命の値段が決まる時

    ◎検査のコスト
世界1多いMRIの台数が脳ドックを生んだ 治療に結びつかない検査が行われる
医療機器を買うから検査が増える ここに金を使え
    

    ●世界1多いMRIの台数が脳ドックを生んだ

  画期的なCTの発明により、体を傷つけずに輪切りの人体画象を見ることができるようになった。これは医者の長年の夢でもあった。更に放射線ではなく、体に無害の

  磁力線による断層写真であるMRIにより、輪切りで診断することは実に普通のことになった。高価なMRIも次第に値段が下がり、個人の病院でも購入するところが増え、、

  脳外科では絶対的に必要なものとなった。頭痛、めまいで脳外科にかかれば、まずMRIということになった。しかし、患者の数は限られている為に、購入したMRIをなんとか

  稼働させなくてはいけなくなった。医療検査機器が高性能になればなるほど高価になり、初期の投資が大きくなる為に、それが病院の経営を圧迫している。そこで考え

  出されたのが脳ドック、という自費診療である。人間ドックと同じように、脳だけを調べるドックだ。脳ドックでは、身長・体重測定、眼低検査、血液学検査、血圧測定、

  血液生化学検査、心電図、MRI、MRA(MRによる脳血管撮影)、尿検査、頸動脈エコー等の検査が行われ、費用は8万円くらいかかる。脳ドックそのもの有効性は実証

  されていない。つまり、脳ドックを受けた人が、本当に長生きしたという統計はないし、脳卒中やクモ膜下出血の症例も少ないと言った長期的なデータはまだない。

  それなのに、いつのまにか多くの脳外科や人間ドックを行っている医療機関で、脳ドックを取り入れるようになった。さらに最近では「認知症の早期発見」などという謳い

  文句で、さらに受診者を取り込んでいる。やらないよりはやった方がいいと言う発想で、未だ脳ドックは続けられている。だから現在の脳ドックはある意味では研究レベル

  の意味合いが強いと言ってもいいかもしれない。コストの面から、脳ドックを受ければ病人が減り、医療費も抑制できると言う証明ができれば、医療経済学から言って

  意味合いがあるかもしれない。しかし、むろんそれも難しい。脳梗塞を予防するなら、血圧の管理、高脂血症の管理、禁煙、血糖値を基準値に保つことが1番重要である。

  それは最もはっきりした医学的な常識である。その意味からは、脳ドックで脳のMRIを撮る必要はなくなってくる。脳ドックを受けるより、従来の健康診断で異常が出た

  時、それをきちっと治療することこそ、脳梗塞の予防である。新しい医療機器は需要を生み出し、医療サイドを潤すことになっても、必ずしも、病気の予防が可能になり

  医療費を抑制することにつながっていかない。それだけに、医療機器の適正な配置ということも考えていかねばならない。

  ●医療機器を買うから検査が増える 

 CTもMRIも世界的な設置数から言うと異常に多いのが日本である。検査は必要があるから行うはずであるが、脳ドックの様に、MRIを買ってしまったから、元を取る為に、

  検査をするような事が起きてしまう。最近では、PETスキャンが同様な状況になってきている。全国の大学病院でも購入するところが増えている。高額な医療機器を

  購入する時、院内では会議が開かれるが、時には、購入先が突然変わってしまうことがある。高額な医療機器は院内でもっとフェアな会議を行い、地域医療とのバランス

  等を図って購入すべきものだろう。大学周辺の診療所から、MRIの検査を大学病院に頼むと1カ月後になるが、近所の脳外科ではその日に検査を受けられる。これは

  大学病院などでは、院内の患者を優先する為に、外からのMRIの利用はしにくいと言うことだ。検査を早く行うことは医療では非常な要素であるが、大学病院に高価な

  機器があっても周辺の医療機関が十分に活かすことが出来ないのが現状だ。適正な医療機器の配置を考えていないので、場合によっては、医療機器というものが

  地域の医療を独占する為に使われてしまうこともある。また、病院の経営を良くする為に医療機器を購入すると言う状況は、なんとかしなければならない。大学病院では

  時々経営者や教授が、収益を上げる為に、むりやり検査を出すことを命令することもある。日本のCTは19991年で8963台、人口が2倍のアメリカですら6500台で、数だ

  けは圧倒的に多い。世界1の数である。MRIは日本が1156台、アメリカが2741台、ヨーロッパが710台である。人口比で考えると、日本は世界1のMRI保有国とも言える。

  2002年の統計でも日本のCTは11803台、MRIは4501台と変わらず保有台数は多い。他には超音波診断装置、体外衝撃波腎・尿管結石破砕装置(ESWL)も人口当たり

  の台数は世界1の保有国である。それにこれだけの医療機器は検査を受けるにあたり、殆ど何の規制も受けずに平等にそれを使えるチャンスがある。これは非常に

  恵まれた環境にあると言えるかもしれない。外国では医療保険を持っていない貧困層では検査拒否なども起きている。しかし、医療機器がこれだけ多いと汚職などの

  温床にもなりかねない。実際、こういった機器は大学病院では放射線科が管理する為に、最終決定権は放射線科の教授が持つことが多い。医療機器の購入、地域へ

  の適正な配置、さらにその運用と監視など、高価な医療機になればなるほど、地域の監視や管理が重要になってくる。しかし、それはまだ全くなされていない。