脳細胞は甦る

  ◎どうすれば記憶力は高まるか

脳は単なる記憶を拒絶する 記憶はどこに保存されるのか

  ●脳は単なる記憶を拒絶する

意識は科学で説明できるか 丸暗記に知能はいらない
記憶され易い情報、されにくい情報 「こだわり」は頭を悪くする
マグロの目玉を食べても、頭はよくならない 水道水は安全か
マインドコントロールはこうして行われる パブロフの予言は的中した
「思い出せない」のは、記憶の仕方に問題がある アインシュタインの脳に多く存在した物質


  ▲意識は科学で説明できるか

  生物学最大の神秘とされていた人間の脳は、次第にその秘密を明らかにしつつある。研究者達は、個々のニューロン(神経細胞)の活動を識別する微小電極をはじめ、

  MRIやPETという強力な道具を用いて、脳の深奥を探っている。これらの装置を用いれば、脳の皮質の中にニューロンの活動の交響曲が生じるのを観察出来るのだ。

  こうした中で、科学者達は、最もつかみにくく、しかもどうしても避けて通れない意識と言う問題に取り組む学者が増えており、1994年、超一流の科学者の集まりで、

  「意識の科学的基礎」という討論会が開かれたが、一つとして噛みあった議論が無かったそうだ。意見が分かれ、「誰にでも勝算がある」と言われた。

  ▲宇宙を見るように脳を見る

  誰かが脳に関して新説を唱えても誰も否定も肯定もできない。根拠が示せないからだ。それが脳をめぐる研究の現状である。科学の分類法に「記述科学」と「法則科学」

  と言う分け方がある。遺伝や進化の概念が知られる前の生物学は、記述科学の代表で、採集して分類するだけだった。法則科学の代表が物理学で、物理法則により、

  多くの現象が予測可能になる。記述現象だけに満足せず、背後にあるミクロの世界のメカニズムを探求するには、法則科学が必要になる。脳については分かっている

  事実が少ない為に、仮説が必要になってくる。仮説とは知られている事実を無視して、理屈をこねあげることではない。事実には縛られ、勝手な想像は許されない。

  ●記憶されやすい情報、されにくい情報

  どんな人でも毎日何かを記憶し、その記憶の籠の中からいくつかを呼び出して生きている。新聞やTVや他人からの情報が目の前を通り過ぎて行き、意識してなくても、

  そのいくつかが選択されて記憶のプロセスに入ると言うことだ。どれ1つとして記憶の価値がないとなれば何も覚えていないことになるが、現実にそんなことはまずない。

  其の場合、選択の基準は「興味」と言うことになる。英語でインタレストトいうが「利害関係」と言う意味も含んでいる。「興味」はその人に固有のものであって、職業を

  持つ人は、その職業に偏る傾向があり、知っているか知らないかで収入や立場が変わるから、そこには「利害関係」が絡んでいる。だから、仕事に関係ある情報は

  記憶されやすい。好奇心であれ、利害関係であれ、興味の内容ごとに、記憶に動員されるニューロンは脳内のある領域に限定され、その領域のニューロンは活性化

  されている。活性化されていると言うことは、若干の出力が用意されていると仮説する。記憶と言うのはエネルギーを消費する行為である。ニューロンが活性化されずに

  出力が小さいままでは、記憶することは難しい。どんな有意義な情報でも、活性化されていないニューロンの持ち主の前では、通り過ぎていく。これは、「活性化された

  ニューロンは興味の生みの親だ」とも言えるし、「記憶を良くしたかったら、ニューロンがどうやって活性化するのかを知らねばならない」と言うことにもなる。

  ●マグロの目玉を食べても、頭は良くならない

  情報を伝達するニューロンには極性がある。それは細長い細胞であって、出力側と入力側と2つの極をもっている。入力側から入った、情報は電流の様な形で流れ、

  ニューロンとニューロンの継ぎ目の部分の「シナプス]と言う隙間を渡って、神経伝達物質という分子の形で下流にある次のニューロンのレセプターに受け止められる。

  実際のニューロンの入力側のものは大木の根のように無数に枝別れしている。これを「樹状突起」と言う。

  これは、脳全体で100兆もあるそうだ。一方、情報伝達物質を出す側は「軸索」と呼ばれて、その末端は

  いわば拳骨のような形をしている。この軸策の末端と樹状突起とがシナプスで接合しているわけだが、

  その接合部の膜に、出力側のものにはシナプス前膜、入力側のものにはシナプス後膜と名付けられている。

  記憶をよくする食べ物として、DHAの豊富なマグロの目玉が話題になったが、これは人間の目玉の網膜にも

  あって視覚に重要な役割を果たしているが、ニューロンのシナプス後膜にも前膜にも含まれている。その為に、

  「DHAを摂ったら頭がよくなる」という神話ができたのだ。DHAの不飽和脂肪酸を持っているのはマグロだけでなく

  青魚の仲間は全て、それも目玉に多いが肉にもかなりある。1日に必要とするものに相当する量は、マグロの

  中トロ4切れだそうであう。しかし、DHAは脳にも目にも必要な物質だから、青魚からしか摂れないはずがない。

  人間も自前で作っている。そうでなかったら、海のない地方の人は、DHA不足による脳の機能障害に

  悩んでいなければならない。これだけでもDHA神話のいかがわしさが分かるあろう。

  人間はDHAをEPAから作っている。このEPAも自前で作れるが、それは魚脂に多く含まれている。

  だからマグロの目玉に飛びつくことはないのだ。また、EPAもDHAも不飽和脂肪酸であって、酸化して過酸化脂質に

  なりやすい。この過酸化脂質は活性酸素を発生する危険物質なのだ。その危険度はDHAのほうがEPAより大きい。

  その点を考えずにDHAに飛びつくのはどういうことか。ニューロンのシナプスも又、活性酸素の危険に晒されている。