命の値段が決まる時

  ◎薬から見た医療のコスト

何故病気になるのか 日本では何故カルシウム拮抗薬が初めに処方されるか
抗生物質が製薬会社のドル箱だった頃 海外の大規模調査は”印籠”である
薬は医者が決める弊害 H2ブロッカーの出現     ここに金を使え
耐性菌出現の本当の理由 バイアグラは突然日本にやってきた
医学系雑誌の謎 薬を買うと車がついてきた
肺結核は何故また問題になってきたのか 基準値の微妙な違いが薬の売り上げを左右する
病院へ行くと風邪は治るのか 日本人の知らない海外の巨大医薬品メーカー


  薬が多くの人の命を救ってきたのは疑いの余地が無い。ペニシリンやストレプトマイシンが手に入るか入らないかで生死が分かれた時代もあった。特効薬は次々に

  開発されてきた。いくら高い新薬でも1命を取り留めるとどうしても欲しくなる。製薬会社は次々に新薬を作り出し、巨大な産業になった。不況の嵐の中でも製薬会社は

  軒並み増収である。無論その利益は、新薬開発に回っていくのだろうが、病院が赤字で苦しんでいる現状を見ると疑問に思う。昔であれば薬価差益で薬の売り上げで

  病院も儲かったが薬価差益が少なくなり、院外処方になった現在では、新薬が出て売り上げが上がっても、あまり病院の経営には関係が無くなってきた。さらに特効薬

  の出現は医療に不平等を生み出している。その薬が使えれば命が助かるのに、経済的に買えなかったり、どこかで独占的に使用されたりして、ますます医療レベル

  の格差は世界的に見れば広がりつつある。日本では健康保険でかなりの薬を処方できるので、自己負担が多少あるとはいえ、世界的に見ればまだまだ恵まれた

  状況であるが、それに満足できないでいる。西洋医学に満足できなかったり、不信を持った人は、健康食品やサプリメントを使い、その金額も大きなものなっている。

  ●j何故病気になるのか

  薬は現代医療の中でなくてはならないものとなった。それだけに、薬の値段や新薬の登場は医療のコストにすぐに影響してくる。高脂血症は新薬の登場で1000憶円

  以上の市場となった。薬と医療の関係を見るには、抗生物質の登場を見ると分かりやすい。患者が医者の所に来て、よく言う言葉の中で、「何が原因で病気になった

  のでしょうね」というものがある。人は病気になると、何故病気になったのか知りたくなるものだ。医者も病気の原因を常に研究してきた。その病気の原因を最初に証明

  するきっかけは細菌の発見であった。ゴッホが細菌培養に成功し、多くの病原菌を発見することにより、ある病気の発病には細菌が存在し、その感染を防げば病気も

  防げるという考えが出来上がった。ゴッホの考えはその後の医学に大きく影響することになった。つまり病気には常に原因があり、それを見つけることが医学研究の

  基本になったからだ。病気との因果関係を捉え、科学的に解析する方法としては、良かったかもしれないが、アルツハイマー病の様に遺伝子と環境因子が複雑に

  絡んで発病してくる病気の原因を見出すには限界がある。しかし、近代医学が発展するには、病気の原因になる細菌を発見していくという手法は、有効な手段であった。

  それは治療にも影響した。抗生物質の発見により、原因となる細菌に強力な抗生物質を使用すれば必ず治っていくと言う思い込みを作ることになった。また新薬を開発

  する側も、強力な抗生物質の開発に躍起になった。それが思いもよらない問題を引き起すなど、考えもしなかったのだ。
  
  ●抗生物質が製薬会社のドル箱だった頃

  昔は大学病院では、先輩の医者が「どこそこの製薬会社の抗生物質を点滴しておけよ」と指導したものだ。そこにはどんな細菌が原因で、感受性が高いもの(1番効果

  のある)はどの抗生物質かなど 踏み込んだ議論は無かった。製薬会社に接待を受けたり、ケースカードと言って薬を出したことを簡単な報告書に書くだけでそれを製薬

  会社が使用報告としてデータを集め、ケースカード1枚について数万円が医者に支払われていたのだ。となれば医学的根拠ではなく、製薬会社の営業力の強い所の

  抗生物質が使われるようになってしまった。接待費を沢山持つ製薬会社がシェアを広げ、医者はそれに踊らされ、また利用して、抗生物質を出し続けた時期があった。

  それが耐性菌が出来る一つの原因となった。これこそ,製薬会社と医者が金で結びつく理由になっていた。現在では抗生物質の乱用は1時期に比べ減少した。それは

  広域抗生物質の使用が限定されたものになってきたからであろう。年間の使用量は、無制限の使用から、かなり規制のかかった使用に変化してきたのが大きな要因

  だが抗生物質の開発も1時期の様に各社が同じようなタイプのものを開発するのではなく、独自性をもって新薬開発を進めている為だろう。以前の様な、医者と製薬

  会社の癒着で抗生物質が使われていくのは、かなり抑え込まれている。そこには多くの犠牲が払われたことを教訓にしなければいけない。