命の値段が決まる時

  ◎医療情報とコスト

  医者が病気になるとどうするであろうか。まずは自分の医学部の時の同級生に電話する。自分の専門分野であれば、直接大学病院に知り合いが

  いるかもしれない。そうでなければやはり、同級生で大学病院に残って研究をしている医者に電話をする。そこから、別の病院の医者や病院を紹介してもらう。

  つまり、医者ですら、病院の詳しい情報を持っていないのだ。いかに、日本の医療ではその情報を発信してこなかったかと言うことである。

  情報を隠し、医療施設間で競争させなかったから、建物を豪華にする必要もなく、医者の質を問われることもなかった。確かに医者が少ない状況であれば、

  選択の余地はないだろう。しかし、病院や医者が沢山いる都市部でも、同じようにどんな医者がいるのか全く分からないのは、まさに異常な状態であろう。

  病気になれば、いい医者に診てもらいたいと思うのは、誰でも持つ気持ちである。レストランやホテルなら、いくらでも情報があるのに、何故医療だけは、

  口こみでしか情報が入ってこないのだろうか。個人の欲求を満たしてくれる社会の仕組みになってきたが、医療だけは完全に取り残されたと言ってもいいだろう。

  医療は平等でなければいけないと言う考えが、医者を支配し、それをうまく利用してレベルの低い病院でも生き残れてきた。これほど情報が流れる現代でも

  医療の詳しい情報が全く流れてこないのは、異常事態である。インタネットはそれを突き崩す1つの方法であるが、まだまだ十分でない。

病院を選べないから医者は儲かった 禁煙で得する
病院を株式会社に 「体にいい」という不思議な言葉
名医はネットで探せ ここに金を使え
カルテ開示を拒む理由

  ●病院を選べないから医者は儲かった

  リンゴ1つ買うのにも、まず値段と品質を比較するものだ。しかし、店が他になければどうだろう。比較も出来ない為に、その場にある物を買わざるをえない。

  つまり競争のないところでは、いい品も悪い品も関係なくなってくる。医療がそれと同じことをやってきた。十分に病院は淘汰されていると言う人もいるが、

  それはまるで現状を分かっていない、医者側の論理である。医療情報を公開しないことで、多くの病院は利益が上がった。どこも皆同じ様に見えてしまえば、

  結局行くのは近くの病院ということになってしまう。初めてかかる医者は、女医なのか男の医者なのか分からないまま、受診するしかない。診察室の向こうに

  、どんな医者が座っているのか分からないのは患者にとって恐怖でもある。ベテランの医者に診てもらいたいと思って病院に行っても、そこには医者に

  なりたての若い医者が座っていることもある。そんな最低限の情報すら、手に入らなかったのはむしろ異常としかいいようがない。最近ようやく、看板に

  専門医の認定、治療方法、患者数など医療情報を書けるようになった。今迄は、医学博士ということすら表示することが出来なかったのだ。医療サイドは

  医療の自由競争を非常に嫌い、自由競争になると、医療の質が落ちると主張している。しかし、それもやはり医者側の論理であり、たとえマイナス面があろうと

  患者側がそれを望んでいるなら、やはり医療の自由競争は必要であろう。大きな病院は地域の医療を独占し、その為にいくら古ぼけて汚くなった病院でも、

  医者の態度が横柄であっても、患者はそこを頼らざるを得ない。患者は医療において選択の自由がない。だからこそ、医者は医療内容を問われることなく、

  開業医も含め、その地域の医療を独占でき、儲かる職業となっていた。日本の医療は歴史をさかのぼれば、官僚主義の中で、東京大学医学部を頂点とする 

  旧帝国大学が、全国の主要な病院を牛耳り、大学病院は自由を奪われてきた。大学病院や大病院へ就職できる可能性のない医者は開業医となり、どことなく

  さげすまれ、臨床をやってきた。研究至上主義で臨床医学を軽視するドイツ医学の流れを利用して、明治から医療は完全に官僚組織化されてしまったのだ。

  患者は医療のことなど知らなくていい。この感覚がまだまだ信じられないほど残っているのが、今の日本の医療の実態である。1部の大学病院で講座制を

  廃止し、主任教授の権限を弱め、民主的に医療を行おうとしているが、あくまでも内部の改革であって、本質的な医療の改革にはなっていない。最も困るのは、

  その改革を行っている医者達が、組織の中に組み込まれ、誰の利害でその組織改革を行っているのか見えなくなってしまっていることだ。

  自由市場経済を医療の中に持ち込むことが、唯一、本格的な医療改革になりうる。却って経営優先になるという心配も聞こえて来るが、それは自分たちの

  意見を守る視点からの発言のように思える。市場経済を持ち込むことは、、医療の情報が外に出て、結局患者のメリットは大きくなる。アメリカのまねをする

  必要はないが、今の状態のままでは、あまりにも医療情報の開示のスピードが遅く、健全な改革になっていかない。