはそう

  いうことは起きないのである。しかも、鍛錬について言えば、脳は筋肉よりもずっと好条件を備えている。脳と違って筋肉は蛋白貯蔵庫の役割も同時に負わされている。
  
  ストレスや極端な低蛋白状態に出会うと、生体は筋肉の蛋白質を使おうとする。その結果、筋肉は犠牲にならざるを得ない。運動選手が現役から離れると、能力が

  極端に落ちるのも、こういうことが関係している。ところが、脳では、この様な事はまず起こらない。低蛋白質の状態になっても、機能が1時的に落ちるだけの事である。