命の値段が決まる時

  ◎あとがき

   不思議なことに100万円の車なら、安いと感じるのに、医療費100万円はべラボーに高いと感じる。命は地球より重い、命は金に換えられないといいながら、

  いざ医療費が100万円になれば、大騒ぎになる。いかに日本の医療費が安く抑え込まれてきたかということではないだろうか。値段というものは、イメージや

  他のものとの比較で高い安いを感じる。病院の窓口の支払い増えてきたとはいえ、ちょっと高めのレストランの食事代よりは、まだ医療費の方が安い。

  日本の健康保険制度は、実にうまく医療費を抑え、いつでもどこでも誰でも病院を受診できるようにした。そのお陰かどうか分からないがが、日本の平均寿命は

  世界1になった。しかし、今の医療で満足する患者がどれぐらいいるだろうか。聞こえてくるのは、医者や病院に対する悪口ばかりで、病院では相変わらず

  問題が起きている。時代の変化と共に制度も変わっていかねばならないはずが、医療制度はその変革が遅れてしまった。いや、医療制度だけでなく

  金融制度も同じようなものだ。そこを外資系の金融機関に狙われてしまう。制度は先を読んで、大きな目標を掲げ変革していかねばならないが、それが日本の

  医慮制度は出来なかったということだろう。遺伝子医療や臓器移植といった想像もしていなかった医学が進み、制度が追いつけなくなった。更に、より良い医者、

  よりよい病院にかかりたいという患者の要望は非常に強くなった。いざ、いい病院やいい医者を選びたいと思った時、今だにその情報はない。医療サイドは

  横並びで、本当の情報を出さず、競争原理も働いていない。「医者に診てもらえばいい」という時代から、「どんなに金をかけてもいいから、名医に診てもらいたい」

  という欲求に変わってきた。もちろん医療は基本的には、誰でも受けられる事は重要であるが,選択のできる部分も必要になってきたのだ。命は金で買えない

  時代から、最先端医療は金がかかり、命を救うには金のかかかる時代になってきた。市場原理を医慮に持ち込むと、医療が駄目になるという主張も多い。

  しかし、今の医療システムでは限界があり、このままでは破綻を待つしかない。医療は他の産業とは違い、もっと気高いもの、特別なものという考えが強い。

  しかし、それは多くの場合建前であり、本音の医療はそういうところにはない。医療経済学や病院経営学というものを、医学部では殆ど教育しないし、それは

  未だに邪道であると思われている。しかし、金で医療を見ることはタブー視されてきたが、健康保険制度が破綻しそうな場合、医療に経済学という考えを

  持ち込まざるを得なくなった。医療の理想は、安いお金で、最高の医者にかかれることであるが、今の社会構造からはそれは無理になってきた。

  アメリカ型の医療はそれが極端な形になっている。金のある人が最高の医者にかかれ、腕のいい医者は収入も増えていく。日本もアメリカ型を追いかければ

  、ゆくゆくはそうなってしまう。今は医療費がないのではなく、うまく配分されていない。高齢者医療に金はかかるが、そこに求められているのは介護中心で

  医療は必要のないところも多く、それが徹底していないのだ。一方、外来患者の多くは、2週間に1回医者にかかる必要のない人も多いのが現状だ。

  医療費削減には患者の自己管理が重要になってくる。その為の医療制度改革も必要になってくる。医者側から言えばどうしても自分の立場を守ることになり、

  患者側には、医療サイドの本当の大変さはなかなか理解できない。求めるところは同じで、誰でも安心してかかれる医療であり、そこには無駄のない金の使われ

  方をしてること、それだけでも改革できれば、医療はもっとよくなるはずだ。それには患者側も考えを修正していく必要あある。  

  医者のためだった医療を、患者のための医療に取り戻す、それを忘れてはいけない。ここ数年、医療改革が進んできたように見えるが実際の臨床の場では

  何ら変わっていない。いざ医者にかかる時、十分な情報が手に入るだろうか、お金はいくらかかってもいいから名医に診て欲しいとも思ってもそれは無理である。

  何ら変わっていない。相変わらず医療は不自由な平等性の中で行われている。暗い病院の廊下、患者が並んで待つ支払い窓口、予約制といっても2時間も

  待たされる外来診療・・・。こういった現実を見れば何も変わっていない。多くの病院は、同じ問題を抱えたままだ。それは患者にとっても、医者にとっても

  不幸である。医療は金をかければ、もっと積極的に改善できるが、あまりに制約が多く、改善がすすまない。医慮技術の進歩は目ざましいが組織改革は

  一向に進まないのは残念である。国がもっと医療というものにメスをいれ、医療費の配分を見直さければればならない。