物忘れを90%防ぐ法

  ●「物忘れしない脳」は心が作る!

  夢と記憶には意外な関係があります。短期記憶が長期記憶に変わる為には、記憶が固定するプロセスが必要です。そして、この固定は眠っている間に行われていると

  いう考えがあります。記憶が眠っている間に整理されるとしたら、それはレム睡眠の時間です。レム睡眠とは浅い眠りのことで、夢を見る時間でもあります。閉じた(まぶた)

  下では眼球が素早く動き(Rapid eye movement、略してREM[レム]と言われる)、呼吸が乱れたり、心拍数が増加するなどの特徴があります。一方、深い眠りをノンレム

  睡眠と言います。イスラエルの研究所で次の様な実験が行われました。まずは被験者たちに、コンピューター画面に隠されたあるパターンを認識する訓練をさせます。

  次に、被験者たちをそれぞれ、熟睡する人、レム睡眠の途中で起こされる人、ノンレム睡眠の途中で起こされる人の3つのグループに分けて、一晩眠ってもらいました。

  そして翌朝、前日の訓練のテストをしました。熟睡した人とノンレム睡眠で起こされた人は、前日の訓練はシッカリと記憶され、成績は著しく向上したが、レム睡眠で

  起こされた人は、全く訓練を受けていないようなひどい成績だったと言います。レム睡眠を奪われた被験者は、記憶の固定ができなかったというわけです。しかし、

  レム睡眠中の記憶固定を疑う研究者や、夢は覚える為でなく、忘れる為に見るのだとする研究者もいます。夢はまだまだ神秘のベールに包まれているようです。

  ここまで、記憶力を高める方法やテクニックを述べてきたが、記憶力だけがいくら良くなっても、真の能力は発揮されません。今の時代は、単純に記憶するだけなら、

  コンピューターのほうが断然優れているのですから、記憶するだけなら人間の能力など不要なのです。記憶をフルに活用して、新しいものを作り出せるのは、人間だけに

  与えられた素晴らしい能力です。記憶力とは、活用されて初めて生きてくる能力なのです。記憶は創造する為の手段です。そして、創造する為には、直観やひらめき

  が必要です。つまり、右脳を活発に働かせなければならないということです。その為には、普段から絵を見たり、音楽を聴いたり、映画を観たりしてしてイメージや

  感情を蓄えなければなりません。その時は意味がないと思っていても、いつかその記憶をもとに、素晴らしいアイデアがひらめくかもしれないのです。常に好奇心を持ち、

  何にでもチャレンジする精神を忘れないでください。その精神こそが、実は「物忘れしない脳」を作る源泉でもあるのです。

  ●おわりに   旅行中は「1日1枚のスケッチ」―これが意外に効きます!

  物忘れを嘆く人の多くは、「知的能力=記憶力」だと考えています。しかし、人間の知的能力は、「流動的能力」と「結晶性能力」の2つに分けて考えるのが一般的です。

  「流動的能力」とは、新しいことを覚えたり、思考をスピーディに行う能力のことです。一方、「結晶性能力」とは、過去の経験や学習した知識など、古い記憶に基ずく

  判断能力や技術的能力をいいます。一般的に、「流動的能力」は、年と共に低下して行くと言われているが、逆に「結晶性能力」は高まると言われています。年をとる

  ということは、それだけ多くの経験を積み重ねると言うことですから、当然のことと言えるかもしれません。しかし、趣味もなく、家の中でボーッと暮らしている人と、積極的

  に社会とつながりを持ち、外へ出て活動している人とでは、「結晶性能力」にも明らかな差が出てきます。80才になるある会社の会長は、新しいことを覚えたり、考えたり

  する力は鈍ったように思うこともあるが、大きな問題や、新製品の販売の最終決断は、会長に任されています。そんな会長の趣味は旅行と油絵です。時間があれば、

  1週間ぐらい海外へ出かけ、また、忙しい時でも国内旅行は欠かさず、そこで必ず1日1枚のスケッチをするのです。彼の「結晶性能力」は、単に知識や経験から来るもの

  ではなく、常に自分の脳を刺激する為に、旅行と言う新しい体験を求めているからできるものなのです。むしろ忙しさに負けて、旅行どころではない現役の部長たちには

  できない芸当なのかもしれません。年をとると新しい事を覚える能力は衰えていくが、体験に基ずく総合的判断能力や、時間をかけて考えることでは、高齢者といえども

  若い人達に負けません。記憶は単純に物を覚えると言うことだけではなく、大きな判断をする時にも必要になります。その総合的判断能力は、その人の生きざま

  そのものが反映すると言えるのです。年と共に増える物忘れを嘆く前に、真の「脳力」を鍛えて育てることを考えてみましょう。忘れてしまう記憶や覚えられない情報は、

  これからの人生にはもう必要のないものかもしれません。必要な情報や興味のある事柄は、いくつになっても忘れないものです。長く生きていると、色々な[持ち物]

  が増えてくるものです。家の中を見回してみて下さい、もう必要がないと分かっていてもなかなか捨てられない物がたくさんあるのではないでしょうか。家の中が物で

  溢れかえっているから、本当に欲しい物を手に入れたいと思った時、躊躇(ちゅうちょ)してしまう。そんなこともあるのではないでしょうか。そこで、いらない物を(いさぎよ)

  捨ててしまえば、家の中がすっきりして、また、新しい物を手に入れたいという意欲が湧いてきます。脳でも同じことが言えます。これから大切なことを覚える為には、

  いらない記憶はどんどん忘れてしまえばいいのです。必要のない記憶のせいで、大切な脳力を曇らせていませんか。片ずけ上手、即ち物忘れ上手な人生は、あなた

  の脳力を研ぎ澄まされたものにしてくれるはずです。
  
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